ハッチを無理やりこじあけた。操統士の顔は恐怖でひきつっている。
彼をこのまま帰してしまってはいけない。今、世界を救えるのは僕しかいないんだ。
その瞬間、僕は英雄だった。そんな一種の興奮状態と、このマシンさえなければ、という怒りとで、理性が消えてしまった。
心の中で黒い影がおたけびを上げる。
殺せ、殺すんだ。
僕は操然士を引っ張りだし、鉄パイプで減多打ちにした。
頭が割れ、腕が曲がり、皮膚が裂けて血しぶきが跳ねる。
飛び出した目玉を踏みつぶし、ゆがんだ顔を蹴り上げた。
操縦士がただの肉塊になった後、マシンに乗り込み中を破壊した。タイムマシンは鈍い音を発し始めた。
僕が地面に降り立つと同時にタイムマシンは消えた。
きっとどこか異次元の世界で永遠にさまよい続けるのだろう。
仕事を終え、人間の形をとどめていない操縦士を見下ろしながら、僕は満足感に浸っていた。
僕は世界を救ったのだ。
今にこの地獄が消えてなくなる。間に合ったのだ。
その場に腰を下ろし、深呼吸した。腐臭まじりの風を胸一杯に吸い込む。この風ともこれでお別れだ。すぐに新しい、きれいな風に変わる。
そう思うと、少し名残惜しくもあった。
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