■ Episode9: 廃墟の世界 ■
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ばっく
*
脳が休めない・・・俺は起きている間、疑問ばかりだ・・・
俺は風にそれらをぶつけても理解できないでいる。
俺は一人部屋に戻り脳を整理したかった。だが、
できるはずもない。
俺は首をかしげるしかない。
「実行するしかねぇな。」
?!
振り返れば頬にタトゥー・・自らを魔人と呼ぶ男だった。
「よぉぉ・・眉間に皺がよってるぜ。・・・来い!」
「どこに!?」
「どこにだと?そんなのは重要じゃない。来るか来ないか、どっちだ?!」
「そんなこといわれても・・」
「知りたくないのか!・・・この世界を。」
「・・知りたいよ・・」
「・・・ついてこい。」
そう言うと、彼は振り返ることなくただひたすら歩き始めた。
魔人・・・一体彼はなんなんだ?・・風といい魔人といい、俺をどうしたいんだ・・・
そうこう考えているうちに街は視界から消えた。
あえて質問はしなかった。ただ後について歩いた。
暗闇の中、ランタンの灯りだけをたよりに・・・
ボッ
突然灯りが消えた。
見失った。盲目の世界を彷徨う。
「魔人!どこだ!どこだよ!・・・答えてくれ!」
全く返事はなかった。また、孤独か・・・
何時間・・・何分・・・何秒経っただろう。
闇では時間は存在しないかのように長く短い・・・
「真夜中・・・・」
(魔人?)
「月の隠れる地より・・・」
(魔人なのか!)
「蘇生を繰り返す・・・地涌の鬼どもが姿を現す・・・」
ザワザワ・・・冷たい風が吹き抜ける・・・
前と同じ感覚・・・恐怖と孤独が襲ってくる・・・・
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--------ゆっくりと目が開く。 空は曇っている。
また道端に倒れている。また瓦礫の山の中。また廃墟の街。
見覚えのある街並み・・・!!!
(ここは風の!風の街だ!)
んぐっ!
立ち上がろうとした瞬間、激痛が襲った。痛みの元を辿ると胸からヘソにかけて真っ直ぐ斬られ、
その跡は枝分かれしたかのように横にも広がっていた。
なんとか助かったようだ。
ゆっくり立ち上がり胸を抑えながら生存者を探しまわる。
「無駄だ。」
また背後から声がする。魔人だ。
「俺達と重傷者が一人いるだけだ。助かりそうもないが・・」
(?!風!)
「どこにいるんだ!?」
魔人は目で示した。
俺はその重傷者に駆け寄った。
!!
「ハァ・・ハァ・・ングッ・・うぅ・・」
風だった。
綺麗なエメラルドの瞳が霞んでみえる。
とても苦しそうだ。
「しっかり!」
「ん・・貴方は・・・何故・・・」
??
意味深な言葉をつぶやいた。
「風の・・あたる場所へ・・」
「?・・風のあたる場所だな!よし!」
俺は彼女を抱きかかえ風の吹く場所を探した。だが、
無常にも風は・・・
(!!息が弱くなってきた。)
「なんで吹かない!吹けよ!」
(そうだ!!あそこなら!)
俺は彼女のとっておきの場所に向かった。
(頼むぞ・・もってくれよ・・)
「はぁ・・着いた。」
彼女の髪が靡く・・
「おい!ここなら!・・!?・・・・」
彼女の胸に耳を当ててみる・・・聞こえない・・・響かない・・
涙が頬を伝う・・・
「なぁ・・ここが昨日見た景色か?・・君には見せたくない光景だ・・・」
彼女の恐れていたこと・・・それはいつかこの街が廃墟に化してしまうこと・・・
今、目の前に広がる世界は現実なのか・・・俺には夢にみえる・・・
あまりにも早すぎる・・・壊すことがこんなにも容易に成されている・・・
この世界にどんな怪物が潜んでいるんだ。
「やはり助からなかったろう?フフっ」
歩みよる魔人。
「泣いているのか・・・」
「アンタは悲しくないのか・・」
「俺の涙はとうに枯れた。・・・慣れだ。人の死なんてもの腐るほど見てきた。」
「なんで助けてあげなかったんだよ。」
「助けてどうする?また半殺しになりたいと思うか?助ければまたそれを繰り返すんだ。弱いやつが生き残っていける世界じゃない。」
「じゃあ、アンタは強いんだ。無傷ってことは・・」
「フフッ俺は世渡り上手なだけだ。」
「アンタの教えたかった世界ってこういうことか。」
「何を言っている。お前はまだ何も学んじゃいない。水面に浮かんでいるだけだ。今のお前じゃ泳ぐことも潜ることもできない。深く知ろうとすればした分、周りに押し潰される。俺は波を起こしてやってるだけだ。」
「手助けを?」
「簡単に言えばな。」
「俺は助けるのか。」
「お前は無知なだけだ・・・せいぜい今は感傷にひたってろ。そのうち涙など忘れる。」
彼はそういい残すと姿を消した。
バタンっ
音のするほうに目をやると
「あら・・仮死状態?私。」
歩み寄るもう一人の風。
「君は無事だったのか?」
「ええ・・何があったの?」
「わからない・・君はどこにいた?」
「ずっとここにいたはずなのに憶えてないの。」
「君はどっちの風だ?戸口にいた方か?それともここに連れてきた方か。」
「どっちと言われてもわからないわ。どちらも私だから。」
「君はいったい何人いるんだ。」
「一人よ。」
「俺をおちょくっているのか?」
「貴方こそ私に何をしたの?」
「俺は君を助けようとここへ連れてきた。・・・って事件を知らない同士がいがみ合っても埒があかない。とりあえずもう一人の君を・・」
(何!)
俺が抱きかかえてきた方の風の姿がなくなっていた。
気になったがあえて謎のままに。
「これからどうするの?」
「俺は放浪するが君はどうする?家を失ったんだ。」
「私も一緒にいくわ。貴方は無知過ぎる。」
「それは心強い。で、ここから一番近い街はどこに?」
「ここからだと北西の賢者の街かしら。知識人達の集う街・・きっと何かわかるはずよ。」
「では、そこに決まりだ。」
「今日は日が暮れるまでに準備を整えて、明日出発しましょう。」
俺達は廃墟の街に残った戦利品や食材を集めた。
彼女は歩きながら涙を浮かべていた。
俺はただ、知らぬふりをして別のルートへと足をのばした。
誰もいない・・・昨日まで大勢の人が犇めきあっていた窮屈な街がたった一晩で・・
死体すらない・・・何故三人は生きていた・・・
街人達は逃げたのか・・・いや、逃げてはいないか・・・壁や床の血痕は助かりそうな量じゃない・・・
間違いなく皆死んだんだ・・・
by nanty