第1話  眠れぬ夜



月に照らされて歩道を歩く私。

一人疲れた体を引きずるように家路を急ぐ。

路地裏のゴミ箱の脇から小さな子猫が飛び出した。

瞳が綺麗に光る。真っ黒な黒猫だった。

私はそっと抱き上げる。

「お前も一人ぼっちなのね・・・。けど強く生きなくちゃ!」

そう呟き子猫と別れた。

あぁ、寒い。風が寒い、空気が冷たい。

もうすぐ、部屋から近い歩道橋にたどり着く。

ここから見上げる夜空が最近の私の癒しになっていた。

缶コーヒーを片手に少しだけ体の力を抜く、ほんのひと時。

「今日も星が綺麗。明日も綺麗でいてね。」

缶コーヒーを飲み終えて、歩道橋を降りかかった。

私は足元に何か見つけた。



ん?手紙?そう、白い封筒が落ちていたのだ。

そっと手に取ってみる。

誰に宛てたのか・・・。宛先もない。

封筒の中には白い便箋が一枚。

「もう、疲れた。このまま消えてしまいたい。そっとしておいて。」

これだけの文字しかないのだ。

これって?もしかして?

嫌な不安を覚えた文章。そう、きっとこの手紙の持ち主、自殺を考えてるのね。

いや考えすぎ?もしかしたら家出とか。

辺りを見回したところで誰も人影もない。私はどうしたらいいのか。

このままこの封筒をその場へ置いていこうか。

それとも・・・。どうにもならない。

しばらくその場で悩んでしまった。体は芯まで冷たく冷えてきってしまった。

空を見上げて星に問いかけて見た。返事なんてないけど。

こうするしか・・・。



「ねぇ。この人って寂しいのかな?疲れてるのかな?私と同じに。」

返事なんてやっぱりあるわけない。

ただ星はダイヤモンドのように輝いている。

あぁ、寒い。早く部屋へ帰ろう。この手紙は持って帰ろう。

部屋に帰り熱いシャワーを浴びる。髪をタオルで拭きながら

ふと、かばんに目がいった。そう、さっきの手紙が気になる。

明日になれば歩道橋に現れるかな。この手紙の持ち主。



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