「船が壊れちゃって…。ちょっと帰れなくなって困ってたんですよ〜」
心底たすかったと言わんばかりに笑顔をさらけだすそのヒト。
「あの」
海に入ったままでその人に声をかける。
「もう、どこらへんまで出てきたかわかんなくなっちゃいまして…まぁいっかと寝てたら」
「…あの私も」
「もう、まさか遭難だなんてありえませんよねぇ、ほんと」
…聞いちゃいない
波が体にとぷんと重みを与える。
その重みよりも大きな声で、叫んだ。
「私もです!!!!!」
「…………え?」
しわが三本寄せ集まったその人の額を、
ぺしっと一枚の葉が叩いて飛んだ。
----続く----
もうめっきり寒いですね〜…。ぶるり。