飯島は暫く荒い息をしていたけど、収まってから俺の手を縛っていたスカーフを解き

立ち上がった。フワッとシャンプーの匂いがまたした。

俺ゆっくりと立ち上がり、髪の毛とシャツの乱れを直す。

またしても沈黙。

・・・・・・・キーンコーンカーンコーン・・・・・・・・・

5時のチャイムが遠くから聞こえてきた。

もう5時だ。

ん?5時?

「お、おい今のは5時の鐘だよなぁ」

「そうだけど?・・・・・あっ!」

「バイト!!」

「やっべー!お前もだろ?遅刻するとバイト代が下がるぞ!あのオヤジ、そういうとこ

ろだけはうるせーからよ!」

「ゴメン、行也君私が悪かったね」

「・・・・・・・・・・・・・いいよ、あやまんなよ。それよりもその格好でここから出たらやばく

ないか?」

「大丈夫。ウィッグ被ってけばバレないでしょ?」

パンパンッ。

飯島はスカートの皺を直すと、手鏡をポケットから出して物置として使われている教壇

の上に置き、手馴れた様子でウィッグを付け直した。

「よし、完璧・・・・・」

独り言のようにそう呟く飯島。どこからみても女にしか見えない・・・。

「あ、俺先に出るからお前5分くらいしたら来いよ、見つからないようにな」

「えー、一緒に行けないの?」

「誰かに見つかったら困るだろ?お互いよ・・・・・」

「私は別に構わないけど?だって噂の相手が行也君だからね」

「おい〜!」

「わかったよ、もうケチ」

ふぅ、これで大丈夫だ。もうこの時間なら校舎に残ってる奴らも少ないし、1人なら誤

魔化すのも簡単だ。

「それじゃあ、先行くから」

「また、後でね!」

チュ・・・・投げキッスなんか送ってきやがる。

とりあえず俺は社会科準備室を後にした。

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