宿屋に泊まった一行だが、夕食後一人でククールは出て行ってしまう。
フリードが追いかけようとすると
「ワシに任せろと言ったであろう・・・上手い具合に例の物も出来上がったようじゃ」
トロデ王がゆっくりと出て行く。
宿屋の外で独り考え込むククールにトロデ王が声をかける。
「よう色男、柄にもなく真剣に悩んでおるようじゃの・・・それほど見透かされたことが悔しいかの?」
自嘲気味に笑いながらククールが返す
「いや・・・もう剣は捨てたと思っていたがな、まだ腰に刺してる俺が未練がましいのさ」
「・・・兄・・・の存在かのぅ」
トロデ王が問いかける言葉に、ゆっくりとククールが答えだす
「そうさ、兄貴は剣が一番の得意だった・・・そりゃ騎士団長だからな」
「向こうは俺のことを嫌っていても、俺は憧れてたんだよ・・・強い兄貴にさ」
「俺も必死で練習したさ、その成果かセンスなのかはしらねぇが、気がつくと他の騎士団相手にゃ負け無しの状態さ」
「いつの頃からか騎士団内部では、ククールかマルチェロかどっちが強いって話になりかけてな」
トロデ王が言葉を挟む
「兄に譲ったか・・・」
ククールは続ける
「俺は軟派な騎士でいいのさ、責任も何もなかったからな・・・兄貴は、違うからさ」
しばし沈黙の後、トロデ王が切り出す
「しかしその腰にあるものが物語っておるぞ・・・剣を捨てられぬと」
「今は修道院にいるわけでもなく、倒すべき敵がおるんじゃ・・・最も信頼できる武器を使ってみんか?」
「ほれ、錬金釜で作っておいた、気が向いたら使ってみるがよかろう・・・」
渡されたのは聖銀のレイピアだった。
トロデ王はさっさと帰っていった。
レイピアの柄を握り、久しぶりに剣を振ってみる。
(過去への拘り・・・か、らしくなかったかな、俺にしちゃあ・・・)
翌日、再びモンスターとの戦闘になる。
「ククール、サポートを頼むぞ!」
飛び出そうとするフリードにククールが声をかける
「待てよ、俺様の剣裁き、見たくないのか?」
同時に飛び出すフリードとククールは背中を合わせて敵と対峙する。
「ふっ切れたのか?」
敵からは目線を逸らさずフリードが問う
「やってやるさ、拘ってる場合じゃねぇからな・・・お前らとつるんだ時から覚悟はしてたはずなんだがな・・・悪ぃ、遅くなっちまって」
背中を合わせているから表情は見えないが、どうやら少し照れながら返事をするククールであった。
新たな陣形も完成し、いよいよドルマゲスに決戦を挑む時が近づいている。