ガシャコン、といった金属音が日曜の朝の、冷たいコンクリートに振動する。
自転車のカラカラカラ、といったタイヤの音がセイに近づいてくる。
セイの眉は、寄りすぎて皺を3本も作っていた。
総司の顔は始終笑顔であった。
「じゃぁ行きましょう」
総司のすがすがしすぎるその声に、セイはいっそう眉を寄せる。
無理矢理着替えさせられたセイの服装は、ジーンズをTシャツといったラフなものだった。
総司は、有無も言わせぬ笑顔でセイを後ろに乗せると、走り出した。
下り坂に入り、スピードは自然と上がる。
自転車は更に加速していった。
坂の向こうに、海がキラキラと反射する光景が見える。
セイの長い髪は強い向かい風に流され、頬に冷たい朝の空気が当たる。
「…あのーーーーっ!」
セイは、そんな風にはむかうように、声を振り出した。
「はいー?」
総司もまけじと叫ぶ。
「なんでいきなり海なんですかーーーー?」
セイは髪をかきあげてそう叫んだ。
叫んだ声は次々と風にさらわれてゆく。
「それはですねーーーーが……に———」
自転車が加速していくごとに総司の声もとぎれていく。
「聞こえませんよー!!ていうかそもそも何で私が先生と海に行かなきゃいけないんですかーーーーー?!」
「えー?何ですかーーー?」
これ以上は無駄だと悟ったセイは、やっと口を結んだ。
口内は、夏の乾いた空気で少し乾いてしまっていた。
潮の香りが、気持ちいい程度に、鼻をついた。
----続く----
気長に頑張りますね〜…えへ〜…(やる気ねぇ!!)