彼女は俺が入ってきてもこちらを向こうとはせず、黙っている。恥ずかしがってる

のか?このやろー、可愛いぞ!ここは俺から声をかけるか。

「あ、あの手紙くれたのは君?」

・・・・・・・・・・しばしの沈黙。あれ、あれ違うのか?もう少しなにか言ってみようかな?

「来てくれてありがとう」

やっぱそうだったんだ、でもなんだか声がちょっと・・・・おかしくないかい?店に居る

オネーサマ達となんとなく似ている。でもあれよりは綺麗は声だけど。

そういうと彼女は振り返った。逆光でここからではよく顔立ちが見えないけれど、予

想以上に可愛いかもしれない。

俺はもっと顔をよく見るために近づいた。彼女との距離が縮まるたびに心臓が踏切の

警告音のように早く打つ。

俺を上目遣いで見る彼女はやはり可愛かった。ただ・・・・頭の中で何か引っかかるもの

がある。こんなコ、いたか?というよりも俺はこの顔をいつも見ている気がしてきた

んだ。しかもオヤジの店で!!

「き、君名前は?ごめん、どこのクラスか分からないんだ」

「・・・・同じクラスだよ、ヒドイ分からないの?」

分からない?って言われたって・・・いないだろ、ウチのクラスには・・・・・・あぁっ!?

も、も、もしかしてあの・・・・・!?

彼女はまた後ろを向くと、すぽっ!とヘアウィッグを外した。

「これで分かった?」

あー、なんてことだぁぁ俺の予感は当たってしまった。こいつは女じゃない!

「飯島ぁぁぁ〜っ!」

 そうだ、飯島瑞貴だよ!まさかこんなに綺麗に化けてくるとはぁ!すっかり騙されて

俺はなんて間抜けなんだ!

「行也君、来てくれて嬉しいよ、私。噂で知ってるでしょ?その通り私は男の人が好き

よ。そしてアナタのことは一年のときからずっと好きだったの」

ぞぞぞぞぞぅっ〜。鳥肌が立ってきた。よし、逃げよう。このままで俺の硬派なイメー

ジが崩れてしまう。しかし、こんなときに限って足が旨く動かない。俺が教室を出よう

としたのを悟った飯島がものすごい勢いで俺を回り込み鍵をかけてしまった。

「逃げようとしたってダメ。私がどんな思い出告白したか、行也君に分かって貰いたい

の。あなたが好きでいつも一緒に居たいから、こっそりあなたのお父様のお店で働いて

いるわ。行也君はかっこいいから誰かにとられるんじゃないかといつも心配なの。お店

の先輩たちも行也君のこと狙っているわ」

そ、それでか・・・・見たことあるような気がしたのか。源氏名『ミヅキ』。

店ではかなり人気がある。売れっ子とでも言うのか。

 飯島はそういいながらどんどん俺に近寄ってくる。綺麗に化粧された顔はどこから見

ても女の子だ。顔は可愛いがこいつは男なんだ、殴ったって大丈夫、そうさ、大丈夫だ

逃げよう!!

「行也君、今日こそあなたを私のモノにするわ!」

そういうと俺が殴りかかるよりも早く飯島は襲い掛かってきた。その体からは想像でき

ない位の力で俺は押し倒されてしまった。油断していた・・・・こんな細い奴ならと思って

いたのだが。腕は鍛えられた筋肉で盛り上がっている。

「ごめんね、こうでもしないと行也君暴れるから。私ってこんな外見だから結構襲われ

ることが多いのよ。だからちょっとだけ鍛えてあるの。ジムでね、今はお仕事で筋肉つ

くとかっこ悪いから、通ってないけれどね」

なんで、俺がこんな惨めな格好しなきゃならんのだぁ〜。よりによって自分よりも体の

小さい奴に押さえ込まれているなんて、くぅぅ。

「い、飯島冗談だよな?ここは共学だぜ?男なんかより女の方がいいぞ、柔らかいしい

い匂いがする。それに俺なんかよりも男前なやつ沢山いるだろー!」

「ねぇ、僕じゃダメ?女なんかよりもっと気持ちいいことしてあげるよ・・・・。」

『私』から『僕』に変わった・・・・。ダメ?と言われても俺にはそっちのケはないんだ!

「だからぁ、俺はノンケなの!男よりも女のこの方が好きなの!分かった?」

「じゃあ、仕方ないけれど最終手段とらせてもらうね」

するすると飯島はセーラー服のリボンを外すと、俺に馬乗りになったまま両手首を縛り

上げた!しかも慣れた手つきで!!

オイオイオイ〜SMかよー、おれは男も好きじゃないけどマゾになるのも嫌だぞ。

その隙に逃げ出そうとしたが、足でがっちり下半身を押さえ込まれているから情けない

がまったく動かせなかったのだ(ガーン)

 

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