「おはよーございます」
いつもあいさつはおはようございます、だ。どんな時間だってコレ常識。
もう店には大体オネーサマ達が出勤してして、店のセッティングや踊りの練習に余念が
ない。今日は珍しくオヤジも来ている。ゲゲゲ、なんかこっち睨んでるぜ。目を合わせ
ないように控え室に行く。
「ユキ、遅いじゃないか?減らすぞ」
ギク。ほんの5分の遅刻じゃないか、そのくらい大目に見ろよ、殆ど只同然で働いている
んだからさ。
「ケッ、遅れてどうもすいませんー」
息子にゃ、てんで冷たいんだから。
「おっはよーございまーす」
そのとき後ろから学校にいるときとは、比べ物にならないくらい明るい声で飯島が入っ
てきた。
「あ、おはよう。珍しいねミズキちゃんが制服で来るなんて」
飯島が来た瞬間オヤジの態度がころっと変わった、このやろう・・・・。
「はい、ちょっとこの制服着ないとならない用事があったんでぇ〜」
お、おいちょっとまてよ。オヤジは飯島が高校生だってことわかってて雇ってたのか?
「あれ、その制服はユキと同じ高校のだね?」
「そうでーす、行也君とは同じクラスなんですよ♪」
おいおいおいおい、頭が痛くなってきたぜ。なんでオヤジは知ってて俺に教えなかった
んだ〜!ってゆかー犯罪だろ?高校生をこんなところで働かせていること自体!
「あー、そうだったの。ユキったら何も話してくれないからね、学校のことは」
「・・・・・・・・・・・・」
だんだん俺の立場が怪しくなってきたので、こっそり控え室へ行く。中には化粧中のオ
ネーサマになる前のお兄さんが何人か。
「お、おはようございます」
「ユキちゃんおはよう。遅刻なんて珍しいわね」
「ア、アハハハハ」
笑って誤魔化す。
「そうそう、なんかねー今日アイカちゃんがね急に来れなくなっちゃったんだって。そ
れで、オーナーがユキちゃんに変わりに出てもらおうって言ってたわよ」
「ええっー!マジですか?俺、聞いてないですよ」
「そう?でも私たちそう聞いたから、一応お洋服を用意はしたんだけどね・・・」
なんだって?!全然そんなこと聞いてないぜ!俺はバーテンダーとして働いてるのに、
女装して男の客に愛想振り撒けってゆーのかっ?
血相を変えて飛び出して来た俺に、オヤジもどうしてか気づいたのだろう。側にやって
きた。                            

 

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