6th key 枸子:中3 夏


「楽しかったぁ☆」

枸子は満面の笑顔だった。本気で枸子に惚れている枻杜がドキッとしないわけはない。
ドキィ

「オレも!!!!!」
「あはははっ。」
枻杜のうれしそうな顔を見た枸子はうれしくなり、笑った。

「な、なんだよぉ!」
「なんでもない☆」

そして枸子は2回めの満面の笑みを浮かべた、枻杜はもうノックアウト(古)されそうだった。

ドキィ

「枻杜!今日はありがと!!」
「あ…………ああ。」
枻杜は照れていた。だが、枸子にそれが分かるはずはない。
「??じゃあ、またね」
「ぇ。送ってく!」

枸子の家はすぐ近くにあった。だから送ってくれなくて良いのだ。

「え〜?いいよ〜。」
「でも!」
枻杜は真剣な顔になったが、近いのだ。本当に送る必要はなかった。
「大丈夫。大丈夫。」

「じゃあ、ほんの少しでもいいから…送らせてくれ!」

なぜこんなに枻杜はこだわるのだろう?枸子は不思議そうな顔をした。
「?」
「兄貴と…約束してきたんだ。兄貴は木下先輩を。オレは、枸子を送っていこうって。」
「でも…。」
「頼む!俺、約束守りたいんだ。」

この分じゃ、断ったとしても、ついてくるだろう。
それにここまで言われたら、枸子は断れなかった。

「………………わかった。ほんとうに、すぐそこまで。だからね」
「わかったっ!」

「あははははっ。枻杜って、面白いよね」
枻杜は無邪気で子供っぽいところもあるが、大人っぽいところもある。
だから枸子は面白いと思った。
「ふぇ・」
その答え方はなんとも気が抜けていて、枸子は笑ってしまった。
「あはははっ」
「枸子っ!」
枻杜はほんの少し怒って、枸子に対してぶつ真似をした。
「ゎぁっ。あははっ」
…
「ここまでで、平気。」
「えー。」
枻杜はとても残念そうな顔をしていた。
「私の家は、あそこ。ね。大丈夫。」
「でもー。」

名残惜しいかのように枻杜は異論を唱えようとした。
「大丈夫っ。ありがと!じゃねっ枻杜!!」
「…おぅ。」

枻杜は枸子の言葉に反射的にうなづいてしまった。
しまったと思いながら、すぐ近くに見えるし、もう大丈夫だろうと思った。

そして枸子は、家に走って行った。
ガチャ
「楽しかったなぁ。今日。」
枸子がふと見ると電話の留守電のマークが点滅している。
「あれ?留守電。」
ピッ
《伝言が二件あります。再生します。》
「はいはい。」

《もしもし…》
「!!!!!!!!!」


『うそでしょ…。うそでしょ…。どうして………うそでしょ…。』





「いや…いやぁっ!」
枸子の頭は真っ白になった。


next day

枻杜は、いつものように枸子のクラスにやってきた。
そして、依子を見つけた。依子も気づいたようだ。
だが、様子がおかしいような気がするのは気のせいだろうか。

「あら、枻杜くんじゃない。櫂樹先輩も〜。どうしたんです?櫂樹先輩。高校は?」

「今日はたまたま開校記念日でさ。この中学は始業式だろう?今日。
にしてもうちの高校もおかしいぜ。なんで9月1日が開校記念日なんだ?
夏休みが一日増えた感じで、うれしくもなんともねぇ。」
「そんなことはいいんだよ兄貴。オレにとっては関係ない。
それより枸子いますか?ほらっ兄貴も用件あるんだろ?」
「まぁな…。あ。美奈、いる?」

「美奈は、います。美奈〜〜」
「なに〜?」
「櫂樹先輩っ」
「えっ。あ。櫂樹先輩っ!」

美奈は櫂樹たちを見て、駆け寄ってきた。

「先輩、こんにちは。枸子は…?」

「やっほ。」
「櫂樹先輩っどうしたんですか〜?高校は?」
枻杜は、二人のloveloveの中で自分を無視して話を続ける二人を見てあきれていた。

「開校記念日。
で、枻杜の授業風景でもって思ったから見て、
枻杜がクラス行くって言うから、着いてきた。」

「ぁ。枻杜君。」
やっと自分に気づいてくれた美奈はとんでもないことを言った。

「今日ね、枸子来てないの。先生にも何も電話ないって。裕くんも依子も心配してる。」
枻杜は嫌な予感がした。何かある。枸子に、何かあったのだ。そう思った。

「携帯の番号知ってる?」
「いいえ。かけて、、もらえませんか?」
「?ええ。」



《ぁ。枸子?今ドコ?》
《家…だけど…なに?》

美奈が携帯で話しているのを見て、枻杜は我慢できなくなった。

《枻杜君が…ちょっ!》
《枸子!》
《枻杜…。》

枻杜は驚いた。いつもの枸子の声のトーン、気力etcすべてが落ち込んでいる。

《…ぁぁ。どうしたんだ?》
《別に…何も。》

枸子を一人にしておくわけにはいかない。何かしてやりたい。枻杜はそう思った。

《行く。》
《ぇ。》
《行くっ。駄目って言っても、行くからなっ。》
《ちょっ授業は?》

少し驚いた枸子だったがやはり声のトーンが低い。

《早退するっ!待ってろよっ!》
《ちょ。枻》

ブチ




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