初夏





「神谷…だっけ?」



そんなちょっと高めの声に、目を開いた。



夢を見るか見ないかのはざまで、ぼう、とした頭を晴らそうともう一度まばたきをした。



「ね、昨日うちに来た神谷でしょ?」



そう言って笑うその顔は、なんだかひとなつっこかった。



「俺、藤堂っていうんだよね。今日さぁ挨拶しようと思ったらもういないんだもん!いったいどこにいたの?」



「……ええと………屋上に」



ちょっと考えたが、まあいいか、とそのまま答えた。









「……こんな田舎、はじめて?」



「…え?」



突如とふりかかったその質問に目を開いた。



「なんかさ、初めてだって顔に書いてあるんだよね」



そう言っておかしそうに笑う藤堂という人を、セイは目を薄くして眺めた。



「……はじめて、では……無い……か、も」







「あれ、そうなの?」



「?」



びっくりしたようにする藤堂に、セイも目を開く。



「いやね、実は今のさぁ、先輩の斎藤さんって人のうけうりなの。あの人のカンってはずれたことないからさぁ」





くったくなく笑う藤堂という人に、セイは、ほんの一瞬切なそうに笑った。









「そうなんですか」





そういって、もう一度笑った。





今度は、とても幸せそうに。











----続く----

あッ!!本が読みたくなってきた!!唐突だな自分!!