決戦



 いよいよ決戦の当日である・・・早朝にフリードが独り起き上がる。
(すまんな、皆・・・やはりお前達を危険な目に合わせるわけにはいかん)
こっそりと戦場に向かおうと身支度を整えるフリードの服の端が引っ張られる。
「何で独りで行こうとするのよ、それはないんじゃない?仲間だって言ってくれたじゃない・・・背中を預けてくれたのは嘘だったの?」
ゼシカが起きて来ていた。
「アタシだって、それにククールだってヤンガスだってアナタのこと信頼してついて来たんじゃない・・・ここでハイさよなら、はないでしょう?一緒に行かせてよ、それとも足手まといだってまた突き放すの?」
振り向かずにフリードが答える
「今度こそ命がけの戦いになる・・・俺はお前達皆死なせたくないんだ」
「アッシらだって同じでゲス、兄貴を死なせたくないでゲスよ」
「必ず生き残るんじゃなかったのか?皆一緒によ?」
ヤンガスとククールも起きて来た。
「そうよ、皆で立ち向かおうよ。一緒に闘って、誰一人失わずに帰ろうよ・・・もう、誰も失いたくないの」
目に涙を溜めながらゼシカが訴える・・・服の端ではなく、いつの間にかフリードの腕をしっかり掴んでいる。
「・・・そうだな、俺が言った事だったな・・・行くか、皆の明日のために」
「ええ」
「最後の一仕事・・・ってか?」
「兄貴!行くでゲス!」
四人は肩を並べ、いざ決戦の場へと向かった。

 闇の遺跡の最深部・・・ついにドルマゲスの目の前までやって来た。
「おやおや、本当に此処まで追いかけてくるとは・・・ご苦労様なことですねぇ・・・ククク」
「いいでしょう、その愚かな勇気に免じて全力で戦ってあげましょう・・・ククク」
ドルマゲスが猛攻を開始する。
「くっ、なんて攻撃だ・・・こっちが攻め手に回る隙がない」
「とにかく守りを固めねぇとな・・・いくぜ、スクルト!」
「そうね、まずは身を守らなきゃね・・・フバーハ!続けてマジックバリア!」
「兄貴、今は力を貯めるでゲス・・・チャンスを窺って一気に行くでゲス!」
前衛にフリードとヤンガスが、後衛にククールとゼシカが陣取りひたすら攻撃に耐える。
「クッ・・・なかなかしぶといですねぇ・・・」
一瞬ドルマゲスの攻撃の手が緩む
「ゼシカッ!」
フリードが叫ぶ
「はいっ・・・バイキルトッ!」
フリードとヤンガスに攻撃力上昇の呪文がかけられる。
「貴様如きにくれてやるほど、この命安くはないっ!喰らえ!!」
高く舞い上がったフリードが一気に剣を斬り下ろし、その切っ先が地面に着く寸前で再び斬り上げる。
「行くでガス!突貫〜!」
ヤンガスも渾身の一撃を見舞う。
「まだまだぁ!俺もいるってことを忘れちゃあ困るぜっ」
ククールが続けざまに矢を射掛ける。
「グアァァァァァ!!」
「・・・ハァ・・・ハァ・・・まだです、まだ私は死にませんよ・・・これならどうです?・・・クックック」
瞬時にドルマゲスが三体に分身する。
「おいおい・・・勘弁してくれよ、あれが三体も出てくんのかよ」
ククールがボヤく。
冷静にフリードが返す
「いや、絶妙のタイミングだ・・・」
「何のタイミングでゲス?」
その時、三人の背後で詠唱が終わりかける
「・・・ゼシカ・アルバートの名に於いて命ずる・・・大気に宿りし精霊達よ 全てを巻き込む爆炎となりて 邪悪なる存在を無へと還せ・・・来たれ超爆発!」
「行きます!イオナズン!」
三人がとっさに弾ける。
眩いばかりの閃光と共に大爆発が巻き起こる。
「グギャァァァァァ!」
分身のうち、二体が消滅する。
「すげぇ・・・ゼシカのヤツ、どこまで魔法力上げる気だ?」
ククールが驚愕する。
「フリード!アタシの魔法力、今のでスッカラカンだからねっ!ここで決めて!」
「任せろ!」
「雷よ・・・彼の地より我が元へ集え・・・我が力となり邪なる力を退けよ!」
フリードが一瞬にして詠唱を終える
「あの呪文・・・なんであんな短い呪文で、あの魔法が・・・」
ゼシカだけがその魔法に気付き、その詠唱時間の短さに戸惑う。
「ライデイン!!」
フリードの上空から激しい雷がドルマゲスに向かう。
「甘いわぁっ!」
咄嗟にドルマゲスが魔法反射呪文を唱える。
「兄貴に跳ね返ってくるでゲス!兄貴〜!」
ヤンガスが慌てている
「甘いのは貴様だドルマゲス!俺がその程度のことを読みきれないと思ったか!」
跳ね返った雷を剣で受け止め、剣と己自身に雷を纏うフリード。
「あ・・・あれが・・・噂にしか聞いたことねぇが間違いない・・・あれこそ・・・」
ククールが攻撃するのも忘れて見入っている。
「行くぞドルマゲス!・・・・ギガ・スラァァァァッシュ!」
「ガァァァァァァ・・・グ・・・グハァッ」
ドルマゲスの体を閃光が突き抜けたかと思った矢先、断末魔の叫びと共に倒れこむ。
「そ・・・その力・・・そうか貴様・・・あの一族の血を・・・・」
最後に謎の言葉を呟き息絶えるドルマゲス。
真っ先にフリードに駆け寄ったゼシカだけがその言葉を聞き取れた。
(あの一族?・・・フリードって・・・)
そのことをフリードに聞こうとした矢先、フリードが倒れこむ。
「キャッ!、フリード!しっかりして!!」
抱きとめるゼシカ
「大丈夫だ・・・久しぶりに使った技だからな・・・気力を使い果たしただけだ・・・」
ついに四人はドルマゲス打倒の悲願を遂げたのだ。






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