揺れる想い

 

 

工藤新一。5月4日生まれ。

黒羽快斗。6月21日生まれ。

すなわち2人の真ん中バースディは、5月28日。

 

「・・・だからって、何で俺があいつと一緒に誕生日を祝われなければいけな

いわけ?」

不本意極まりない、という表情で黒羽快斗は言った。

「いいじゃない、別に。せっかく誕生日が近いんだから、いっしょにお祝い

すれば」

あっけらかんとそう返したのは、中森青子。彼の、幼なじみ。

2人は今、米花町のメインストリートを歩いている。その手に、大きな荷物

を抱えて。

目指しているのは、世界に名高い名探偵・工藤新一の家であった。

「つうかさ、お前が勝手に蘭さんに持ちかけたんじゃないの?」

「え〜違うわよ。もともとは、蘭ちゃんが言い出したんだから」

・・・そうか。

快斗は、微妙な気持ちで言葉を飲み込む。

毛利蘭。彼女がずっと待っていた名探偵は、5年前に帰って来た。

しかし、またすぐにアメリカの大学に留学。長い勉強期間の末、ようやく昨

年にまた米花町へと戻ってきたのだった。

本来なら。本来なら、工藤新一が帰ってきた時点ですべての結末が訪れたこ

とだろう。

しかし、相変わらずの微妙な関係。むしろ、後退したかとも思える関係。

薄い氷の上に成り立っているような・・・危うい関係。

そんな状況である今、彼に誕生日を一緒に過ごそうとは言えなかったのだろ

う。

・・・青子が、一肌脱ごうという気になったのもわかる。

どういうきっかけで知り合ったのか知らないけど、蘭と青子は交流があるら

しかった。

まあ、それを言うなら俺らも似たようなものだよな、と快斗は新一を思い浮

かべる。

頭脳明晰な名探偵と、超人的な技術を持つ怪盗。永遠のライバル。

しかしながら、ライバル関係にあるのはそれだけではなく・・・。

思わず苦笑する快斗。

そんな彼の姿を横目でチラッと見て、青子はこっそりため息をついた。

また、何か考えてる。

昔から、快斗はどこか秘密を抱えているような節がある。そのことが気にな

らなかったといえば、うそになる。

ただ、自分たちは深いところでちゃんとつながっている・・・そんな気がして

いたのだ。単なる幼なじみとしてだけではなく、特別な関係として。

なのに。

なのに、湧き上がってくるこの不安はなんだろう?

いつの頃からか・・・彼の言葉に、表情に。混ざり始めた、微妙な感覚。

『新一の心がわからない』と。この間、蘭ちゃんはそう言って泣いていた。

私だって・・・私だって、泣きたい気分。

快斗の気持ちがわからないのは、私だって同じなんだから・・・。

だからこそ、計画したのだ。この、真ん中バースディを。

 

一方、工藤邸。

「もうそろそろ、来る頃かしら?」

ずいぶんと陽気な様子で、毛利蘭がそう言った。

明るい黄色のエプロンを身につけ、手早く料理を飾り付けている。

テーブルの上に次々と並ぶ料理に、工藤新一は黙って見入っている。

「新一・・・?」

どこか、伺うような声。

「ん?なんだよ?」

「え、その・・・ごめんね、なんか勝手に計画しちゃって」

「何言ってんだよ、いまさら。別にかまわないって、言ってるだろ?」

「うん・・・」

蘭は、無理に笑顔を浮かべると、また料理の準備に取りかかった。

その表情を見るたび、胸が痛くなる。

どっちかを、選ばなければいけないことはわかっている。

このまま、宙ぶらりんなままでいれば、結局は蘭もアイツも傷つける。

わかっている。それは、わかっているのだが・・・。

心の中にいつもある、愛しい面影。

ちょっと冷たい笑顔の裏側に、そっと秘めた暖かい素顔。

体中に張り巡らした、強気なバリケード。その中に隠れている、子供のよう

な弱い心。

一番大事なのは彼女だと。それは重々承知の上だ。

『いいのよ、別に。あなたは、早急に結論を出す必要なんてないわ』

そんな風に言う彼女の気持ちに、甘えてばかりな自分。

かといって、目の前の幼なじみをこっぴどくふってしまう決心はまだつかな

い・・・。

罪な男だと。そう、自分に酔うのは簡単だけれども。

それでも、出来るだけ誠実でありたいと思っていた。

・・・哀。

彼女は、結局あの黒の組織が崩壊した後も、宮野志保には戻らなかった。今

でも、相変わらず阿笠博士の家で暮らしている。

今は中学3年生だが、最近めっきり大人びてきたと博士は目を細める。まる

で、本当の娘を見るかのように。

彼女の穏やかで幸せな日々が、ずっと続くといい。

今はただ、そう願っていた。

 

工藤邸に向かう、タクシーの中。

押し黙ったままの服部平次に、遠山和葉は「怒ってるんか?」と聞いた。

「怒ってへんって」

「うそや!絶対怒ってる!」

「・・・もうええわ」

ため息混じりに言う平次の反応に、和葉はやっぱり怒ってるやんか、と小さ

くつぶやく。

無理やりに東京まで、連れてきたのは悪かったと思っている。

しかし、和葉にとってはある意味これが大きな賭けだった。

昔、工藤という人物にやきもちを妬いた。それが男だと、しかも平次と同じ

探偵だとわかってホッとした。

次に気になったのは、蘭。可愛らしい彼女に、平次が気があるんじゃないか

とやきもきした。それもやっぱり勘違いで、彼女は幼なじみの工藤新一を

ずっと想っていた。

それ以来、蘭とはずいぶん仲良くなった。お互いのことを相談したり、話し

合ったりしてきた。

そして、わかったのだ。今、自分達が同じ不安を抱えている事が。

平次が時々、東京へやって来ていたこと。本人は内緒にしているつもりだっ

たらしいが、そんな事バレバレだ。

一体、誰に会いに来ていたのか。不安は募るばかり。

そんな時、この真ん中バースディの話が蘭から持ちかけられ・・・和葉は、飛

びつくように賛同したのだった。

そんな和葉と並んで座りながら、平次は窓の外を眺める。

・・・全く、何を考えてんのやろなあ〜。

いきなり、東京に行こうと言われ。いきなり、工藤んちに行くと言われ。

わけがわからんわ、ほんま。

せやけど・・・。

窓の外を歩く、セーラー服の集団を眺める。

ついついその中に、愛しい面影を探してしまう。

・・・今頃は、まだ、学校におるんかな。

会えたらええねんけどな・・・。

 

 

NEXT

 


 

さて。ようやく、取り掛かれました。

きつね様の21000HITのリクエスト作品です。

コナン、快斗(KID)平次+新一(!?)の哀ちゃん争奪戦!何故か蘭ち

ゃん、和葉、青子が出てきて大混乱〜」というリクエストでしたので、とり

あえず数人出しました♪

ただ、このままではとても終わりそうにないのでまだまだ続きます(爆)

てか、まだ哀ちゃん出て来てないんで〜(^^;

 

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