初夏





「また来たんですかぁ?」





総司は呆れたように口に含んだ水を喉にとおして、コップを置いた。





「……だって…眠れないんです」





「…しようがないですねぇ」





総司は、そう承諾したも同じ台詞をはくと、ベッドに座った。





セイはうれしそうに笑って、たたたと駆け寄ると、総司の隣に座った。





もうすっかり総司になついてしまっていた。











「沖田先生、お土産です♪」





「何です?…あッ羊羹!!」



「お好きでしょう?」







「おいし…ってまた太っちゃうじゃないですかぁ!!」





無邪気な笑い声の中、二人は仲良く布団に潜り込む。







セイは羊羹を寝ながら食べる総司に、行儀悪い、と毒を吐いて笑った。





総司は本当においしそうにそれを口の中にしまいこむと、セイに向き直る。







「神谷さんが悪いんでしょう?」





そう言いながら、総司はセイの腰に手をやった。











その時だった。





セイが、「うひゃ」と変に声を裏返して除けたのである。













総司は反射的に手を離した。







「…えッ?」





総司は何が起こったかわからないというように、声を発した。





それから、妙な感覚が総司の体に走った。一瞬だった。









セイも、自分の無意識の行動に驚いたようで、あれ?というように眉をしかめた。





その顔に、総司も眉をしかめる。







二人は、今のことがらを理解しようと思ったが、沈黙だけが過ぎていった。









「……あの」





セイが沈黙をやぶる。





総司は自分の手をにぎにぎと布団の中で開いたり閉じたりしてとまどったまま、



「…はい」



とだけ返事をした。







「…おやすみな…さい…?」



「…あ…はい…そうですよね…?」







二人は、なっとくのいかないまま、みつめあった。







だが、諦めたのは総司であった。





根をあげたように、





「…おやすみなさい神谷さん!」





そう言うと、こぶしをにぎって収めた。





「はい!おやすみなさい!!」



セイも叫ぶように言うと、二人は目を閉じた。









そうして、夜がふける。







田舎の夜は、涼しい。





風通しがいい。







その風は、二人の頬をかすめて、戻っていった。























----続く----

今日の出来事:ミス・サイゴン(ミュージカル)を見た。(だから何なのさ)