明日へ…第二部14

僕と同じように狩りをする人たちが増えてきた。僕もすぐに慣れ、今では冷静に獲物を仕留められるようになった。
が、大勢が狩りをするものだから、獲物たちの数が急激に減っていく。食事にありつける回数もどんどん減っていく。
道端には犬猫の骨と餓死した人間の死体が放置されている。

ある日、僕はいつも通り狩りに出かけた。獲物を探してうろついていると、正面から一人の男が近付いてきた。目もとは殺気立っている。彼もきっと獲物を探しているのだろう。
「一人より二人の方が確実に仕留められる」
すれ違いざま、彼はおもむろにそう言った。
冷えた彼の声に、心臓が凍り付きそうになったが、すぐに気を取り直し、彼の方に向き直った。
「どうだ」
高圧的な彼の態度に圧倒され、僕は思わずうなずく。その後は、彼の言いなりだった。

男の狩りの腕はなかなかのものだった。僕一人だと、一日に犬一匹が精一杯なのだが、今日は犬二匹に猫が一匹。すばしっこい猫を仕留めるなんて、並大抵の腕ではない。
始終無言で肉をむさぼる彼に、感心のまなざしを向けていると、どこかで彼に会ったことがあるような気がしてきた。
アキラ…。
僕のつぶやきに、彼の顔色がさっと変わった。あ、と小さく声を漏らし、手に持っていた肉を取り落とした彼は、僕の両肩を力強く握りしめた。
「生きてたのか」
僕らの目には涙があふれていた。

それからは毎日アキラと過ごすようになった。一人だと抱えきれず、押しつぶされそうになる不安も、二人だと少しは和らぐ。今までのことや、これからのことを随分と話し合った。今の一時期さえ乗り越えられれば、きっと明るい未来が待っているはずだなどと、薄暗い地下鉄のコンコースで夢を描いていた。だが、何をどんなに語しても、トモミのことを話す勇気だけは持てなかった。

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