今から二十数年前、この竜の里より一人の好奇心旺盛な娘が飛び出した。
娘はある青年と恋に落ち、人間として暮らすことを選んだ。
しかし、その娘の親は猛反対し娘を連れ戻した・・・しかし既に娘のお腹には二人の愛の結晶が宿っていた。
その娘がフリードの母であり今の竜神の娘、青年が父親であり、サザンビーク王子のエルトリオだった。
生まれた子供はすくすくと成長し、竜の力、そして人間の深き愛情をもってりっぱな青年となろうとしていた。
竜神は、半分人間の血が混じっていようと、資質に問題無しと見て次期竜神にフリードを・・・と考えていたし、里の民の大半もフリードの力を認め、なによりその人柄に親しみを覚えていた。
ただ、一部長老衆が異議を唱え、試練を与えることを要求した。
折りしも人間界では、暗黒神復活の兆しが見えており、フリードの記憶を消して人間として送り込み、暗黒神を倒させようとしていた。
愛娘の息子、自身の愛する孫を危険な目には合わせたくないが、一族の長として、竜神はその試練をフリードに課した。
全て終われば、自身の座を明け渡そうと決めて。
「・・・という訳じゃ」
聞き入っていた仲間が口々に話し出す
「フリードって竜神様の孫・・・で、次期竜神様なの?!」
「っていうかよ、サザンピークの正統後継者じゃんかよ」
「ってーこたぁ、兄貴は竜神様で王様でゲスか?訳わかんねぇでゲス」
「お前等・・・言っただろう、記憶が戻っても俺は俺だと」
竜神がフリードに話しかける
「ではフリード、お前やはり・・・」
「申し訳ありません、竜神様・・・いや、お爺様」
「私は父が生まれた世界、そして母が愛した世界でこれからも生きていきたい・・・そう思うようになりました。特に・・・この仲間達と出会ってから」
「・・・お前ならそう言うのではないかと心配しておったことが現実になったか・・・しかし、ワシも二度と娘のような過ちは犯したくない・・・よかろう、好きにするが良い」
「しかし、お前の故郷はここにある・・・それを忘れるな」
「有難う御座います、お爺様」
「人間界に戻るんだろう・・・これをもって行け。母親の形見じゃ・・・お前がもっておる方が良かろう」
アルゴンリングを受け取り、四人は里を後にした。