読書日記 2002年6月 さーて、先月の反省をいかして今月はたくさんUPしたいと思いましゅ・・ |
「おにいさまへ…」(1) 池田理代子 中公コミック文庫 ISBN4-12-204033-7 マ 本体価格571円 どうも最近青年誌系かめっちゃ古いのしか読んでいないような・・・ 気のせいかちら。でも昔の漫画はすごいなあ。あらゆる意味で。 このお話は、とりたててなんの取り柄もない(でたっお約束その1)普通の女の子が、 ハイソな女子高に入学したら、そこにはなんか訳のわからん社交クラブ みたいなのんがあって、新入生限定10名の候補にいきなり選ばれるという。 「ど・・どうして私がっ・・こんなことって・・信じられない」(でたお約束その2) で、選ばれなかったクラスメイトからの矢のような中傷、いやがらせ(お約束その3) の数々。その渦中で彼女は美しい上級生のおねえさま方の愛憎劇に 巻き込まれていくのだった・・・ (「おねえさまがた」ってとこが定石からはずれとるが・・) で、なにがすごいってこのおねえさまが達が・・ 「右大将・薫の君」とか「宮様」とか。どんな高校生やねん。しかし極めつけは 「花のサン・ジュスト」様でしょうか。とにかく彼女はすごい。 何故かギターもって各教室を回りリサイタル・・。流しのギター弾きか。(古) そして飛び交う声援。 「きゃーーー麗しのサンジュスト様ぁ!」わからんがな。 なんだか知らんがやったら影がある。なんかニヒル。ようわからん。 んで、やったら主人公にまとわりつく孤独なお嬢様ってのもいて、 この人が友達いないもんだから、異様に彼女に執着するのであった。 その子のうちに呼ばれて、一緒に風呂はいったらやたらくっつかれるし、 なんかコワ・・と思って帰ろうとしたら髪の毛掴んで 「帰ったら殺すわよ!」って言うし。(そん時の顔が怖い。高階良子の 江戸川乱歩原作のマンガに出てくる悪役みたいな顔。・・ごめん、わかりにくかったか) 「いやぁぁぁ」ゆうて飛んで帰ってましたわ。そら帰るわな・・。 そう、主人公を取り囲む登場人物はかようにして濃ゆい。 例えるなら家庭科の実習でガーゼで搾り出した林檎の果汁なみ。 (あの、泡立ってるやつね) なんだかドロドロした背景を抱えて2巻に続く・・のであった。待て、次号! 2002.06.03 「眉雨」 木犀の日〜古井由吉自選短篇集〜より 古井由吉 講談社文芸文庫 ISBN4-06-197603-6 本体価格980円 私は短篇集を順序どおりに読まず、タイトルで興味をひかれた順から読むという 邪道読みをよくするわけなのだが、それに従った結果、この「眉雨」が 最初の完読作品となった。 さて読み終えて・・少なくとも今の時点で、私にこの作品を評する、 語ることはできない。私自身の読み手としての力がそこまで達していない・・ と痛感させられた。勿論世の中には手ごわい作品なんていくらでも存在するわけ だが、こういうもどかしい思いをさせられることがイコールその作品世界・作家に 惹かれているという証拠であるわけで。・・結局のところ課題作家になってしまった。 (ていうか眉雨にいたってはあらすじも説明しにくいぜ・・っ) 内向の世代の旗頭と呼ばれている作家であるらしいが、 なるほど内面吐露を延々と。えんえ〜んと。 普通なら読んでると鬱陶しいのかもしれないが、なぜかそうならず かえって引き込まれるのはこの圧倒的な文体のせいか。散文的な・・ とにかくまさに文学の粋ともいえるような文章だが、なんというか・・官能的な匂いが。 気のせい?いや、気のせいじゃないな。なんつうか淫靡ですらあるな。 しかしまあ、今の時点でこの作家に出会えてよかった。遅くはあるのだが、 間に合えたとも言える。この手の出会いは大切にせねばならない。 読書というものもある種の運に左右されるものであるからして・・・。 印象深い一文があり、是非引用したいのだが、講談社さん最近、 規制が厳しいようで引用ダメっぽいかも。ですのでやはり一読してご確認あれ。 ああ、でも本当にわくわくしてるのですよ。この作家の世界との邂逅に。 2002.06.14 「残照」 ブラディドール7 北方謙三 角川文庫 ISBN4-04-161212-8 本体価格480円 ※注:シリーズ前回に引き続き書評じゃなくて単なる叫びです。※ ボファッ・・(←衝撃のシーンで私の魂の抜けた音) ・・・・はは・・・とうとう・・ そうか・・・ううっ。 あ〜滝のような涙がぁ。ひ〜ん。 でも奴は立派だったよ・・あの世のアイツに乾杯・・。がくっ。 以下怒涛のネタバレ。 あーーーーまさか全10巻のココで叶さんが崩御されるとは。 ひどすぎる。 でも、N市で最後の幕が下ろせてよかったって言ってたしね・・。(涙) でもあたしゃ寂しいよ叶さん・・。だってまだちょっとしか出てないじゃないか。 あああぁぁ・・。がっくり。キドニーも寂しいよきっと・・。 残されたのは金魚のみ、とは。 さ、気を取り直して。 今回の語り手は下村さんという人。 自分とこからいなくなった女追っかけるために会社辞めてます。 その気合コワ。しかもちょっとおかしいねんけどこの人。 BDのホステスにいきなり初対面で「今夜、俺に抱かれる気はねえか」 って・・ねえよ。頭わいとんのか。 かと思えば恋敵の医者んとこに押しかけて、最初相手にされないので、 やることないのか毎日スコップで穴掘ったり埋めたり。しかもパンと牛乳持参。 (ランニングシャツとかでやってたんちゃうか・・) ですので私物語の3分の2くらいはこの人の脳内イメージ 「パンと牛乳を好んで食す土方の人」ってイメージしかありませんでした。 しかし最後らへんになるとなんだかかっこよく見えてきたわ。ちょっとだけど。 この人どうもブラディドールの従業員になるようなので、今後の活躍に 期待することにしましょう。 この本を貸してくださってるIさんも、(Iさんは下村好きのようで) 「は・・8巻からタダの土方の人じゃなくなるんです!」って言ってたしな。 そして最後にプチつっこみ。 1.キドニー、お昼おごるって・・「きつねうどん」かい! 2002.06.18 「蛇男」〜下水道 他12編より〜 角田 喜久雄 春陽文庫 ISBN 4-394-38701-9 本体価格680円 片足のない女との情事を楽しむ男の隣に、知らぬ間にいるはずのない隣人が 越してきているようだ。隣から漂う名状しがたい悪臭、隙間からかいま見える 青白い物体、音のない動物の悲鳴・・ 正体の知れない(人間かもわからない)存在に怯える男はある決断をしたが・・ この作品はなんと言っても雰囲気作りのうまさが際立っているかと。 陰鬱な、じめ〜っとしたかんじが、梅雨の時期に読むとなおいっそう・・くくっ。 そして謎がすっきりと解明されないまま訪れる意外なラスト。 「えっ!?」という感じです。 たった15ページの掌編ですが、名編かと思われます。 なんともいえない読後感ですな。 不気味な。 同時期の作家は江戸川乱歩、大下宇陀児(おおしたうだる)など。この頃の探偵小説 ・怪奇幻想小説の書き手の作家の名前って、聞いただけで読む気をそそるなぁ。 久生十蘭(ひさおじゅうらん)とかね。私だけ?小栗虫太郎とか。 2002.06.27 「偶然の音楽」 ポール・オースター 柴田 元幸/訳 新潮文庫 ISBN4-10-245106-4 本体価格590円 読後→ ふーーーむ・・・。うーーんんむむ・・。そうか・・そうきたか・・。 あれだ、(ってどれだ)この作家は私にとっては 「ぎゃっこれめっちゃ好きぃ!!」ってタイプではなく、じわじわと後から来るタイプ、 熱狂的に追っかける作家ではないけど、「とりあえず読んでおきたい、なんとはなしに 読んじゃうぞ。そんでもって後を引く」って位置にカテゴライズされました。 文体は好き。 (っていっても翻訳されてるわけだからこういう言い方は適当ではないのか) なんつーか細部がいちいちうまい作家だなあと。一つ一つのエピソードがいい。 プラザホテルでルソーの「告白」のくだりを思い出しながらやがて寝入っちゃうとことか すごく好きだったなぁ。なんでか。不思議と気取ってる感じがしないの。 主人公ナッシュと、旅の途中で拾った相方ポッツイとの関係がツボ。 2人の会話がテンポよくってすいすい読めた。 ポッツィがねーかわいい。バスローブで元老院ごっことかね・・! でもポーカーの腕は良しってとこがまた。 ナッシュが出来心で拾ったこの子にすごく心を動かされていく過程が 読んでてハッとしたなぁ。そっか。負け犬の擁護者か君。 2人を待ち受ける結末は、ある部分読者に委ねられてる部分があって、 それが切ない・・。これ、けして全体でハッピーな話ではないんだけど、 人から「おもしろかった?」って聞かれたら素直に「うんっ」て言えるなぁ。 一気読みしたし。 あれ?なんだかんだいってかなり気にいってんちゃうかなぁ。むむぅ。 読後にふと、タイトルがしっくりと降りてきたようなかんじがあって・・なんか切ないような 心持ちと共に。それがなかなかない気分だったので、ちょっと戸惑った、 そのときの気持ちがそのままオースターという作家を、特殊な場所に 位置付けてしまったのかもしれません。 「・・・・・やがていつの日か何もかもにほとほとうんざりして彼はたった一枚のカードの 偶然の出方にすべてを賭ける・・・・」 295P 2002.06.29 「おにいさまへ…」2 池田 理代子 中公文庫 ISBN 4-12-204048-5 マ 本体価格533円 ・・なんだか2巻は1巻にまして深刻だ。ちょっと詰め込みすぎの感もあるが、 なかなか面白く読めました。にしてもこれTVアニメで大人気・って 帯に書いてあるけど、ほんまかいな・・。子供には濃すぎるぜこの百合世界。 ま、でも昔の漫画は大映製作ドラマっぽくていい。こういうなんだか大げさなのって 好きよ。ショック受けるとむやみやたらにポーズ!みたいな。 それにしても宮様ははじけてたなぁ・・ ソロリティ(特権階級サロンみたいな。サロンて。)が解散の危機に追い込まれたとき 宮様「やってみるがいいわ劣等人種!」「この私生児!」とかぼろぼろピー音単語 を連発。すげー。お、お嬢様はこうでなくては。 ラストはしんみりと。こんだけ濃い話を2巻にまとめてしまうという力技。 おなか一杯になる作品と申せましょう。げふ。 (しかしサン・ジュスト様=オスカル 薫の君=アンドレのイメージが消えん・・) 2002.06.30 |