spirit




ずっと・・・未練があった。
大好きな、人だったから。


10年前、私はある人と別れた。
付き合っていたわけじゃなくて、家が近くて、仲がよかった人と。
有明銀河(ありあけ ぎんが)。それがその人の名前だった。

些細なことで喧嘩をした。今では何で喧嘩をしたのかも覚えていない。
ただ、事実だったのは、
その人と3つも離れていて、寂しかったことと、
劣等感を感じていたこと。

実際私は小さいながら、その人を愛していた。
その人は私を好いてくれていた。妹のように。
それが私には寂しいことだったことしか、今の私には思い出せない。
愛していたからこそ、妹のように好かれるのは、嫌だったのかもしれない。

とりあえず些細なことで喧嘩をして数日話さなかったら
いつの間にかその人はいなくなっていた。
ちょうど喧嘩をした日、母は私に何かを言おうとしていたが、
「流星君のおうちね、」
と切り出されれば、
「どうでもいいし、知りたくもない」
と言っていた。
そのせいで、私は見送りも、出来なかったし、

あやまることすら出来なかった。


時はたち、私は20歳になっている。
あの人は・・・23歳。
このたった3才の年齢差が、私には寂しかった・・・。

ある雨の日、私は傘を忘れるというバカなことをした。
「ごめんね!不知火(しらぬい)。彼氏と約束があるんだ。ごめんね!」
「大丈夫。気にしないで。菊月。」
親友の菊月(きくづき)はそう言って傘をさして走っていった。

私は雨がきらいじゃないから、濡れながら、歩いていた。
途中・・・
「きゃあ!」
ある古い洋館の前で、私は車に水を引っ掛けられる。
そのおかげで(怒)全身びしょびしょでドロだらけになった。
「最悪・・・。」
「あの・・・大丈夫ですか?」

ドキ!

うそ・・・?

私は後ろを振り返る。
恐る恐る。
「・・。銀河・・・さん・・・」

信じられない・・・なんであのひとがココに・・・?

「え」

わけのわからないような顔をされた。
もしかして・・・

「ごめんなさい。人違い・・・みたいです。
 気にしないでください。大丈夫ですから。」

人違いなら、、もうココにいたくない・・・

「待てよ。」
「え」


「どっかで、逢ったこと・・・ないか?」
「・・・。」


「君、これから予定は?」
「え?別に・・・。」
「もしよかったら、寄っていかないか?そのままだと、風邪ひくよ。」

「でも・・・いいんですか?」
「あー。ぜんぜんかまわないよ。」
「じゃあ・・・お願いします。」

そのとき了承したのは、寒気がしたから。
ただ、それだけだった。


お風呂を借りて、暖かいシャワーを浴びると、体が温まった。
お風呂から出ると、服が置いてあった。

「ごめんな。そんなのしかなくて・・・」

洋服ではない。
和服だった。

私はとりあえず浴衣を着る。
もともとはお風呂上りに着る衣なんだから、いいだろうとおもいながら。

「どうもありがとうございます。」
「いいや。気にしないでくれ。」
「気にします。ありがとうございました。」
「・・・。」

しばらく私はうつむいていた。
酷似しすぎている顔を見るのは、つらかった。

「あの・・・」
「?」
「君、名前は?」
「・・・。不知火です。立待(たちまち)不知火。」
「変わった名前だね。しらぬいってどう書くんだ?」
私は持っていたルーズリーフに不知火と書く。
「こう…書きます。」
「そう・・・。」

・・・??

「っ!」
「あ!ごめん!」
びっくりした。
ふと顔を上げるとすぐそこに顔があったから。
キスまで何センチだ・・・?


「不知火さんは、いつからココに?」
「20年前からです。」
「そう・・。さっき言ってた銀河って人は?」
「幼馴染です。10年前にいなくなりました。引っ越して。」
「そっか。今その人何歳?」
「23歳・・です。」

ピカ!ゴロゴロ!
ドカーン

「きゃっ」
「て、停電か・・・?」
はい。正解。停電です。

「びっくりしたなぁ。」
「そう。ですね。でも、私、好きですよ。暗闇。」
「俺も。好きだな・・・。」
「・・・。」

「久しぶりだね。不知火。」
「え」
「10年ぶりだ。きれいになったよ。」

さっきまで・・ぜんぜん知らなかったのに・・・なんで?

「暗闇になって、わかった。」
「え?」
「本当にきれいだ。」
そう言って銀河さんは私を抱きしめる。
嬉しかった。
久しぶりのぬくもりが…
それと同時につらくもあった。
妹の様に…抱きしめられるから。


「嫌!離して!嫌っ」
「不知火!」
銀河さんは私をなだめるように、私に回した手に強く力を込める。

「嫌!離してよ!いや!」
「っ!」


—え—


何も言うことが出来なくなる。
反論も。何も。

ただ私はなすがままに、なっていただけ。
しばらくすると、銀河さんは私から離れる。

そして私は手を持っていく。
自分の唇に。

そして私は涙を流す。

どうしてっ…
どうしてよ!
ただの…妹みたいな、、私に…。
なんでキスなんてするのよ…。

「っ・・・・・・っ」
「ごめん…俺達が離れてから何年もたって…
 お互い別々の環境で…
 彼氏だって…いるだろうに…無理やり…ごめん。」
「そんなことで泣いてるわけじゃない!!」
叫ぶ私に、銀河さんは唖然としていた。
「彼氏なんて…いないよ!!」

彼氏なんて、、いない。
告白もされたこと、ある。1回だけ。
でも、断った。
私の中で恋を出来るのは、永遠に銀河さんだけだと思っていたから。
でも、そんな銀河さんは、私を妹のようにしか、見てくれない。

「い、いないのか?」
「いないわよ!」

「じゃあ、いいんだ。」
「え………んっ」
銀河さんはまた私にキスをする。
甘い口付け。
でも、彼は、、私を…。

そしたら涙が出てきた。
その涙にさえ、彼はキスをする。

どうして?
どうして?
どうして?

銀河さんが唇を離すと私は息があがったまま、彼に叫ぶ。
「どうしてよ!どうして…っどうしてキスなんて…」

どうして?
どうして?
わかんないよ…。

「んなもん、好きだからに、決まっているだろう?」
「違う!」
「え」

違うのよ。
「私の好きと、あなたの好きは違う!」
違うんだよ。
「不知火?お前…。」
「違うんだよ…銀河さん…。」
涙をぼろぼろとこぼしながら、私は彼に言う。
違うの。
私は愛しているけど、
あなたは妹のような私が、、好きなだけ。
違うの。
違うの…。
「不知火。」
「違う!」
「聞けって!不知火!」
「違うんだよっ。」
「不知火!聞かないんならまたキスするよ?不知火。」

もう嫌…
もう、、好きって気持ちを込めて、キスなんてしないで…
私は、愛しているって…女の子として、愛しているってキスが欲しいの…。

私は銀河さんを突き飛ばして、玄関へと続く扉を出ようと走る。
だけど、それを止められる。
もちろん。銀河さんに。

「きゃっ」
そして銀河さんは、暴れる私をベッドの上に運んでいく。
「きゃあっ」
ドサッと落とされ、
銀河さんは私の両手首を掴んだ。
「聞かないし、逃げようとする。お前が悪いんだからな。」
「ちょ」
銀河さんは私に口付ける。
深いキスを…
さっきよりも、深いキスを…。
逃げる私の舌をかれは追って、絡める。

もうただのキスとはいえない…。
大人の…口付け…。

息が苦しい…
キスすら、今日がはじめてなのに…
銀河さん…もうわかんないよ…。

息があがった私を見つめて、唇を触れ合わせるだけのキスをすると、
彼は私の首へと唇を移動させた。
そして、痕をつける。
「っ?」

そして唇を離して、とても至近距離で私を見つめる。
「ココまで、やってるんだ。
 もう、わかるだろう?」
「な…にが?」
「不知火は言ったよな?
 俺の好きと、お前の好きは違うって。
 不知火が誤解していると仮定して、
なおかつ俺の都合の良いように考えると、
不知火の好きは愛しているで、
俺の好きは妹のような目で見て、好きだと言う事になる。」
「現に…その通りじゃない。」
「違う!」

私を見つめる銀河さんの目から、私は目がそらせなかった。

「俺は…俺は10年前から君の事を、、不知火のことを…
 “妹の様に”好きになったことなんてない!」
「え」
銀河さんは私に口付けをひとつ落とす。
「俺は…13年くらい前から…
 ずっと…
 ずっと不知火だけを…愛してきた!」

え…。
「誰よりも不知火の事が好きだったし、
 誰よりも大切にしたかったし、
成人したら、かっさらっていく!
 それくらいの想いがあった!
 今もそれは変わらない!
 俺が愛しているのは、
 …永遠に不知火だけだ。」
「ぅそ…。」
「本当だ!
 10年ぶりにあって、綺麗になった君を見た。
 なんで思い出せなかったか。それは今はいえないけど、、
 だけど、綺麗になった君を…不知火を見て、
 とめることなんて、出来なかった。
 触れたくて、触れたくて、愛しくて…。
 一生嫌われてもいい!
 それでも不知火に触れたかった。」

そう言っている銀河さんは真剣以外の何者でもなかった。
本当だということが、
私にはわかった。
わかったと同時に、流れ始める涙。

「不知火?」
「ご、めんなさ…ぃ。」
「え?」
「ずっと…っずっと…あやまりたくて、、
 なんで喧嘩したのかも、、覚えてないけど、
 でも、でも、あやまりたくて…ごめんなさぃ…
 ごめんなさ…い。ごめん…なさい。
 ごめんなさい…」
「不知火…。」

銀河さんは次から次へと流れ出る私の涙をぬぐってくれた。

そして私は喉の奥から、言葉を搾り出す。
「あいして・・・います。」
「え?」
「愛して・・・います。
 銀河さんを…ずっと・・ずっと前から、、愛してます。」
涙に詰まりながら、ずっといえなかったことばを…
ずっといえなかった言葉を…つむぐ。

「私も、愛するのは、、永遠に…銀河さんだけ…です。
 私も、銀河さんを…愛し・・・っ」

もういいから。
そう言うように、銀河さんは私に口付けを落とす。

—愛しています…銀河さん。—
—俺も、愛しているよ。不知火…—































ko no o ha na si ni ha tu du ki ga a ri ma su.
na ze Ginga ha a i su ru si ra nu i no ko to wo
wa su re te i ta no ka.
si ri ta i ka ta ha sa ki he su su n de ku da sa i.









yo mi ta i ka ta ha,
true wo o si te ku da sa i.

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