トロデ王が過去を振り返り話し始めた・・・
あれは今から十年くらい前じゃったかのぅ・・・ワシがミーティアを連れて隣国まで出かけた帰りのことじゃったなぁ。
もうすぐ城が見えるというときに大きな黒い馬を見つけたんじゃ。
よく見ると背中に生きとるのか死んどるのかわからん人間を積んでおった。
ワシだけなら通り過ぎたかも知れんが、やけにミーティアが気にするのでとりあえず手当だけでもと城に連れ帰ったんじゃ・・・ほんに偶然じゃった。
どこの誰かは解らん男にミーティアがなついたのもあれが最初で最後じゃがの、ミーティアのたっての願いで城の小間使いとして置くことになったんじゃ。
その男がフリードじゃ・・・名前と年しか覚えておらん不思議な目をした男じゃったな。
多少無口なところもあったが、ミーティアには優しくしてくれたわい・・・ミーティアも兄のように慕っておったの。
ある時、国境付近で山賊騒ぎがあっての、王国騎士団のほとんどを鎮圧に向かわせたのじゃ。
もともと当時は戦争もなく平和じゃったから、城の防備も手薄なのを気にもせずにな。
そのときに限って、いきなりモンスターの大群が押し寄せてきたのじゃ。
こちらは少数の近衛兵しかおらず、絶体絶命と思ったその時じゃ。
城門より飛び出していく一騎の黒い馬が見えた、そう、フリードじゃ。
その時は、ワシもミーティアも、やつはただの記憶喪失の小間使いとしか思っておらんから驚いたわい。
するとどうじゃ・・・・。
向かってくるモンスターの大群にいきなりギガデインを唱え、残った中心に斬りこみギガスラッシュの連発じゃ。
数百はいたモンスター壊滅じゃよ。
それを見てワシはあやつを近衛騎士団長に抜擢したんじゃよ・・・若干21歳の若さでな。
最初は騎士団の中に不満もあったのは事実じゃ。
じゃが、あやつは自身の力と態度を見せることで皆の心を徐々に掴んでいった。
いざ戦いとなると必ず先頭に立ち、退陣時は必ず殿を務める・・・そんな団長をいつしか皆慕うようになったのじゃ。
近隣諸国にも知れわたっておったのじゃぞ?いろんな呼び方をされておった・・・
一騎当千、千人力の武神、剣聖・・・
なかでも一番の通り名が「トローデンの猛き雷光」じゃったな・・・。
雷の魔法を自在に操り、敵陣中に単騎で乗り込む様はいつ見ても圧巻じゃったのう。
あやつがいればわが国は安泰・・・そう信じて疑っておらんかった、ワシも国民も・・・ミーティアものぅ。