32th key


どうして?
あなたにはわからない。
もう二度と、嫌なだけ、
大切な人が離れていくのは。

小学校にあがる前、大切な父と母はすでにいなかった。
小学校6年生の時、大切な友達が私を殺そうとした。
高校1年の時、大切な大切な友達が二人もいなくなった。
そして今、枻杜がどこかに行っちゃう。
私の前から、皆いなくなる。
それはきっと私がココにいるから。
だから、地獄に落ちる義務があるの。

もう、見たくない。
大切な人が離れていくのは、
もう、見たくない。
だから私が消えましょう。

大切な人が離れていく前に。


「もう、いやなのよ!!」
叫ぶ私。
そんな私を見て、
枻杜は私を抱きしめる。


「離して!お願い!枻杜!!」
「ごめん」
「ぇ」
「ごめん。ごめん。ごめん。ごめん。
 ごめん。枸子は、悪くない。
 全部、オレが悪いんだ。
 死ななきゃいけないのは、
 オレなんだ。
 ごめん。っごめん!!ごめん」

枻杜が私を抱きしめている力が強くなる。
心なしか、枻杜が震えているように
感じるんだ。

もしかして、
泣いているの?


「オレ、オレっ
 枸子がいなくなったとき、
 原因作ったのは間違いなく俺で、あいつが言った
 オレは枸子につりあわないって・・・・
 それ、本当だって、思った。
 だから、離れようとした。
 だけど!!
 忘れられなかった。
 枸子を、すべて!
 忘れようとしたのに!忘れられなかった。
 側にいたいって思ったし、
 守れなかったけど、守りたいって思った。」



視界がぼやける。
もしかして
もしかすると
万が一
億が一?

私は、あなたに必要と、

必要とされていますか?
枻杜…



「枸子を、愛しているんだ。
 誰よりも、何よりも
 オレの命よりも
 枸子が大切なんだ・・・っ
オレにはっ枸子が必要なんだ!!」

枻杜は私を離す。

わたし・・・は・・・



泣いてしまった。
格好悪い。
だけど枸子はもう沖には行かない。
それは判っていた。

枸子は泣いていた。
一生懸命、こらえようとして。


そんな枸子を、
ずっと見てきた。
これからは誰よりも近くで
オレが・・・


枸子の頬を両手で静に、触る。

そして
目を閉じて…
触れるだけの口付けをした。


1俊後ぐらいで
今自分が何をしたのか
すぐにわかった。

枸子は、亜然としている。



「ごごごごごごごごごめん。」

オレは謝るしかなかった。

許して、くれるだろうか?
でも、今はそんなコトを考えている暇がない。
枸子を抱き上げて、
海からあがる。

枸子は、
落ちないように、俺にギュッとしがみつく。

それが、嬉しかった。


ホテルに帰ると案の定兄貴達は心配していて、
そんな二人を見た枸子は、

また泣きながら、ごめんなさい。
そう言っていた。



そして俺達は、元の街に、戻ってきた。
途中、聞きにくそうに、伊織さんどうしたの?
と聞く枸子に、
ちゃんと断ってきた。そう告げる。

そして・・・



next→5th door 33th key