読書日記 

 2002年8月

振り返るとまあなんてマンガの多い月だろう!(笑)
反省反省・・

  



 「しをんのしおり」 三浦しをん  新潮社 ISBN 4-10-454101-X 本体価格1,400円 

  「格闘する者に○」で出てきた新人作家。これ、就職活動のお話だったんですが、
 面白かったんだ。この作家はボイルド・エッグスという日本人作家・著者のための
 著作権エージェントに属しているらしい。作家の著作権エージェントって聞きなれない
 ですが、要はお抱えの作家の作品を管理し(著作権の保護)、いろんな出版社に
 持ち込んで発行にこぎつける総元締め、とでも解釈すればいいのかな。
 多分このエージェントが抱える作家の中で一番知名度があるはず。
 最近立て続けに作品を発表している注目作家です。
 て、何で感想より先に宣伝みたいなことしてんだろ・・。
 いや、なかなか面白い形態だと思ってね。
 この人、就職活動で企業に提出した文章が、このエージェントの代表者の
 目にとまってスカウトされたのがデビューのきっかけだったそうです。おもしろいね。

  さて、この作家のエッセイはおもしろい!「極め道」「妄想炸裂」等も読んだけど、
 分析力と妄想力(笑)がびみょーなバランスで。対象問わずの評価や分析の仕方が
 なかなか鋭くていい。それにしてもこの人はすごい妄想する人だなぁ。本書で
 「健さんの一日」(あ、高倉健のことね)として延々と健さんの日常を妄想している
 箇所があって、ココまで想像できればもう立派ですらあるよ・・と思った。怖い。
 けどおもしろい!他、京都の哲学の道を散策してて、寺の片隅においてある盆栽を
 みて「超戦隊ボンサイダー」のあらすじを考えつきそれを発展させていくくだり・・
 「松グリーン、菊イエロー、ブルーローズ、梅レッド、牡丹ピンク!
 5人揃ってボンサイダー!」みたいなね。放送時間帯考えたりとか、
 裏設定考えたりとか。あ、アホでしょう(笑)。
 筆力のない人が綴ったら単なる妄想の垂れ流しにしかならないことでも、この人だから
 読ませることができるというか・・いや、面白いですよ。
 時々相当変な方向に行ってるみたいですけどね。
 ただ、幅広い年齢層が読むに耐えうるかというとちょっと疑問。
 (ちょっとマニアックすぎる題材がはいってるようなので)
 しかし、おすすめです。笑えます。

 ・・・しかし物語部門・長編作品は、第2作目の「月魚」で、意表をつかれた、というかんじ
 だったので、それ以降の作品は読んでいないのですね。「月魚」・・・・うーーん・・、
 決して悪い作品ではなかったのですが・・普通に読めたし・・
 いや、期待が大きすぎたのか。「その設定?」というか・・なんか、
 あんまり印象に残らなかった。
 注目すべきところがなかったというか。(歯切れ悪いなー)
 むしろ今再読したら印象が変わるかもしれません。そう思うってことは、
 まだこの作家に関してはやっぱり期待というか・・・
 まだ読んでみたいと思わせる何か、があるんだと思うんですな。
 あ、「月魚」、同時収録の番外編が面白かった。題は忘れてしまったのですが、
 水の底に沈む村のことが出てくる話で。ち、違ったかな・・・?

 2002.08.09



 「ハッピーエンド」 ジョージ朝倉 講談社KCデラックス ISBN 4-06-334519-X   
 本体価格  700円 

  300ページも書き下ろし・・・本が重いいぃぃ・・。
 実はこれと前後して「ハートを打ちのめせ!」も読んだんだけど(後日感想UP)
 なーるほど・・。やっぱ「水蜜桃の夜」で感じた予感ははずれてなかったね。
 本書は「エセ自伝的青春オムニバスストーリー」と銘打たれてるワケですが。
 この本の捉え方って人それぞれだと思う。ガツンとくるとこも人それぞれにある。
 きっと。

  私的には友達との距離について。すッげー執着してたい友達っているよね。いた。
 同性で。その一瞬はそいつとの関係性がすべてってカンジの。
 そういうシンパシィぬきにしても、ショーコとアキラの物語は・・いいなあ。
 これ、大塚英志がネームチェックしてて、彼はあとがきで
 「ネームの中の未分化のものを全肯定した」と言ってます。
 ああなるほど、読んだ時に「これは全部出しっぱなしだなぁ」
 と感じて、それからそういう描き方で紡がれた物語がすごく可愛く、いとおしく思えた。

  この作家ねぇ、とってもいいです。うまくいえんけど。あと未読の単行本は2冊。
 どうもジョージマスターのご意見によるとその残り二冊(「恋文日和」)が
 ベストバウトなそうな。おいおい、期待で胸がつぶれそうだぜ・・!

 追記:これ、スペシャルサンクスに羽海野チカ(「ハチミツとクローバー」の人。
 めっちゃかわいらしい絵と可愛い話をかく人。多分新人さん。きゅんとくるぜ
 この人の話。今かなり注目株)さんの名前が・・!アシでもしてたのか?友達なのか?
 きーにーなーるー。

 2002.08.11



 「ぶっせん」6 三宅乱丈  講談社モーニングワイドコミックス       
 ISBN 4-06-337473-4 本体価格619円 

 えー・・このお話は「仏物専寺」というお寺が貧乏で、お寺を維持していけないので
 ココは一発学校を開講して(それが仏教専門学校→略して「ぶっせん」・・)
 授業料とったろーほんでお寺存続していこー、ほんならえらい変な生徒さんが
 集まってきてもうた!って筋です。なんちゅうあらすじや>俺。
 青春お寺ライフギャグマンガ。ってなんか変なカテゴライズ。

 奥さんでもこのマンガお買い得ですのよ・・・!
 いやー生徒や先生坊主のキャラが全部おもしろくって!
 この作家の絵、すごく独特なんですが、(なんか筆で書いてる?コレ・・)
 もー線がすごい生き生きしてる。動作とか表情とかほんとうまい。
 参考こちら・・
 6巻(で完結)の紹介で5巻の話するのもなんなんですが、5巻収録・69限目の
 あけみの城君引き止めるときの情念こもった目とか、76限目の正助の風邪ひいた
 ときの顔とか!もーー爆笑!あちこちで笑いのツボがねぇ・・
 雲信なんて「つまんだ」やからさ!あーおもしろい。
 (一人でうけてる・・わからんってか)
 目の付け所もおもしろいし、細部までみっちり書く人なので読み応えもバッチリ。
 本の作りもかわいいねん!最終巻できっちり爽やかに終わってて読後感も◎。
 しっかしこれがBSマンガ夜話で取り上げられた時はびっくりしたよ!
 出世したなぁ・・(ていうか作者は女性!だったのね。たまげただオラ)
 ちょっと変わったカンジのギャグマンガですが、いいですよーこれ!
 絶対おもろい。

 2002.08.16



 「紫嵐」〜Violet Storm〜 R/EVOLUTION 2nd Mission     
 五條瑛 双葉社 ISBN 4-575-23439-7 本体価格1,800円

 ※注:今回前置きも本題も非常に長いです。本書についての書評・・というより、
 この著者の作品世界の紹介、私見になってしまってるかも・・。
 最早自分の為の覚書みたいになってます。ということでお忙しい方はすぱっと
 飛ばした方がいいかも知れません。
 論旨が拡散しがちな文章ですので・・まとまりない・・※


 《前置き》 

 まずこの本(連作で、「革命シリーズ」とよばれてます)の発行形態についてご説明。
 これは10年かけて(!)完結する予定のシリーズもので、1年に1冊づつのペースで・・
 2001年に1巻が、2002年に2巻(本書)が刊行済。3巻目に当たる連載も
 現在「小説推理」で掲載されていて、順当にいけばこれは2003年5月頃の発刊と
 なるのでは。
 このシリーズ、細部が非常に凝っていて、(装丁・葛西薫氏。シンプルの極みと
 いうか・・一見の価値ありです。とても美しい。でもすごく汚れやすい・・泣)副題の
 「R/EVOLUTION」の1字ずつを各巻のタイトルの頭にしてるのですよ。
 1巻目の「断鎖」の副題はEscape、2巻目の「紫嵐」はViolet Storm、
 現在連載中の3巻目に当たる物語は「心洞」Open Sesamiつまり、Eから始まって
 Rに辿り着くと、REVOLUTION〜「革命」〜のでき上がり!となるわけです。わーお。
 しかも背表紙は10冊揃うと一つの絵になるらしい・・・のです。アンリ・ルソーの
 「蛇使いの女」という作品。(これに関しては1巻で作中に出てくる)多分シリーズを象徴
 する意味を持ってる・・・?暗喩っちゅーか。
 にしてもこう書き出してみるとめちゃめちゃ凝ってるなぁ。

 しかし・・この企画がスタートして雑誌連載が始まったのがまだ2000年の頃。
 その時にはまだこの人はデビューしたばっかりの新人作家だったんだよなあ。
 デビュー作の「プラチナビーズ」が前年に発行されたばかりの頃。
 これが何かの賞を取った作品というならまだ分かるんだが、全然実績ないのに
 10年計画の発行企画を立てられるって一体どんなものを持っていってお話し合いを
 したんでしょう・・謎。出版社もよく決断したなぁ。もともとライターやってたらしいから
 話を通しやすかったってのもあるのか?まあ、世の中には未完の作品は
 溢れているので、10年完結予定と謳っていても頓挫するかもしれないというのが
 怖いところだけど。でもこれだけ本の作りも凝ってるのに、
 途中で終っちゃったりなんかしたらいややなぁ。
 是非頑張って続刊出して欲しいと願う今日この頃。

 著者の作品には他に、デビュー作の「プラチナビーズ」(以下PBと略す)に続く一連の
 シリーズものがあり、その作品世界と本書のお話は微妙にリンクしています。
 どちらも物語の発端になる人物が同じなのです。しかし共通点は他にもあります。
 この2シリーズに共通しているのは、主要人物達が何らかの要因で、
 属する社会の中で「マイノリティ」であること。PBにおいては、主人公は
 日本に育ちながらもその出自のせいで外見が「外人」である為に周囲に日本人と
 認めてもらえない。アイデンティティの不成立に悩んでいる。
 (これと比較の対象であるかのようにマジョリティの代表のような人物を上司に
 すえてるのも興味深い) その友人は民族的には生粋の日本人でありながらも、
 アメリカに育ち後に在日米軍に属する国粋主義者で、仕事上の付き合いの相手は
 韓国人であり、そのまた相棒は在日3世、という・・・。
 かたや本書の主要人物は、1作目こそ主人公が日本人であったものの、
 2作目で中心となるのはポル・ポト政権下の収容所から脱出してきた
 カンボジアの難民−在日インドシナ系移民であり、その主人公を革命へと導く役目の
 子供がこれまた北朝鮮からの密入国者。おー・・・。
 本書の主人公の選別に関してはかなり驚きました。在日のインドシナ系移民という
 設定は、マイノリティの中の更に少数派です。(この選択にも一連のシリーズの主題に
 関連するものがあるんだろうな・・)今のエンタメ系の小説でそんな選択にはなかなか
 お目にかかれないものです。しかも日本人の作家なのに。
 そこが非常に興味深いと思いました。

 本書では、主人公によって国を捨てた、もはや祖国を持たない者の心情が
 吐露されます。同時に属する国でのマイノリティの存在の不安定さも。
 くどいようですが私がこの作家に興味を持ったのはまさにこの主題を扱っていることに
 あるのです。そしてあともう一つの主題について。
 ここでこのシリーズが何故「革命シリーズ」と銘打たれているかについて触れますと、
 前述にも出てきた物語の発端になる人物が、この国(設定上日本)に存在する
 少数派の手により起こす「革命」によって、新しい概念の国(?あるいはその概念を
 持った集合体か?民族を超えた新しい連帯の概念!?ぬおー自分で言ってて
 わからんちん!)を作る!という筋で物語が進行していくからそういうシリーズ名に
 なったわけです。
 で、この人物は自分も祖国を持たない人間なのです。この辺の事情はPBでちょっと
 ほのめかされてはいます。(肝心なところは謎なんですけどね・・)
 この一連のシリーズでは祖国、国家、民族とはなんなのかってことがポイントに
 なってます。 (と思う)その上で「革命」の完成形を10年かかって追いかけて行くという。
 すごい試みだと思いませんか?
 1人の人間が考え出す新しい「国」のカタチってのが、どんなもんか・・・ってのが見所。
 あー・・非常に長くなりましたが以上のポイントが私的には追いかけるツボなんです。
 それではこのへんでそろそろ本題に・・(遅ぇっ)

 ★本書ですが。うーん、10巻で完結の物語にするなら、このお話で1冊使ってしまって
 よかったんだろうか・・と思ってしまった。いや、1巻も他の作品も読んでいる身としては
 色々面白かったけど、しかしこの巻で全体のお話が・・殆ど進んでいない!ような・・
 事件自体も今後にそうかかわってくるとは思えない・・・。以下ネタバレのため反転。
 まさかあの箱(ヤク)が今後の活動資金になるからこの事件書いたの・・?
 いやー資本は元々もってるのよねぇ・・。ん? 
 あと井口さんが花月殺しの犯人ってのも・・納得できるようでできひんような、
 微妙なところだ。なんつーか、いろんな事件にすごいおまけ感がただよっとる ・・


 鳩(←今回の主人公。人間です。鳥類ではありません)もサーシャが直接スカウト
 したんじゃないしなあ。しかしこのシリーズだけ読んでてPBの方とか読んでない人
 には、すみれちゃんの存在はちょっとワケわからんかも・・なんでこの子供はこんな
 すごい褒め称えられてるんでしょう・・と。
 いや実際鳩さんことあるごとに絶賛しすぎ。主人公に語らせることによって
 すみれちゃんのカリスマ性を出そうってのは少々表現として安易かしら。ふんむむむ。
 しかし今回はすみれちゃんが勧誘員となってたわけですが、今度は亮司が
 勧誘員になるのかしら。
 このままぐるぐるとハント合戦が繰り広げられていって、それで気付いたら
 人材調達しただけであら10巻に、なーんてことになったらどうしよう・・ぶるり。
 あと一言。亮司。キミ服装変だよ。なんかちょっとギリギリだよ。
 チョーカーなんかすんなっちゅーの!ウエストシェイプのジャケット・・・うう・・。

 ↑うーん、これではぜんぜん紹介になってないな・・めっさ既読者向け。あわわ。
 前置きであんだけ読め読めと匂わせておきながら、歯切れの悪いガイドで
 すんまへん・・。本書に関してはどうもそうなっちゃうみたい。
 しかし、著者の文章は本当に読みやすくって、難しい問題を扱っているのに
 この読み易さはただごとじゃないわ・・といつも思います。
 (多分同じようなネタを高村薫が書いてたらもっと読むのに時間かかりそう・・)
 文体が軽い、というわけではないんですよ。
 じゃあなんでやといわれると説明しづらいのですが・・・
 どの作品でも随所で光る表現があって、それが頻繁に出てくるんですよね。
 この人のもつ文章センスは抜群にいいとおもいます。本書で言及するとすれば、
 110Pのあたりなんてすごく流れがいい。情景が綺麗に目に浮かびます。
 なんだか本書に関しては辛目の評価になってしまってますが、
 それでもやっぱおもしろいんですよ。この人の文章力によって。
 登場人物は相変わらず魅力的だし。
 まあ、期待が大きいので読み込んでしまってるからってのもあるんでしょうが。

 なんだかごちゃごちゃと書きましたが、とりあえず最近のエンターテイメント系の作家
 では一押しです。私は生まれて初めて文芸誌の雑誌掲載分まで追いかけてしまい
 ました・・。雑誌で読んでいたので、単行本の感想が遅れてしまったんですよね・・
 今度からはやっぱりぐっと我慢して本になるまで待つとしよう。
 (ああ、もし「やあ今まさにこの本を読み始めようとしたとこだよ」
 って方がいらっしゃるとしたら、PBの方を先に読んどくのもいいかもしれませぬ。)

 というわけで五條瑛作品入門編。くらいにはなったかな?なんねーか・・。
 
 「内なる異端。それが自分であり、それが永住外国人だ」
 86P




 「ハチミツとクローバー」2 羽海野チカ 集英社クイーンズコミックス    
 ISBN 4-08-865080-8  本体価格400円 

  ・・・・ああっ・・どうしてこんなに絵がかわいいんだっ・・!
 今まで俺のマンガ史の中で「この絵があれば飯が3杯食える」って作家は
 西村しのぶ女史くらい(あと吉野朔実も)だったのだが、この人の絵は本当
 久々に先人に肩を並べたよ・・!もうもうかわいすぎる。
 はぐちゃんめっさかわええ。超愛玩物。つかこの人絵うまい!骨格とか。
 人体の書き分けがすばらしいっ。
 勿論お話のほうも面白いぞう。なんちゅーか青春群像・・(うわこの単語・・!)
 美大生が下宿に集って繰り広げる青春恋愛模様・・(←うわっこの単語パート2)
 やーほんとねえ、じんとくるぜ。今回鉄人山田あゆがもーせつねえせつねえ。
 いや真山くんも切ないんだけどね。おっちゃんは電車ん中で読んでて涙に暮れたぞよ。
 あとはぐちゃんはどっちとくっつくのかなぁって言ったらやっぱ森田さん
 なんだろうけどね・・。こっちも行く末が楽しみ。
 いやあ、ひさびさに注目株な作品。(ジョージ朝倉はまた作風違うしね)
 わらかすとこも読ますとこもきっちりおさえてて、とてもこれがデビュー作とは・・
 (ダ・ヴィンチで紹介されてましたね)
 いやはや素晴らしい。もー俺的ツボにじゃ、じゃすとみーと・・。たまりまへんなあ。

 しかしこれ、掲載誌が3回くらい変わってるのでは?だって最初CUTIE
 かなんかでやってたよね?私1巻CUTIEコミックスで持ってるもの。
 今YOUNGYOUかなんかでやってるのか?そこで何が残念かと言えば、
 このクイーンズコミックってもう創刊時からデザインがよくないんだよね・・。
 だからCUTIEの方で出しつづけて欲しかったなぁ・・せっかくセンスいい
 絵なのに。そこがちと残念。でもつづいてるだけいいか。

 ちうことで星3つ。読んでよんでーもうめちゃめちゃかわいいから! 
 つうか今月マンガ率高い・・・?

 2002.08.19



 「弟の家には本棚がない」 吉野朔実 本の雑誌社 ISBN 4-86011-012-9  
 本体価格1300円

  この本5月に出てたんですってね・・・俺としたことが!
 何で気付かんかったんやぁー!
 地方出版社扱いだからか。ところでこのシリーズ、角川から文庫でも出始めましたが、
 わたしは断然ハードの方をオススメします。これはこっちで読むべき。
 洗練されたつくりです。 うっとり。

 このシリーズは「本の雑誌」誌上にて、吉野さんがテーマごとに本について
 マンガで語るもの。
 いつも新刊で出ると、ここで紹介された本ばっかり読みたくなるんですよね・・。
 次月のここのラインナップも影響を受けそうな予感。
 とても楽しい本です。取り上げる作品もさすが吉野さん、一筋縄ではいかないものが
 多い。 (でもメジャーなものも勿論あります)
 通常であれば目を向けない本に出会えます。
 そして小学校からの吉野作品読者であるわたしにとっては、彼女がどんな本を読んで
 なにを感じたかということにはすごく興味があります。ですので2重にたのしい〜v
 カラーも独特の、絵本のような感じでそれ見るだけでも満足できると思います。
 ああ、いい本だわ。

 ちなみに今回のラインナップで、私が興味を引かれたのは・・

 「短歌パラダイス」 小林恭二
 「幻の植物を追って」 荻巣樹徳
 「蜂蜜・余生」 中勘助
 「ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で」 ジョン・M・マクレガー
 「背く子」 大道珠貴

 といったところでしょうか。

 最後に、彼女が中勘助について語っている部分を抜粋。とてもいい・・文章でした。

 これらの苦難を、慈愛を、悲しみを、財産にして書かれたものは、ですから、
 何時、何処で、何故、誰に向けて書かれたかを知るほどに味わい深く、
 その静謐さには胸をうたれるばかりです。
 まして、真に美しいものを見る人の奈落のごとき暗闇は、
 私などの伺い知るべくもありません。 

 48P



 
2002.08.28




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