18th key 枸子:高2 夏
忘れない。
私は、忘れない。
この痛みも、この悲しみも…忘れない。
依子。裕。私が覚えてるよ。ずっと覚えてる。
誰が忘れても、誰もが忘れても、私が覚えてる。
だから、また、笑って。
「で、疑問どうぞ!」
「…どうして?」
「え?」
「どうして枻杜は、私の思ってること、わかってくれるの?依子たちでも、わからなかったよ?」
「ん〜。非現実的な答えしか、返せないぜ?俺。」
それでもいい。わからないよりまし。
そして、やっぱり、枻杜は私の考えてること、わかって、答えてくれたね。
「好きだから。」
「・・・は?」
「愛してるから、わかるんだよ。
他の人より枸子を見てるし、
枸子のことをわかろうとしてる。俺は。
だからだと思う。」
そして、枻杜はすごく素敵な笑顔をした。
「か…いと。」
「え?」
「っ。なんでもない。」
「そうか?ならいいや。じゃ、戻ろうぜ!花火見る前に、飲み物とか買わなきゃだもんな。」
「・・・うんっ」
今日、私はわかっちゃったの。
あと少しだってこと。
あと少したったら、わかるの。
自分の気持ちが、よくわかるようになるわ。
あと少しだけ・・・だと思う。
だから、お願い。枻杜。
花火を見ながら、私は枻杜につぶやいた。
いつもなら花火以外のことに神経を使うなんて、考えられないことだけど。
「待ってて。あと少しだけ。」
すばらしくびっくりした。
まず第一に、枸子に見とれていたから。
(いくら成長したからって、やっぱり枸子の隣は緊張する!すっげぇかわいいし、)
次に、花火のときに、俺に神経を使ったこと。
花火を見ていたけど、俺に神経を使ってくれた。
だから少しどもってしまった。
「?な、何を?」
「なんでもいいから。」
「?ああ。」
よくわからないが、まぁいいや。
「そして」
「?」
「—そばに、いて?—」
枸子はやっぱり花火を見ていたけど、
枸子がこういう風に、俺を求めてくれるのは、すごく珍しくて、うれしいことだった。
俺は、隣にいる枸子の手をにぎりしめて、返事をした
「もちろん。いるぜ?嫌だって言っても、きっとずっと。」
って。
そしたら枸子はたった一筋の涙を流して、
「ありがとう」
って言ってくれた。
やっぱり花火を見たままだったけど。
それからは二人で花火に熱中し、他の人と一緒に花火に歓声をあげていた。
今年の夏祭りは、前のように良い夏祭りだった。
楽しい想い出を、ありがとう。枻杜。
これからも、作って、、生きたい。な。
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