19th key



そしてその誘いは、突然やってきた。
「枸子!」
「ふぇ?枻杜?どしたの?」
突然来るのはいつものこと、、というか、枻杜は毎日枸子の下に来ている。
だが、今日は突拍子も無く突然だった。
朝のHRが終ってから次の授業までは10分あるか無いか。
今日は枻杜が移動教室のはずだから、私の教室まで来ることはない。
だが、来た。
「ん。なんかな、兄貴達が、旅行行くんだって。
んで、兄貴達だけじゃなくて、他の人も何人かで、行くんだって。」
「枻杜。」
「え?」
「わかったよ。今日のお昼は一人で屋上に行く。
 その時に話そう?もたもたしてると、授業始まるよ。ほら。」
枸子は腕時計を枻杜に見せる。
枻杜はわけがわからない。とでも言うように覗き込み…
「ゲ!!わ、わかった!また、あとで!!」

ちなみに次の授業開始まで…あと〜…1分ってとこかな。

「絶対・・・だからなっ!」
そう言うと枻杜は急いで授業へ向かった。

—旅行…かぁ…。—

そして時はたち昼休み。
枸子は忘れずに枻杜との約束の場所。屋上まで行った。
数十秒後、とてもあわただしい音が聞こえる。

—枻杜ったら…—
そう思って笑っていると扉が開いた。
見ると…
「枻杜…じゃない?」
違う人が、屋上に来た。
見た事のある二人組。
櫂樹先輩と美奈だった。
二人はしばらくじゃれあっていたが、ふと枸子に気づく。
「あれ?どうしたの?枸子。」
「ん?例のごとく、枻杜待ってるの。でもこの時間に来ないって事は
 今日は来ないのね。」
来ないと、思う。
私には、わかるんだ。

「めっずらし〜。枻杜が忘れるなんて。」
「もしかしたらさっきのかも。枻杜が教室出ようとしたら、
すっげぇ綺麗な女の子に呼びとめられてたから。」
「こう考えると、枻杜って、凄い人…なんだよね。」
枸子はそう言ったあと眠気を感じたため、横になる。
意識は奥深くへと落ちて行った。

バン!と屋上が勢いよくあいたのは、それから30分後。
もうすでに誰もいないはずの屋上に3人の人影。
「あ!枻杜くん!おっそ〜い。」
「おせぇよおまえ!」
「兄貴?美奈先輩。」
「ほれ。」

櫂樹が指差した先には眠っている枸子の姿。
「寝かして置いてあげなね。
 二人のクラスには言っておくから。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「あと枻杜くん」
「はい?」
「枸子を…お願い。」
「?はい。」

こうして二人は屋上を出る。
「なぁ美奈、どうしてあんなこと・・・」
「もう…枸子を支えられるの、枻杜くんしか、いないから。
私は役不足…なんです。もう。」
「そんなことないっ」
「なくないんです。枸子は…もう私を必要とはしてませ・きゃっ?!」
話している最中に途切れる美奈の声。
なぜか?
櫂樹が美奈を抱きしめたから。
「そんなこと…言わないでくれ。頼むから。」
「せんぱ・・・。でも…」
「美奈。」
ドキッ
力強く言われたその言葉は、美奈の心に響く。

—先輩は私を必要としているって、、思っても良いですか?—

「わかりました。」
「よし。」
「きゃ」
一度強くぎゅっと手に力をこめてから、櫂樹は手を離す。
「先輩?」
「ほら。授業遅れるぞ?あいつらの事も、言うんだろう?」
「枻杜君のクラスにはマネの友達がいるからメールだけど、
枸子のクラスはいないから…ってやばっ先輩も早く!」
「俺は次自習〜。」
「ずっる〜い。あ!私行きますね!じゃあ!」
そう言うと美奈は走って行った。

「少なくとも、俺には君が…美奈が必要だよ。」
櫂樹はそうつぶやいて、クラスへと向かった。







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