落海





歩くごとに、お腹に重苦しいものを感じて、息を深く吐く。





後ろからは、慌てたような声。















「神谷さん!!」







「ほうっておいてください!!」



二人の競歩はしだいに早くなっていく。









「そっちは危ないですから!」





その言葉にセイはくるっと振り返る。





それに反応して、青年も動きを止めた。











「のうのうと魚と遊んでいる人に、どうしてわかるんです!」





セイは吐き出すように叫んだ。













「それは…」



青年が何かを言おうとするが、それをはばむセイの声。











プリンと、兄の笑顔。













それがやさしくセイの脳裏によぎる。













「私には帰るところがあるんです!!!」











波の音が、やさしい。





















「貴方は諦めて此処にずっといればいいじゃないですか!!!!」























そう叫んでから、セイははっと息を呑んだ。









さっと冷えたような空気。











それが、セイに突き刺さっていたのである。









青年の目は、冷たく冷えていて、セイをじっと見据えていた。





















セイは息もできずにその目を受け止める。







頭が混乱してかなわない。





先ほどまでの能天気な瞳は、いったいどこへ行ってしまったのだろう。









今、そこにあるのは、あまりにも冷め切った空気で。















青年は、無言で、背中を向けると、帰っていった。







洞窟へ。













セイの寝ていた、あの、洞窟。





















呆然とその背中を眺める。













そうしてから、気づいた。















この広く小さい島の中で、自分が、一人取り残されたことと、











あの人に、今、見捨てられたことに。





























----続く----

大河ドラマ、もう終わりですねぇ…