揺れる想い 2

 

 

 

 

「み〜つひこっ!新一に〜ちゃんちに行こうぜ!」

そんな声が真後ろからしたかと思うと、がしぃっ!と太い腕が首に回された。

「だ〜!痛いってば、元太!」

「あ。ワリイ、ワリイ」

元太は、がははと笑うとようやく腕を放した。光彦は、解放された喉を押さ

えて軽く咳き込む。

「・・・ったく・・・いいかげんに、手加減ってのを覚えてくれよ?君のその力は

今や有名どころなんだからな!」

「だ〜か〜ら〜、悪かったってば」

元太はぴょこんと、首をすくめる。

頭も身体も肩幅も大きくて。存在感のありすぎる彼だが、そんな表情は小学

生の時と何も変わってはいない。

今はその体格を生かして、ラグビー部に所属している。2年生ながらすでに

卒業後の引き抜きが来ているほどの、実力プレイヤーだ。

帝丹高校2年F組の教室。放課後なので、すでにクラスメート達は各自帰

宅するなりクラブに向かうなり、次の目的地へと移動している。

「で、なんで新一さんの所に?」

「あれ?俺、言わなかったっけ?なんか、呼んで来いって言われたんだよ」

「新一さんに?」

「ああ。そうそう、美味いもん食わしてくれるらしいぜ!」

何の用だろう、と光彦は首をかしげる。

しかし、お呼びがかかったとあれば訊ねるのにはやぶさかではない。彼の探

偵としての活躍は深く尊敬しているし、今自分が書き溜めている小説のネタ

にもなる。

「じゃ、行きますか」

カバンを持ち上げて光彦がそう言うのと同時に、廊下から歩美が顔を出した。

「元太君、光彦君!」

「おう、今行くぜ!・・・あれ。灰原は?」

光彦と並んで廊下に出た元太は、1人立っている歩美を見て首をかしげた。

「哀ちゃん?」

「おう」

「哀ちゃんなら、図書館よ。後から行くからって」

歩美がそう答えると、光彦は傍らの元太を見た。

「・・・灰原さんも、呼ばれているのか?」

「うん、そうよ」

その問いには、歩美が答える。

「必ず4人で来るように、って新一お兄さんは言ってたもの」

「ふ・・・ん」

「おい、早く行こうぜ!」

先に立って歩き出した元太に、待ってよと歩美が駆け寄る。そのまま仲良く

歩いていく二人の後をついて歩きながら、光彦はなんとなく考え込んでいた。

 

一方、その頃の工藤邸。

テキパキとパーティの準備をする蘭、青子、和葉の3人。

リビングのソファに押しやられ、それを所在なさげに見守る3人の男たち。

「なあ・・・今日、誰が来んねん?」

平次がソファの背に持たれかかった姿勢で、誰ともなしに聞く。

・・・・・・反応は無い。

じろっと視線を動かして快斗を見ると、彼は黙ったまま肩をすくめてみせる。

気障なやっちゃの。

平次は、ふん、と鼻を鳴らすと今度は新一の方を見る。

「工藤。誰が、来るんや?」

「誰でも良いだろ、別に」

つっけんどんに答える新一。

平次が聞きたい事は、わかっている。誰が来るのかでは無く、彼女が来るの

かどうかを知りたがっているという事は。

バーロ、そんなに簡単に教えてたまるかよ。

・・・そんな、新一の感情は明らかに透けて見えるらしく。

平次も、ムッとした表情で黙り込む。

工藤の奴・・・ええ根性、しとるやないけ。

「・・・クッ」

無言の応酬に、快斗は思わず声を立てて笑ってしまう。

そんな彼をまた2人が、思いっきり憤慨した表情で睨みをきかせ・・・3人の

微妙な空気がリビング中に広がり、沈黙が訪れる。

と、その時。

玄関の方からピンポーンと、彼らが待ちわびていたチャイムの音が響き渡っ

た。

「は〜い!開いてるわよ〜!」

蘭のかけた声に、「お邪魔しまーす!」と元気な声が響く。

やがてぞろぞろ入ってくる元太たちを、笑顔で迎えて・・・。

「・・・新一?どうしたの?」

きょろきょろと首を動かしている彼に、蘭が不思議そうな顔で言った。

「へ?あ、いや・・・」

バツが悪そうに、視線をさまよわせる新一。

その時。

「灰原さんなら、後で来るそうですよ」

突然、かけられた声。

その声の主・・・光彦は、真っ直ぐ新一を見つめていた。

「・・・あ、ああ。そうか」

新一は、平静を装いながらうなずく。

「じゃあ、料理はもう少し後にしましょうか?」

「え〜!それじゃあ、何のために来たのかわかんないぜ!」

「んもう、元太君ったら!」

蘭や元太たちが楽しそうに話していることに、表面上は笑顔を見せながら。

それでも新一は、自分を観察するような光彦の視線を気にしていた。

ったく、光彦の奴・・・。内心、ため息が出る。

ひょっとして、一番のライバルはこいつなんじゃねーかと思う今日この頃。

少なくとも、週に1度ほどしか哀に会えない自分に比べ、高校で毎日のよう

に会うのだから。

自分と哀の事は、もちろんひた隠しに隠してはいるのだが・・・ばれてんじゃ

ねーの?と思うこともしばしばある。

『気のせいよ・・・考えすぎじゃない?』

そんな風に、哀は笑っていたけれど。

むしろ、そんな無防備な彼女にもっと自覚を持って欲しい新一であった。

 

・・・奴か。

快斗は、少し目を細めて光彦を見つめた。

奴の事は、よく覚えている。子供の頃からの哀の友人で・・・そして、その頃

から彼女をずっと、想っていたようだった。

あれは、いつの事だっただろうか?

彼女を誘いに行った星の美しい夜に、思いっきり邪魔をされた事。あろうこ

とか、ロリコンの変態扱いをされてさんざんだった日。

10年の月日が流れ、背は高くなりあどけなさは全く抜けているが・・・。

それでも、あの小憎らしい頭の良さそうな顔は相変わらずだ。

・・・全く。ライバルだらけだよな、今日の集まりは。

快斗は、深く深くため息をついた。

しかし。彼はまだ、知る由も無い。

今日最大のライバルが、まだ姿をあらわしていない事を。

 

 

NEXT

 


 

さて・・・ライバル陣が、出揃いました。

あ。違うや、揃ってないや() さて、残りは誰でしょう?

この作品のリク内容を読めばわかる・・・かな?

いや、でもよく考えたら違うしなあ・・・()

 

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