20th key
こんなこと、もう二度としないと誓ったのは今日。
枸子との約束に遅刻した。
原因は簡単。ただ単にしつこい人から告白されただけ。
普段だったら、いや。あんな事がある前だったら、そいつに対して
これほどまでにイライラすることもないのだろう。
ただ、あの事があってからは、枸子との約束に遅刻する。
もしくは約束を破ったりしたら、枸子の心を壊しかねない。
俺もまた、先輩達のように事故にあったのでは、と、きっと思うから。
俺が屋上に駆け込んだとき、兄貴や美奈先輩がいた。
兄貴が指差した先には眠ってしまっていた枸子。
そのあと美奈先輩は、枸子をお願いと言って兄貴と共に屋上を去った。
俺は枸子が起きるまで、ずっとココにいる事に決めた。
ふと目を開ける。
「ん」
—眠って…た?—
「枸子?」
心地よい声…誰?
「!枻杜。おはよ。」
その心地よい声が枻杜の声だったからほっとしたのかもしれない。
枸子は眠い目のままで枻杜に笑いかけた。
側にいてくれて、ありがとう。
気持ちを込めて、笑いかけた。
そのとき枸子は思っていた。
もしかしたら枻杜は、
この先何年たっても、何があっても、
側にいてくれるかもしれない…と。
人が一般的に幸せだと感じる想いにひたっていた枸子とは対象的に
枻杜の顔は真っ赤以外の何ものでもなかった。
枸子が眠いせいで気づいていない事が枻杜の唯一の救い…。
人は一般的に枸子の事をかわいいという。
その枸子が今までで一番やわらかく。そしてきれいに笑いかけたさっきの笑みは
枻杜にとって致命的だった。
我が人生に悔いなしと心中で言っていた事は枻杜しかしらない。
それほどまでに、やわらかく、美しく、きれいで…。
この笑顔を守ってきたのが、自分でない事を悔やんだ。
だが、
思いなおす。
これから、守って行けばい良いのだ。
誰の手からも、俺が
俺が…。
誰でもない俺が、
枸子の事を、
守っていこう。
ずっと…
ずっと。
やっと枸子がパッチリめを覚ましたとき、
枸子は枻杜の隣にきれいに座りなおして、
再度枻杜に
「ありがと。」
と、お礼を言う。
さっきも言ったけど、いろ〜んなものがつまったコトバを
心を込めて言った。
「べっ別に。」
「?照れてたりする?」
顔の赤みはなんとかおさまったけれど、
照れるのはしょうがないんだ。
「で、どうしたの?」
「あのさ、枸子、授業が始まるとか始まらないとか考えないのか?」
「あ゛。・・・。って過ぎてるじゃん!とっくに。」
真っ白になる。
「どっどうして起こしてくれないのよ〜。」
「兄貴達がちゃんと言ってくれてる。ごまかしてっていったほうが良いかもな。」
脱力したのは枸子。
「か〜い〜と〜??」
「ん?」
枸子の方を見ると、枸子が怒っている。
それがとても、かわいくて、きれいでもあって、
さっきの分も、衝動が来た。
「え」
一瞬後、枸子は枻杜の腕の中。
「か、いと?」
あ、あれ?
ちょっと前までは緊張とか、しなかったのに、、
緊張。してる。。。
枸子にはコレが何を意味するのか、
わかっていた。
だけど、まだ勇気がない。
枻杜なら必ず…だけど、まだ、だめ。
「ごめん。ちょっとだけでいいから、このままでいさせてくれ。」
何かあった?
そんなこともないか。
別にいいよ?
嫌じゃない。
「しょうがないな。」
「サンキュ。」
しばらくしてから枻杜は枸子を離して、
ずっとゴメンと言っていた。
埒があかないから止めることにする。
「で、」
「え!」
「で、話したいコトはなんだったの?」
「あ。忘れてた。」
「…で?」
「あ、あのな、兄貴、たちが、旅行に、行くんだって。」
「一緒に行っても良いから、はぎれよく話して?」
「え」
聞き間違いじゃないだろうか?
一緒に行っても良いって聞こえた気がする。
「一緒に行っても良いよ?嘘だ〜って顔してるけど。」
恥ずかしくなって手で顔を押さえる。
ところどころはみ出してるけど。
「だから、良いっていったでしょ?別に良いよ?だから、はぎれ良く!ね。」
「、、、わかった。
今度、兄貴達が旅行に行くんだって。」
「兄貴達ってコトは、櫂樹先輩と美奈ね?」
「あー。それに、兄貴の友達が4人。で、この4人は、2−2で付き合ってる。」
「ようするに恋人×2か。で?」
「本当は兄貴の友達が6人のはずだったんだけど
このうち2人が、最近付き合い始めたバカップルで、見てるだけで熱くなるし、
本人達も、2人で旅行が良いって言ったんだ。」
「それで?」
「2枚余っただろう?で、美奈先輩が一人だけ学年違うの多分嫌だろうから、
枸子とオレに譲ってくれるんだって。」
「てことは〜〜、8人で旅行に行くって事ね?」
「あー。」
「で?」
何か言いたい事がありそうだったから、突っ込んでみる。
「…い、」
「い?」
「一緒に、行きたい。から、一緒に、行こう?」
すごくびっくり。
そんなコトバを言うだけなのに、緊張していた事に。
「く、枸子?」
「あ。ごめん。いいよ?一緒に、行こうか。」
「まじで?やった!」
もう一生内緒。
誰にも言わない。
一緒に行こうか。って言った時、私も緊張してたこと。
私を笑顔にさせるのはあなた。
私を悲しませるのも、
私を幸せな気持ちにするのも、
私が泣くのも、
きっとすべてあなたに依存する。
近い将来に。
だけど、、まだ怖い。
怖いから、待っていて。
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