30th key
—え?
意味が理解出来ない。どういうことなんだ?
オレが側にいたから?そんなこと、、—
「枸子は! 私から見て判るほど!元気になったよ!
昔に比べて!感情を結構表に出すようにもなったし!
二人が死んだ後とは比べ物にならないほど!
明るく笑うようになった!
寂しいとき、昔のあの子!我慢してた!
我慢してほしくなくても、あの子は我慢してた!
二人に聞いたよ。依子がはねられた花火大会の時に!
偶然会って!
あの子が、背負ってきたもの!
枻杜くんが知ってる3つだけじゃない!」
—3つだけじゃない?
まだなにかあったのか?
まさか—
「枸子が小学校に入学する前!両親はすでにいなかった!
でも枸子は、頑張って家事をしてた!
小学1年生が、家事をしてたの!
毎日明るく過ごしてたけど!小学校の時に受けたイジメ、
ハンパじゃなかったって聞いた!
先生からも、同級生からも!
ずっとずっと、無視されて!空気で!
それに耐えられなくなったから!!
彼女は転校してこっちに来たのよ!」
—転校?
そんなこと、聞いたことない—
「両親がすでにいなかったのが小学1年。
小学3年までは耐えたけど、
ナイフで腕を傷つけられて!
それで我慢できなくて、こっちに引っ越してきたの!
はじめて依子と裕くんに逢ったとき、
“普通に”接してくれて、“挨拶して”くれて、あの子泣いたって言ってた!
一人にしておいちゃいけないって!
小学校4年生の二人にも判るほど!
枸子はボロボロだった!
中学校入って2年目で、枻杜君とあったけど!
小学校最後の年、彼女、何されたと思う?!
枸子はもともとかわいいから、人気もあった。
だからこそ、転校生ってのもあって、影でねたまれてた!
だから、
だから同学年の、枸子が今まで親友だと思ってきた女の子3人に!
車道に突き飛ばされたのよ!」
—親友に車道に、突き飛ばされた?—
「1時意識不明の重体だったけど!彼女は早く治して!
そしてかえって来た。
それからは二人が、身をていして彼女を守っていた。
だから中学校では、イジメもなかった!
だけど、あの子、心の中ではいつもおびえてた。
だけどね!
だけど!二人が行ってたの!
もう大丈夫だって!
枻杜君がいるから、もう大丈夫だって!!
そう言ったのに!そう言ったのにぃ!!
私だって、枸子の役に立ちたいけど!
私じゃ無理なのよ!
枻杜君じゃなきゃ、無理なの!!
なのに!
なのにどうして!?
どうしてよぉ!!」
そう言うと美奈先輩は、オレの胸をポカポカ叩く。
心が、痛かった。
知らないところで、
枸子は、
どれだけの思いで、生きてきたのだろう。
ダメだ。
忘れるんだ。
俺じゃ、つりあわない。
だけど、離れないんだ。
枸子の、笑った顔、怒った顔、泣いた顔、
オレの名前を呼ぶ声。
オレに抱きついたときの感触、
花火を一緒に見た思い出。
二人が死んでしまって、傷ついた事。
枸子が、どうしようもなく、好きなこと。
「か〜いと」
「枻杜っ!」
「か〜い〜と〜」
「枻杜ぉ〜。」
「枻杜!ねぇってば!」
「枻杜…」
「かいと?」
「ぁ。枻杜。」
「枻杜?」
「ね、枻杜」
「かいと?」
「?枻杜」
「枻杜…」
「枻杜と?」
「か、枻杜?」
「ね…枻杜」
「か…いと」
「枻杜?!」
「枻杜!」
枸子…オレは…
側にいたい。—そんな資格、俺にはないけど—
守りたい。—守れなかったけど—
愛したい。—オレはつりあわないけど—
愛されたい—俺を愛してくれるはずが無いけど—
枸子…
やっぱりオレは、
キミを、愛している。
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