8th key 枸子:中3 夏
二人は、教室以外でも、会うことがあった。
そのとき枻杜は、必ず女の子と一緒だった。
向こうのほうから、誰かが二人で歩いている。
「ぁっ枸子っ。」
「ん?枻杜じゃない」
「…」
「ぁ。ごめんな。白井さん。」
そういって枻杜は枸子のほうへ行った。
「もてもてじゃ〜ん。」
「なに言っているんだよ。俺が好きなのは、枸子だけだぜ〜。」
「はいはい。」
「枸子〜。」
「あはははっ」
「ね〜枻杜くんっ」
「んあ?なんだ。羽鳥さんじゃん。何?」
「明日、暇?」
「え?明日?いいや。用事あるよ。」
「部活ないんじゃないっけ?」
「部活じゃねぇもん。」
「?」
「枸子と買い物。
枸子に、買い物に付き合ってくれっていったらさ、
つい最近、やっとOKしてくれて、それが、明日なんだぁ。」
枸子のサイドから言えば、
それは両親が離婚した時に助けてくれた枻杜への恩返しみたいなものだった。
「…私は、、、枻杜君が好きよ」
「え」
「なのにどうして?水島先輩のこと、本気じゃないよね?」
「羽鳥には悪いけど、俺、枸子のこと、本気で大好きなんだ。
誰よりも。いつまでまっても、付き合ってもらえないかもしれない。
だけど、オレは、一緒にいたい。側にいたいんだ。じゃーな」
「…」
枸子は委員会に行くため、てくてくと歩いていた。隣のクラスの留縞(たねしま)くんと共に。
「!枸子〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「ふえ?かっ枻杜?」
枻杜はものすごく早いスピードでこっちに向かってきた。
そして、枸子と留縞くんの間に、入った。
「だれ?この人!」
「…。同じ委員の留縞くんよ。」
「よぉ!おまえがうわさの枻杜かぁ。」
「枸子はオレのだ!手ぇ出すな!」
「枻杜!まったくもぉ。私は私のもの。わかった?」
「大丈夫、最終的に枸子は俺のになるんだから。」
ため息が出たもの1名。(枸子)
にこやかに微笑んでいるもの1名。(枻杜)
爆笑しているもの1名。(留縞くん)
というような状況だった。
「大丈夫。大丈夫。確かに水島はかわいい。でもな、おまえいるし〜。」
「まだ付き合ってないのに。」
「まだ?いいこと言うなぁ。枸子」
『しまった……。』
「は?うそだろ?」
そういって、留縞くんは、枻杜を見た。
「本当ですよ。」
「全員思っているぜ。おまえら付き合っているって。」
「付き合ってないもの。」
「枸子。“まだ”がない。」
枻杜にそう突っ込まれるが、まだなんて、もうつける気はなかった。
「いらないもの。」
「どうして?」
「も〜、そんなことどうでもいいじゃない。」
「そうですよ!結果的に最終的に、いつか枸子は、オレの嫁さんになるんだから」
「枻杜!」
「ふ〜ん。じゃあ、オレも水島さんの彼氏になれるんだ。」
「駄目ですよ!」
「え〜。でもなぁ〜。」
「私、先に行くから。じゃね。」
「あ〜。ちょっと!」
次の日から、枸子には大勢の人が告白しに来た。そのつど、枻杜が
「枸子は俺のだ。手ぇだすんじゃねぇ!」
と言っていたことは、省いてもわかるだろう。
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