落海





暗闇の中、手をのばす。





そこには、深い闇と、不安が押し寄せていて。



冷たい葉の感触に、怯えて手をひっこめた。





後ろにある木に、背中を押し付けるように身を預けた。





よろりと足がもつれる。









どのぐらい時がたったのかわからない。





もう二度と、あの人には会えない気がした。







そう思うくらい、ひどく長い時間歩いていた。





どこからか、獣のうなり声が聞こえてくる。



それはずいぶん前から聞こえてはいたが、だんだん近づいているようだった。









ぽつん



「………!!」



嫌な予感がして顔をあげる。







すると一瞬にして、大粒の雨がセイの顔に降り注ぎ、黒い髪を洗っていった。









行けども行けども、何所までも続く森。









セイにはもう、解っていた。



此処には、人がいないのだということを。





その根拠は、あの人の瞳の色だった。







黒い、冷たい色をなした、あの時の、あの、瞳。





それが、全てを物語っていたのだ。











3日前からここにいたというのはおそらく嘘だろう。





きっと、セイを安心させる為に、嘘をついたのだ。









身を縮めて、木の下に潜るようにうずくまる。







それから、木の根元に刺さった、刺を抜いた。







今日見た、あの人が投げていた、あの小さな槍だった。









そして、手のひらをそっと開ける。





数え切れないほどの数の小さな槍が、雨に塗れていった。













セイはその手のひらをこぶしに変えて、額に持っていくと、弱々しく、頭を膝の間にもぐらせた。

























----続く----

さてはて、もうすぐクリスマス〜♪ですね。