29th key



「枻くんっ!」
「どうした?伊織。」
「今日も、つれていきたい所があるの!行くよ〜ん。」

そして枻杜は今日もまた出かけて行った。

私がさらわれてから、枻杜がおかしい。
何が?
私に対する態度が。

伊織さんに連れて行かれる時も、そんなに嫌そうじゃない。
前は、違かった。


やっぱり
そうなんだね。

私は
やっぱり、、


そんな時、私は決定的な一言を耳にする。

「おい枻杜!てめぇどういうつもりなんだよ!」
「何がだよ。」
櫂樹先輩が、枻杜を攻めている。
きっと、私がらみ。

「水島さんがいるのに!どうしてお前は、あいつとばっかりいるんだ?
 お前のせいで、あの子はひとつもまともな観光場所に行かなくて!
 ずっと部屋に引きこもりっぱなしだ!
 これじゃあ旅行に来る前の彼女の方が、ぜんぜん元気だった!
 お前、彼女を悲しくさせてる自覚!あるのか?」

櫂樹先輩…
私の事考えてくれてて、ありがとうございます。

「それは、兄貴の思い込みだ。
 どこにいたって、枸子は、オレの行動で
 感情を変える事はない。」
「なんだと!」

そんなこと、あるのかもしれないけど、
ないよ。
枻杜?!

「オレ・・・・・・伊織と付き合うかも。」
「は?!何寝ぼけた事言ってんだよ!」



やっぱり、そうなんだね。
私のせいで、みんなおかしくなっちゃう。
すべては、私のせい。
私が、ココにいるから。
だからっ!!




「っ」
私は涙をながしながら、部屋に逃げ帰る。
「枸子?」
私は美奈に顔をみられないようにしながら、ベッドの中にもぐりこむ。

「ご・・・めん。美奈。
 悪いんだけど、今日、先輩のところで寝て?
 ごめん。本当にごめん。
 お願い、一人にして。」


美奈は愕然とした。
こんな枸子は、見た事がない。
いや、声を聞いた事がある。

夏祭りの次の日、学校に来なくて、電話した時。
依子が、死んだとき。
裕くんが、死んだとき。

枸子・・・っ!

「わかった。ゆっくり、休んでね。」

私はそう言うと、櫂樹さんと、枻杜くんを探した。
二人が一緒にいることは、知っていた。


—いた—

「枻杜君!」
「え・先輩?」
「美奈?どうし・・・た。」
櫂樹さんの問いかけに答えず、枻杜君に歩み寄る。
用があるのは、この人。

「さっき、櫂樹さんと話してるとき!何か言ったでしょ!
 伊織さんとのコト、 
ねぇ!」

「伊織と、付き合うかもとは、言いました。」
近くにいすぎてその人が見えない。
枻杜君にはソレがよく当てはまっている。

「っ馬鹿!」

バシ!
私は思わず、枻杜くんの頬をひっぱたいた。
周りに人がいなかったのが唯一の救い。
枻杜君も櫂樹さんも亜然としている。
でも、そんなことにかまっている余裕はない。

どうしてよ!!

「どうしてよ!どうしてそう勝手に思いこんで!
 勝手に決めるの!?
 枸子が、枸子が!
 依子や、裕くんの死から立ち直れたのも!
 両親が離婚した時に耐えられたのも!
 みんな…みんな枻杜君が側にいたからなのに!!」



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