3人を乗せた飛行機はものすごい気流に揉まれていた。
飛行機は日没後の空を飛んでいる。真っ暗の空間を機は気流を全体に受け、この200人乗りの大きなジャンボジェットがまるで小さな子供が遊んでいるおもちゃのように感じらるぐらいに揺れていた。
揺れ始めるまでは快適なフライトで、日本からイギリスのロンドン直通のこの便では、二度目の機内食を乗客は食べ終え、機内上映の映画が終わり、明かりが落とされて眠る状態になった。
窓側の和美、その横に隆次、悟と座っていた。
夜の嫌いな和美は、始めての飛行機の中での夜に戸惑いを覚えながら浅い眠り中にあり、その脳は昔の出来事をしなければいけない義務かのように思い出していた。
夜型の隆次はどおいう訳か深い眠りに入っていた。
悟は短髪の頭に丸メガネをかけ、目を開けた状態でなにかを考え込んでいた。
「ゴウゥー・・・」
機が縦揺れに上下に揺れた。
「何!」現実に引き戻された和美が発した。
周り全ての人の悲鳴に近い声が同時に耳に入ってきた。
「隆!」
もう起きてるのに隆次の肩を大きく揺さぶる。
「和美!心配するな」
そう言っている隆次の顔が青い。
「飛行機ってこんなに揺れるものなの?」
「海外旅行に何度か行った時はこんなに揺れた事はなかった。悟はどうなんだ?」
「いや俺も実は海外へ行く飛行機は始めてなんだ。でもこの状況はおかしいな」
機内アナウンスが流れる
「シートベルトの着用をお願いいたします。只今、本機は気流と気流の谷間を飛行中です。しばらくしますと安定しますので、今しばらくお待ち下さい」
「隆、今小学生の時の事を思い出していたのモグラ人間にぶつかっちゃて」
「何だ?モグラ人間て?」
「昔私の町に住んでいた浮浪者の人」
「その人がどうしたんだ?」
「分からない。思い出してたと言うより頭に浮かんできたの。小学生の私に大人になった今の私が表れて、イギリスに行っても同じだ、なにも解決しないって言うの」
「和美は疲れてるんだよ、この揺れが収まったらゆっくり眠ることだ」
「もしかしたらこの揺れは和美ちゃんのその夢に関係が有るのかもしれないな」
変わらず機内は揺れの為ざわついている。あれ以来アナウンスはない。
「どういうこと、悟君?」
「全く科学的ではないんだけど、和美ちゃんがそのことを考えている時、脳が何らかの電磁波を発して計器に影響を与えて、来る予定じゃないこんな気流のとこに来ちゃったのかもしれない」
「おい!いい加減なことを言うなよ、和美がもっと考えこむだろ!」
「そんなことってあるの?」
「事例はいくつかね。でもこの場合は違うと思うよ」
ピン「本機はあと2,3分で安定飛行に戻ります。安定するまではシートベルトははずさないようにお願いいたします」
「もうすぐ抜けるそうだよ和美ちゃん」
「うん。悟君、私って変な能力あるのかな?」
十数時間のフライトを終え、3人は無事ロンドンのヒースロー国際空港に着いた。
ロンドンの空は日本を出た時に見た秋空の様に清清しい空ではなく、予想していたとうりの灰色の何処か憂鬱さを感じさせる雰囲気だった。和美はそんな好きではないタイプの空を仰ぎみた。
教授に会うにはこれからまだエジンバラ行きの列車に乗らなければならず、和美だけでなく、あとの二人も少なからず頭が朦朧としていた。
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