「…何、してるんですか」
セイは、浅い波打ち際に裸足をつからせながら、聞く。
「何って、魚を取っているんですよ」
ぱしっ、といった軽快な音と、魚が跳ねる音が同時に波を揺らす。
青年は、小さな針のようなもので、器用に魚を捕らえていく。
打ち損じた針が浮かんでセイの足元へと浮かんできた。
それを取って眺めると、それは木でできた、簡易な小さい槍のようなものだった。
何で削ったんだろうと疑問がよぎるが、今重要な課題はそこでは無いのだと、セイはそれをまた海に落とした。
「…それより、どうやって此処から帰れるか考えません?」
その言葉に、青年は苦笑して体を起こした。
「…考えてもどうにかなるものでは無いですよ」
そんなあっさりした物言いに、セイは少し怒ったように眉をひそめる。
それに続いて、青年はまた魚捕りに目を向けながら言う。
「それに、考えるのは苦手ですしね」
それは、あまりにもあっさりした言い方だった。
セイは怒りで身震いをした。
今の現状とギャップのありすぎる、ほのぼのとした言動。
こんな人といて、どうやったらここから抜け出せるのだろう。
「もう、いいです!!!!」
セイは大声で叫んでいた。
びっくりしたように、中腰で振り向く青年。
「私一人で、帰りますから!!!」
セイはずかずかと踵を返して歩き出した。
ずっと向こうに見える、森の方へ。
「か、神谷さん?!」
慌てたような声が聞こえる。
知るか!!という勢いで、セイは足を踏み鳴らして進む。
海の音は、穏やかで。
それさえも、セイは腹立たしく、どうしようもなく、感じて。
泣きたくなった。
----続く----
洋楽好きです。ハイ。ソウルとかとってもステキ★