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12th key 枸子:高1 夏



「わっ。」
枸子は人並に、もまれ、転びそうになった。
「枸子っ!平気か?」
枻杜はすぐ手を差し伸べてくれた。枸子はそれをつかんで答える。
「ありがと。平気。でもさ、枻杜って背高くなったから、便利ね。
あ。便利って言っちゃ失礼よね。ごめんなさい。」
「ん?大丈夫。で、何?」

「あ。そうそう。だから、

 手をつないだままでもいい?」

「えっ」
枻杜の顔はみるみる赤くなった。
「いや?なら…しょうがないね。」
「え。いやじゃないっ!」
枻杜はものすごい剣幕でそういった。
「そ…そう?ならいいや。」

二人は手をつないだまま、屋台を回っていた。

「よぉ枻杜」
「よっ!」
枻杜に話しかけてきたのは、中学の同級生らしい。
「おまえ幸せそうだなぁ。そっちの綺麗な人が例の先輩か?」
「そうだけど、やらないぞ。」
「わかってる。わかってる。じゃ〜な。」
「ああ。」
中学の同級生は、すぐにどこかに行ってしまった。
「ねぇ、枻杜。私のことどういうふうに説明しているの?」
「彼女」
「なっ!」
「とは言えないから、とりあえず片思い中の脈あり。って。」
「そう…ぁ。枻杜。何か買って、花火の場所取りしようよ。」
「そう?だな。じゃあ、なんかおごってやる。
 って言っても、兄貴からもらったんだけどな。金。」
「先輩くれたんだ。」
「くれた。でも枸子におごってやるために使うこと。って。」
「へぇ…。」
二人は食べ物と飲み物を買って、花火の場所取りをした。
「そういえば、どう?うちの高校。」
「んぁ?いけそうか?ってこと?
 単願だし、成績も結構いいし、スポーツ推薦でもいけるし。
 ちゃんとやれば余裕。」
「そっか。」
「そう。また枸子に毎日会いに行くからな。」
「会いにきてくれるんだ。枻杜も熱心だね。」
枸子は笑った。
その時に、まだつないでいた手を枻杜はぎゅっと握り締めた。
枸子は気になったが、何も言わないでいることにした。

最初の一時間がすぎた。
「今年は静かに見れているからうれしいぜ。」
「去年は静かじゃなかったの?」
「ああ。」
「なにかあったんだぁ。花火失敗したとき?」
「ぇ」
「?どうしたの?」
枻杜の目は大きく見開いていたから、どうしたのかと思った。
「なんで…覚えてる?」
「離婚した年だったし…。」
枻杜は枸子の顔が少し寂しくなったのを見逃さなかったらしい。だからすぐに誤ってきた。
枻杜のせいではないのに…。
「あ。ごめん」
「ううん。でも誤らないでよ。枻杜には感謝しているんだよ。だからかなぁ?あんなに楽しかったお祭り、初めてだったもの」
枸子は満面の笑みを浮かべた。
「…」
枻杜は真剣な目つきをして枸子を見ていた。
もしかしたら、今なら告白できるかも、と思ったのだ。
「どうしたの?枻杜、私何か」

キキーーードォン




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