3rd key 枸子:中2 春


枻杜に初めて会ったのは、枸子が中学二年の春のことだった
枸子たち3人は、中2で新しいクラスで友達ができた。
友達の名前は木下美奈(きのした・みな)。
サッカー部のマネージャーだ。

ある休みの日、枸子たちは美奈に応援に来ないか。という誘いを受けて、サッカーの試合を見に行った。
そのとき、(美奈が高2になった今でも片思いしている)木下櫂樹(きのもと・かいき)と共に、一年でも試合に出る人がいる。
というふうに、美奈に聞いて、びっくりした記憶が残っている。
試合は確か…1−0で勝ったはずだ。

「おいっ美奈〜。」
「あ。櫂樹先輩っ。お疲れ様ですっ」

二人は、なれたように会話を交わし、美奈は櫂樹にタオルを渡した。
三人が櫂樹に始めてあったのは、美奈と友達になってすぐのころだったと思う。
美奈は櫂樹に私たちを紹介してくれた。

そのとき櫂樹は誰かに単語帳を借りようとしていた。
そこで、美奈が単語帳を貸した。

「おぅ。サンキュ〜。お〜。えっと、水島さん、木里さん(依子)、金(こん)(裕)だったっけ?」

枸子たちは少しびっくりした。櫂樹は記憶力もよかったのかと思った。櫂樹はスポーツ万能で成績優秀。さらにかっこいいという先輩だ。
櫂樹は大勢の人に告白されているが、すべて断っている。
最近好きになった子がいると聞いたことがある。
美奈はそんな櫂樹のやさしい一面に心うたれたらしい。
美奈は
「先輩が先輩の好きな人と両思いになって幸せになってくれることが一番うれしい。
だから告白はしない」

と語ったことがあった。
しかし櫂樹が好きなのも美奈らしいということが、枸子はしばらくしてから分かった。

「はいっ。お疲れ様でした。」
「サンキュ。そ〜いや〜、美奈、紹介しといたほうがいいかな?」
「あぁ。あの子ですか?」
「ああ。」
「私と同じクラスなので。とりあえず。」
「そっか。」

何を話しているか枸子たち3人はさっぱり分からない。
二人の秘密の会話で部内のことだから、関係ない。そう思っていた。

「枸子っ」
「え?」

「紹介しなきゃなって子がいるの。
私のところにいろいろ聞きに来る代表になったから、
枸子たちも、知っておいたほうがいいと思って。」
「あ。そう?」
「うん。」

「枻杜!」
≪かいと?≫
櫂樹によばれてきた男の子、それが、枻杜だった。
「枸子、依子、金くん、
杜君は、一年生で、唯一今日試合に出ていた子だよ。」
≪へ〜〜この人がそうなんだ。≫

結構かっこいい分類に入るだろうという顔立ちだった。

「あ、枻杜君、この人たちは、私と同じクラスのクラスメイト。」
美奈は、枸子たちのことを枻杜に紹介した。
「オレ、金裕。よろしくなっ。」
「よろしくっス」

「私、木里依子。よろしくね」
「よろしくです。」

「私は、水島枸子。よろしく。」
裕、依子に続いて枸子が自己紹介した。
しかし、枻杜は枸子を見たまま動かない。
唖然とした。という雰囲気だ。
「……」
「?」

「木下先輩っ!ちょっといいですか!」
枸子がどうしたのだろうと思ったとき、枻杜は美奈に声をかけた。
「え?」
枻杜は美奈と、少し離れた場所で、ひそひそ話をはじめた。



「あの枸子先輩、って彼氏、います??」
「え?」
「答えてください!」
「??確かいない…。ん〜いないわね。」
「まじっすか??でも、金先輩は?」
「私のカンだけど、多分金君がすきなのは、依子ね。」
「ありがとうございました。」



なにを話していたか、枸子からは聞き取れなかったが、やがて二人は戻ってきた。
「はじめまして。木下枻杜です。
枻杜って呼んでください!!枸子先輩!」

戻ってくると枸子の手をとって、すごい勢いで枻杜は言ったため、枸子はとても驚いた。
「あ。うん。」

しかし、その後のほうが、もっともっとびっくりした。

「で……オレと…………付き合ってください! 」
「は…」
一瞬理解できなかった。
そしてなんて奴だ。
と思ったが、枻杜は顔を赤らめていた。

「枻杜!」
そして櫂樹は、枻杜の頭を殴った。
「ごめんなぁ。水島さん。」

櫂樹は、枸子に対して申し訳ないという顔をして誤った。
枸子は唖然とした。

「ぇ…あ。はい。」
「ってぇ!なにすんだよ!兄貴!」

〚兄貴??〛

「ああ。こいつ、オレの弟。」
〚へ〜〜〛

通りで二人とも、よい顔立ちをしていると思った。

「おまえらに初めて会ったときもこいつに単語帳を借りようとしてたんだ。
あの時はサンキュ〜な。美奈」
「あ。はい」

枸子はあの時疑問に思っていたのだ。
櫂樹が美奈のことを好きだということは、察しがついていた。
だから、なぜ他の人に借りようとしたのか、そして、その相手は誰なのか疑問だった。
しかし、弟ということであれば、美奈のために心配する必要はないだろう。

「にしてもおまえなぁ。」
「枸子、何組??」
急に呼び捨てを始め、なおかつタメ口になった。
枸子はまた唖然とした。


「は?」


「枻杜!!」
「……呼び捨てはやめてほしいわ…。」
「いいじゃん!枸子!何組??」
「……はぁ…皆と同じ。8くみよ。」

もう何を言っても無駄だと枸子は思った。

「オレ、6組!………会いに行っていいか?」
「何しに??」
「だから……会いに。」
「……」

何を考えているんだろうこの人は。と思った。
枸子には枻杜がよく分からなかった。

「いいじゃない。枸子。」
「へ?なに言っているの?美奈」
「そうだよ。なぁ。」
「裕くん!」
「うん。うん。」
「依子!!」

美奈も裕も依子も枻杜が枸子に会いに行くことを賛成し、そうさせようとしていた。
「じゃあ、いく!!」
3人の考えに同調して、枻杜はそういった。

「………もう勝手にして。」
もう本当に何を言っても無駄だと思った枸子の口からは、そういう言葉が自然と出た。
「やりぃ〜〜。」

枻杜は本当にうれしそうにそういった。
こうして枻杜は毎日毎日、(休み時間になったり、時間が空いたりする)
枸子のクラスに出向いた。

そして、楽しそうに話をしていった。




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