痛み 人に注目されるのは嫌いじゃない だって… 「おはよ。沙里。」 朝学校に着くと、必ず声を掛け合う友達、菜香。 だけど、菜香にもお母さんにも、お父さんにいえない秘密が 私にある。 気づかないのは、 菜香が天然だから。 「おはよ。菜香。」 私の中では精一杯のコトバ。 他に何もいえない。 何も、いいたくない。 「ごめん。菜香。今日も1限休む。」 「また〜?まぁ成績いいから大丈夫でしょ! いってらっしゃい♪」 「いつもありがとう。ノート、よろしくね。」 私は堂々と教室から出て行くの。 すると見るの。皆がね。 ブサイクだからかな? それとも、サボるから? どうでもいいや。 だって、他人に注目されるのは、 嫌いじゃないから…。 サボるときはいつも屋上に行く。 誰もいないから。 でも、今日は違ったの。 人が…いた。 「や〜っぱりサボった。」 「…」 びっくりしてしまった。押し殺すことが出来なかった。 そこにいたのは、神崎 鳥輔。 「なんで…鳥輔がいるの?」 「お前がサボるたびに、毎回いろんなところ行ってた。 お前探すために。」 言わないで。 私にそのコトバを向けないで。 「あとは屋上って思って、ココに来た。」 「後、つければいいのに・・・」 「そんなこと出来ないね。」 馬鹿みたい。 どうして? いらないでしょ? 私なんか、要らないでしょう? 違う。 欲しいって言って。 私が欲しいと、そう言って。 「で、私見つけて、何するの?」 「一緒にサボる。」 「は?」 いったいこの人は…。 「何言って」 「あと!」 私の言葉をさえぎり、左手首を握る。 「痛っ」 「このわけを聞いて、治療をしにね。」 彼が手を離すと、私の左手首から血が流れる。 お気に入りのリストバンドが、血で紅く染まってしまった。 「お気に入りなのに!」 「はいはい。ごめん。」 違うの。そんなことを言いたいわけじゃない。 どうして? どうして変わらないの? どうして? それじゃあ、私のやっていることが、無意味になってしまう。 私の心を知らずに、彼は手首の血をぬぐって、治療をしてくれた。 「どうして?」 「変わらないか?」 「うん。」 だって、おかしいよ?あなたは。 「んなもん。沙里は、沙里で、何も変わらないから。」 変わるじゃない。 変わるんでしょ? 変わってくれなきゃ 意味が無い。 「どうしてキるんだ?」 そう。私はリストカットをする。 血を見ると、安心するの。 死にたくても勇気がないの。 ううん。 別に死にたいわけじゃないよ? ただ 欲しいだけ 証が 「私は…人に注目されうるのは嫌いじゃない。 私は…他人(ヒト)に注目されるのは、、、 嫌いじゃないの。 だって… 私はここにいるって… 皆が教えてくれるから。 いつかコノコトは、絶対に皆にバれる。 鳥輔が知ったのだって、うわさでしょ。 バれたらそれで、かまわない。 騒ぐでしょ そしたら私がここにいるってわかるから。 全員騒がなくなったら、もっと深い傷をつけるだけ。 騒ぎ始めたら、それこそ私の思い通りなの。」 ここまで本音をしゃべったのは、初めてだった。 でも私は、 なぜか、ココにいたくなくて、 カバンも何もかも置いて、 外に飛び出した。 そのとき、泣いていたのは、なんでだろう。 最後に聞いたのは、キキーという大きな音。 気づくと私は浮いていて、 気づくと私は血だらけで眠っていた。 近くに行くと、お母さんとお父さんがいて、 そのそばに光が見えた。 その光は暖かくて、幸せだった。 誰かであることは間違いないけど 誰なのか、わからない。 命に別状はないと、医者は言っていた。 だけど 私の手首の傷を見せて、 両親に神経科へ通わせることをすすめている。 馬鹿な人たち… 行ったって ナニモカワラナイ。 ただ、 傷が フカクナルダケ。 そして私は イノチヲテバナス ただ、それだけ。 「そんなことしたって! 沙里は!変わらない!! どうして今まで気づかなかったんですか! どうして! 沙里の苦しみ! あんたらは!」 自然と涙が出た。 たった一つのヒカリが言ってくれた そのコトバに。 気づくと私は天井を見ていた。 天井がぼやけるのは 涙を流したせい。 「沙里!」 私のそばに駆け寄った人達。 消去していく。 お母さん…さっき見えたから、ヒカリじゃない。 お父さん…さっき見えたから、ヒカリじゃない。 鳥輔・・・あなたが・・・私の光。 「鳥輔!」 痛む身体を起き上がらせて、 光である あなたの胸に飛び込む。 ねぇ… ありがとう。 大好き。 一度死にかけた私の心を… 一度死にかけた私の体を… 再び戻してくれて ありがとう。 だから、伝えるよ。 大好きな、大好きな、私の光に。 「鳥輔が、好きよ。 大好き。 そばにいてほしいよぉ。」 泣きながらだったけど、 子供っぽかったけど、 言ったよ。 そしたら鳥輔、放心状態になっちゃった。 「鳥輔?」 「…。そばにいてやるから、 もうキるな。」 「そばに、いてくれるの?」 「好きだからな。 いてあげる。んじゃなくて、 いたい。」 「ありがと…」 でも今何かひっかかった。 「ちゃんと言ってよ。流された。いま。」 「沙里が、好きだ。」 「ほんと?」 「好きだよ。」 「…じゃあ、そばに、いてね?」 もう、やめよう。 生きてるって、、あなたが永遠に、 教えてくれるから。