男は、ベッドの前で座り込んでいた。
一睡もしていないらしいその目は、どこを見ているのかわからない。
かたん、という戸を叩く音がする。
虚ろな目は、静かに、玄関へと首を回した。
よろよろと、立ち上がって玄関へと歩く。
ゆっくりと、重い、足取りで。
玄関を開けると、夜はあけていた。
こつん、と何かに当たる音がした。
何かの包み。
おはぎだった。
それと、手紙。
『すみません。相変わらず泣き虫で。
おはぎ、食べてください』
玄関も開いたままで、その包みを開いたままで。
男は、おはぎをほおばった。
そして、青空を見上げた。
とても、まぶしそうに。
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