初夏





二人は、実は寝てはいなかった。



目を瞑っているだけだった。







セイが少し震えていたからだ。



総司は、その震えを布団ごしに感じながら、セイに触れることはできずにいた。



それは、昨夜のセイのおかしな反応が、何か総司にすっきりしないものを与えていたからでもあった。







総司は、うっすらとまぶたを開いた。



辺りは静かで、恐いくらい闇に包まれていた。



セイの息遣いさえも聞こえずに、総司はただ息を殺していた。





総司は、セイが起きているのを知っていた。



だからこそ、言葉さえも発せずに、ただ闇に包まれていたのだ。











セイは瞼を閉じたままだった。































「………逢いたいひとが………いるんです」































その言葉は、壁にさえ届かずに消え入るようで。











時間は止まったかのように、長く長く二人を遠ざけた。







総司は耳をそばだてているだけで、無反応だったが、それをセイはわかっているようだった。







「……………捜しているんです」











セイの悲痛な叫びであった。





それが、総司に、ぶつけられた。





ぶつける先を、セイは、選んだのだ。











しぼりだしたような声は、もう、開く意志は無いようだった。







総司は、うっすらと開けていた瞼をもう一度閉じた。















この子には、大切な人がいたのだ。











それだけが総司にわかった事だった。









いや、大切な人が…………「いるのだ」と、総司は心の中で訂正をした。













その胃にぽっかりと開いたような感触を抱きしめるように、総司はうずくまった。















波の音が消えずに、総司に耳に残っていた。



























----続く----

やっと序章終わったぁー!次は新章突入です★