15th key 枸子:高2 夏


依子先輩、裕先輩が死んだあと、気持ちを押し殺し一生懸命勉強した。
そして、枸子のいる高校へ入った。
入ってから何人かの人に告白された。
だが、断った。
遺言が、頭の中にあるだけじゃなく、彼女は、絶対に誰にも渡したくないから。
俺は永遠に枸子を愛する。
—枸子は、俺が守るんだ—


あの後、枻杜は予告どおり、私のいる学校へきた。
枻杜がまだ中学だった間は、とても寂しかった。
二人が死んでから、枻杜にはずっと迷惑をかけた。
枻杜だけじゃなく、たくさんの人にも、たくさん迷惑をかけてしまった。
自分の心が弱すぎるから。

枻杜がずっとそばにいてくれた。
だから今心の奥のほうにあるものは、必然的な結果かもしれない。
枻杜に会うと本当にほっとしたし、生きているって実感もした。
狂いそうなとき、枻杜がそばにいてくれた。
でもまだ、認められない。
はっきりしてからじゃないと、傷つけてしまうから。
たくさんたくさんいろいろなものを枻杜にはもらった。
自分自身のはっきりしない気持ちのせいで、枻杜を傷つけてしまうなんてことがあってはならない。
それは心に決めていた。




と、いうわけで、土曜日に枻杜と夏祭りの会場で待ち合わせることにした。(cf First door-1st key)

多くの人が行きかう中、浴衣を着てぼ〜っとしていた。枻杜はまだ来なかった。
—いつまでも、一人にしておかないでよ。枻杜。—

「か〜のじょっ!」
誰かに呼ばれ、肩をぽんと叩かれた。
振り返ると知らない人達がいた。
「一緒に回ろ!」
「ごめんなさい。待ち合わせしてるから。」
枻杜と回る約束がある。この約束は枻杜だからこそ受け入れたのだ。
ほかの人と回る気なんてまったくない。
「彼氏〜?」
「彼氏じゃないです。」
「じゃ!いいじゃん!」
「ちょ」
一人に手をつかまれ引っ張られる。
「ちょっと!離して!」
「いいじゃん〜。」
「やだっ!」

—枻杜!—
「枸子!」
振り向くとそこには美奈がいた。隣には櫂樹先輩もいた。
「美奈!」
美奈は面白そうに自分の後ろを指差した。
よく目を凝らして見ると、25mくらい向こうに枻杜がいて、ものすごい勢いでこっちに向かってきた。
「枸子!」
「わっ」
枻杜はおもいっきり引っ張ってくれた。(ちょっと痛かったけど。)そのおかげで知らない人からのがれることができた。
枻杜は、というと
「てめぇらなぁ!」
という感じで完璧にキレていた。
「な、なんだよ。」
「枸子は俺のだ!手ぇ出すんじゃねぇ!」
枻杜がそう吠えると、知らない人達は去っていってくれた。
「私って枻杜のだったんだ。」
「当たり前だろーが!」
「ふ〜ん。」
「。あ、枸子!大丈夫か?」
「ぇ?うん。」

突然枻杜は元に戻り、身を案じてくれた。
「枸子、手首!」
美奈に言われ手首を見ると赤くなっていた。
「お、俺の枸子の手が・・・あの野郎!」
—俺の?—
「いいじゃねぇか、これでお前水島さんと手つなげるぜ?」
「え?」
櫂樹以外は意味がわからず、櫂樹を見つめた。
すると櫂樹は、少しだけ苦笑して説明してくれた。
「手首赤いのをほかの人に見せてもいいなら別に隠す必要はないけど、多分あんまり見られたくないだろ?」
「そりゃまぁ。いやですね。」
納得してうなづく。
「で、枻杜が握ればいいってこと。よかったなぁ。」
「多少うれしいけど、やっぱむかつく。ごめん!枸子!」
「ぇ」
急に謝られてかなり驚いた。
「だって俺が遅れたからだろ?ごめん。」
「いいよ。大丈夫、結構早く来てくれて、うれしかったよ☆」
そう思ったのは事実だし、枻杜に悪気はない。そのことをわかってほしくて私は笑顔でそういった。
「・・・お、おぉ。」
「枻杜君ったら照れちゃって。」
そんな枻杜の様子を見て美奈は笑いながら言った。
「先輩!」
「あはは。じゃあ、先輩、行きましょっか?」
「そだな。じゃあな。枻杜。」
「さっさと行け!」
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