おかしなふたり 連載41〜50 | |
第41回(2002.10.12.) 「服までなら自由に変えられるんじゃないかな?」 ふ、服? 「そーだよ。例えばその・・・今はお兄ちゃんセーラー服着てるけど、あたしがブレザーになれーっ!とか思えばブレザーになったりとか・・・」 「お、お前まさか・・・」 この2人、客観的には性別もスタイルも正反対なのである。背が高い方、学生服姿の美少年が“妹”で、小柄でセーラー服姿の美少女の方が“兄”なのである。 「そうじゃん。その前にすることがあるじゃん」 また勝手に何か納得している。 「・・・?」 その瞬間だった。 服の中で何かが蠢いた。 「・・・?な、何だ?」 こそこそとくすぐられる様な感触・・・忘れてはいけない。セーラー服に隠されたその肉体はすっかり女のものなのである。 お、おっぱいが・・・く、くすぐ・・・ったい・・・ 「あ・・・ん・・・ああっ!」 何故かその生まれたばかりの乳房が、がっしりと抱きしめられたのだ! 「・・・どう?」 「・・・ど、どう・・・って?」 「いや、着てる服変えられるんならブラジャーも付けられるかなーと思って」 「ヘェ!?」 素っ頓狂な声が出てしまう。 た、確かに・・・この胸が締め付けられる感触って・・・ぶ、ブラ・・・ジャー・・・。 恥ずかしくて顔から火が出そうだった。 言うまでも無いが、これが歩(あゆみ)の人生における“初ブラジャー”体験であった。しかも、ぺったんこの男の胸に無理矢理付けたのではなく、立派な胸の上にぴったりとフィットされたのである・・・。 |
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第42回(2002.10.13.) 「ちょっと触ってもいいかな?」 「だ、駄目だよ!駄目!」 胸を抱きしめる様にしてかばうセーラー服の歩(あゆみ)。その挙動で長い髪がふわりとゆらぐ。か、可愛い・・・。 「なんだよケチィ・・・」 「普通の兄妹でもそんなスキンシップ無いだろーが!」 「あ・・・そーか」 言われなければ気が付かなかったらしい。 「でもあたしはいつも“触ってもいーよ”って言ってるじゃん」 「お前はよくても俺は嫌なの!」 「ふーん・・・まーいーや。ちゃんとブラできたみたいだし」 そのキーワードが出る度に恥ずかしくなってしまう歩(あゆみ)。でも確かに胸に感じるこの感触・・・。 「・・・?」 また違和感を感じる。ま、まさか・・・。 「お、おい・・・よ・・・よせっ!」 「はいパンティ完成」 またも歩(あゆみ)は初体験をすることになったのだった。 「でもってスリップも・・・」 「あ・・・ああっ!」 全身が柔らかくてすべすべの感触に包まれる・・・それは女性の下着に違いなかった。 「もうこれで全身完成だね!」 誇らしげな聡(さとり)。 「お前・・・なあ・・・」 色んな意味で泣きそうな気分だった。 と、学生服姿の聡(さとり)はズボンの前面を引っ張って中を見ているではないか。 「うーん、こっちの下着は最初からガラパンだわ」 そ、そうなのか・・・何ともいい加減な能力である。 「さとりちゃーん」 母親の声だった。 全身の血が逆流するのと同時にそのドアが開けられた! |
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第43回(2002.10.14.) 「さとりちゃん・・・」 逃げ出す暇は無かった。どうしようもなくて石化してしまうセーラー服姿の歩(あゆみ)。 ど、どうしよう・・・どうしよう・・・こんな姿を母親に見られるなんて・・・。 「あ、あはは・・・どーもー」 流石の聡(さとり)もちょっと恐縮しているのか笑顔が引きつっている。 「あらあら可愛いわね。それってカツラなの?」 「あ、あの・・・」 「あ、うん。そー、そーなの!」 聡(さとり)が慌てて取り繕う。 カツラ?・・・ 「あゆみちゃんまで・・・」 母親は歩(あゆみ)のことを「あゆみちゃん」と呼ぶ。もともと性別不詳の名前なのに余計に誤解されそうで、歩(あゆみ)はあんまり好きではなかった。 「それは・・・買ったの?」 どうして聡(さとり)に話し掛けているんだ? 「だよねー?さとりい!」 わざとらしいくらいの聡(さとり)。 「ちょっと学園祭の仮装の練習。だよねー?聡(さとり)?」 あ、そうか! 氷解した。 お母さんは、女の子になっちゃった自分を妹の聡(さとり)だと思ってるんだ! そして学生服姿の妹と兄の歩(あゆみ)だと・・・。 まあ、普通に考えれば当然の話だった。 |
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第44回(2002.10.15.) どう見ても少女そのものの今の歩(あゆみ)を見れば、「兄の歩(あゆみ)が性転換した後の姿」であると考えるよりも、「妹の聡(さとり)が変装した姿」であると考える方が無理が無い。 ・・・というか普通兄が性転換するとか考えるはずが無い。 「う、うん!そーなの!」 ひきつりながら、なんとか妹を装って演技する歩(あゆみ)。 「へーえ。悪くないわね」 この母親と娘は、ご多分にもれず仲がいい。4人家族で綺麗に男と女が2人ずつになるのでバランスもいいのだ。・・・最も母親と娘と違って父親と息子というのは一定の距離があるのだが。 「あんまり騒がないでね」 結局全くバレることなく母親は出て行ってしまった。 まあ「バレる」ったって「実はこの兄妹はお互いに相手を性転換&異性装出来たのです!」と告白したところで信じて貰えるとも思えないのだが。 聡(さとり)がますますニコニコしている。 「やったねお兄ちゃん」 「な、何がだよ・・・」 言いたかないが、兄妹・・・今は姉弟・・・の身長は綺麗に逆転していた。 「ママにバレなかったじゃん」 「まあ・・・そうだけど・・・」 「これでこれからも大丈夫だよ!」 ウィンクしてぐっ!と親指を立てる美少年。 「まあその・・・分かったから1回戻ってみようぜ」 ・・・どうもこの声が馴染めない。お転婆な女の子が無理に男言葉を使っているみたいで・・・ 「そうねー、それじゃあ・・・」 |
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第45回(2002.10.16.) 「戻してくれるのか?」 「じゃあ・・・最後に1回だけ」 「“一回だけ”って・・・」 その時だった。 膝下まであったスカートがむくむくむくっ!と短くなっていくではないか! 「わわわっ!」 だが、スカートだけが短くなったので、裾からスリップがはみだしてしまう。 「あっ!ごめーん!」 すぐにスリップがスカートの長さに合わせてすうっ!と短くなり、裾に隠れる。 「あ・・・」 すっかりミニスカートになってしまった歩(あゆみ)はその惜しみなく晒された脚線美・・・まだまだ発展途上だけども・・・に恥ずかしそうに赤くなった。 スカートを掴んで少しでも脚を隠そうと下に向かって伸ばそうとする。 「やっぱり・・・服装も変えられるんだ」 嬉しそうな聡(さとり)。 ぞぞーっとした。これはトンでもないことになった。 「てゆーかお兄ちゃんもやってみればいいのに。あたし・・・じゃなくってボクの服装変えてみなよ」 “ボク”とか言って雰囲気出しやがって・・・似合ってるけど・・・。 「そんな気分じゃないよ」 「それじゃあ遠慮なく」 「へ?」 その瞬間だった。 真っ赤なスカーフがしゅしゅしゅっ!と紺色のセーラー服に飲み込まれていく・・・また変化が起こったのだ! |
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第46回(2002.10.17.) 「あ・・・あ・・・」 セーラー服の長袖がすすすっと縮んでいき、半袖になる。 またまた露出した女の素肌に戸惑う女若葉マークの歩(あゆみ)。 その半袖の縁、が厚手の生地になる。 そして・・・その紺色が白く白く変わっていく。 「お、おい・・・一体・・・何・・・を」 「まーまーいいから」 もう何のためらいも無く能力を使っている。1年も使い込んでいるかの様だ。・・・まあ、この性格の妹にはあつらえたかの様な能力なのだが・・・。 短いスカートがふとももに張り付き、下腹部に密着する。 「ひゃっ!」 そしてパンティ型へとその形を変形させていく。 「ああ・・・あ・・・」 長い髪がくるくると生き物の様にまとまっていく。それは「三つ編み」であった。 「はい!でーきた!」 「あ・・・これ・・・は・・・」 歩(あゆみ)は体形はそのままに、長い髪をストレートロングから活動的な三つ編みにした体操服にブルマ姿の女子高生になってしまったのだ! 「か、可愛い・・・っ!・・・」 ぷるぷる震えている美少年聡(さとり)。 健康的ながら張り詰めたブルマから伸びるふとももがちょっぴりいやらしい。 しかも体操服のすそをブルマに入れていないので、ブルマが半分くらい隠れている。それを恥ずかしがった歩(あゆみ)が脚を隠そうと体操服のすそをぐいぐい押し下げるもんだから余計に「裸に体操服」状態に・・・ 「つまんないのー」 |
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第47回(2002.10.18.) 膨れながら言う学生服姿の少年・聡(さとり)。 と、先ほどと逆の行程を辿って元のセーラー服に戻る歩(あゆみ)。もう変幻自在だった。 「誰がこの状態にしろって言ったよ!男に戻せよ!」 「あ、そうか」 「“そうか”じゃねえよ!」 小柄なギャル(死語)がきゃんきゃん怒る様子は、本人には気の毒だけど実に可愛らしかった。 「もっと色々試したいんだけど・・・」 「オレの気にもなってくれよ!嫌だよ!それくらい分かるだろ?」 といってスカートを掴む歩(あゆみ)。 「だからその・・・あたしにもしていいって・・・」 「オレは他人を勝手に変装させる趣味は無いの!」 くちをとがらせてふくれている聡(さとり)。 「もお・・・可愛いのに・・・」 「可愛くても嬉しくないの!」 何か思いついた様子の聡(さとり)。 「じゃあさあ!たまにならどう?」 「やーだ!」 「つまんないよ。折角こんな能力があるのに・・・」 「お前はいいかも知れないけど、オレにいい事一つも無いじゃんか」 「ん?じゃあ交換条件があればいいのかな?」 しまった!と思った歩(あゆみ)。 「いや・・・別にそういう訳じゃ・・・」 「お小遣いあげるってのはどお?」 「え?・・・」 「1回100円とか」 「安いよ」 とは言え、自分と同じ高校生の妹がそれほど持っているとも思えない。まあ、あまりお金の掛かる遊びをする妹でも無いので、お年玉の類も殆ど使わずに持っている。だから非常に物持ちがいい、というか“金持ちがいい”印象はある。 それにしても、妹から金を巻き上げる気にはなれないし、・・・何というか男の尊厳を1回100円で売り飛ばす気にもならない。 「ふーん、じゃあバレてもいいんだ」 |
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第48回(2002.10.19.) 不敵に笑う少年・聡(さとり)。 「お、お前まさか・・・」 親にバラす積りか? 「うん。そーだよ」 「でも・・・そんなことしたらこっちも親の前でお前を男にしてやる!」 ・・・なんかどー考えてもこっちの方がダメージ大きい気がするんだが、ともかくここで強気に出ないと大変である。 「親?・・・親になんかバラさないよ」 「へ?」 「あ、そうか・・・親にバラすって手もあるわね」 か、考えてなかったのか・・・。また新たなネタを与える様な発言をしてしまった・・・。 「違うのか?」 「いや、恭子ちゃんに教えてあげようかなーって」 歩(あゆみ)の顔色が変わった。 「お、お前・・・ずるいぞ」 もじもじしながら言うセーラー服美少女。か、可愛い・・・。 にっこりする学生服少年。 「別にどーこーしよーってんじゃないし。それに・・・お兄ちゃんも楽しんだ方がいいよ。だって面白くない?」 「・・・」 「何かで読んだけど、男の人って一生に一度は女装したいって思うんでしょ?あと女の子になってみたいとか」 「それは・・・その・・・」 じ、じつはちょっとだけ“気持ちいいなあ”と思っていたりしないこともないこともないこともないこともないんだが・・・そんなこと妹に言える訳が無い。 「大丈夫だって!あたしが・・・じゃなくてボクが男でもそう思うに決まってるから!」 元は女で、今男になっている妹が「もしも男だったら」と発言する場面はなにやら気が狂いそうだった。 |
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第49回(2002.10.20.) 「じゃあまあ・・・たまにだぞ」 結局こういうことになってしまったのだ。この時の言い様はもう少しなんとかならなかったのかと今でも思う。もう少し条件をつけるとか何とか出来なかったのだろうか・・・。 「ありがとー!お兄ちゃん!」 がばっ!と抱き付いて来る聡(さとり)。 「わあっ!」 その柔らかい身体で男になった妹に抱きしめられるのは初めてだった。しかもお互いにセーラー服と学ラン姿なのだ・・・。 この頃にはまだこの部屋に姿見も無かったのだが、客観的にはもう似合いのカップルそのまんまだった。 「もう・・・やめ・・・ろよ!」 ぐい、と突き放すセーラー服歩(あゆみ)。 学ラン聡(さとり)も、本気になればまだまだ女になってしまったこの兄を弄べたのだろうが、ここは素直に離される。 ・・・その・・・認めたく無いんだけど・・・この時にいやいやながらも時々なら能力を発動していいというのを認めたのは・・・ひょっとしたら心のどこか奥底に「女装してみたい」というか「女の子になっておしゃれしてみたい」なんて願望が1%位顔を覗かせていたのかもしれない・・・。 その時だった。 |
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第50回(2002.10.21.) 「ありがと!おにーちゃん!」 と、言うが早いがひゅっ!とそばに寄って来た学生服の美少年たる聡(さとり)は、ミニスカートのセーラー服姿になっている“美少年”歩(あゆみ)の顔の前に自分の顔を滑り込ませると、驚いているその隙に“ちゅっ”とその唇を合わせた。 「なーんちゃって!あはは!」 呆然としている歩(あゆみ)。 「まーじゃー、とりあえず今日のところはあと何種類か女子高生の制服着てみよーか!」 石化したまま動かないセーラー服歩(あゆみ)。 「えーと、どれからいかーかなー・・・ってお兄ちゃん?」 小さく小刻みに震えている歩(あゆみ)。 その瞳が潤みを帯びてくる。 「あ、あれ?・・・おいに・・・ちゃん?」 背が高い学生服がセーラー服姿の小柄な美少女に対して「お兄ちゃん」と呼びかけるのも異様なのだが。 じわり、とその目に涙が浮かんでくる。 「あ・・・あの・・・」 手で目をごしごし擦りながらえぐえぐ泣き出してしまった! 「あ・・・あは・・・は・・・」 流石にこんな姿にされた上に“初キッス”は衝撃が強すぎたのだ。 「ご、ごめん・・・なさい・・・あの・・・その・・・」 まるっきり“女の子を泣かしちゃって困り果てる悪ガキ”という構図そのまんまである。 これでは流石の聡(さとり)でもこれ以上歩(あゆみ)をおもちゃにすることは出来ない。 「じゃあ・・・帰って・・・いいよ。うん」 誰かに見られることの危険性も顧みず、駆け出して行くセーラー服。 結果として“女の武器”を使いこなす事になってしまった歩(あゆみ)だったのだった・・・。 ・・・とまあ、これが「初めての」変身の顛末である。 |