読書日記 2002年4月 さあて、今月から漫画の読書記録には目印つけます。「マ」って。そのまんまやがな。 |
「肉迫」ブラディ・ドール3 北方謙三 角川文庫 ISBN 4-04-161208-X 本体価格500円 地方都市N市。『ブラディ・ドール』に集うさまざまな男達の物語。 いや、がっちがちの鉄板ハードボイルドです。ブラディ・ドールのオーナー(社長)川中を 取り巻く魅力的な男達のね・・・「喪失」を描いた物語。全10巻。 さて私は北方氏の著作、このシリーズが初読だったと思うんですよね確か。 実は1〜2巻は読んだことありまして。もう大分前(4年位前?)なのですっかり伏線とか 登場人物とか忘れとりましたが、なぜ今になって続きを?それは何故かと申しますと、 仕事相手の会社の方がこの本もってらっしゃって、とある切欠で貸してくださることに なったんですよ。(確かカクテルの話が出てたとき?かな?・・作中にね、お酒が効果的に 出てくるんですよ。それがなかなか雰囲気あってよし。) そのときちょうど通勤用の文庫本切れてたんで、ちょうどいいかなと。 すっかり忘れてた私に、その方は大体の流れを軽く電話口で説明してくださいまして (仕事しろってか)なんとなーく思い出せたさ。んでトライ。 いやぁ、通勤中にこれを読んでたわけですよ。くどいようですが。 んで、勤務地最寄駅についた頃にはすっかりニヒルな俺になっちゃってるわけですわ。 こう、背中も煤けたかんじでね。ないトレンチコートの襟も立っているような感じですよ。 しまいにゃなぜか手にはバーボン・ロック、あるいはシェイクしたドライ・マティニが あるわけですよ(どこ歩いてんだ)。なおかつ席についても制服のシャツの襟が 意味もなく立つ始末ですよ。ハードボイルドなわけですよ。はぁ〜 そんでもって台詞がっ!くさいっ!かぁ〜てなもんや三度傘ってかんじだよ。 なんか違うか。いや、凄くてねとにかく。なんて粋な会話だよ。ある意味SFだよ。 「それでも乾杯しようじゃないか。海にとか、風にとか、冬の寒さにとか」263P とかね!こんなん周りのオッサンが言ったらどうよ? 口におがくず詰めたりますよ即座に。 でもねえ、この作品の恐ろしいところは段々それがくせになって き出すところと言うか・・ていうかイキオイ「北方アニィ・・自分ついてきやす!」 って絶叫気味になるところというか。 兄貴の世界はね、紛いもんじゃないんですよね。どうやら。 美学もここまでくると許せるというか。 もうすっかり北方色・・アニキ色に染まるんですよね。あわわ。 恐ろしい力ですよ。出勤前の美人OLをアニキ色に。超アニキ。(段々訳わからん・・) ど・どうりで最近やけにニヒルだねっていわれると思ったよ。そのせいかぁ〜納得ぅ! いやでもね、私的に気になるのは藤木さんとキドニーですよ。粗筋忘れた私のための Iさん講座によると、藤木さんはなんかやバイことして逃げてきたヤクザで、 死のうとしたんだけど川中に助けられて、結局忠誠を誓い尽くしてるっていう人らしい。 (んでキドニーはなんか私的に引っかかるのよね。私の好きそーな。) でもこの作品、男も女も魅力的だと思うので、色々楽しみです。 まあでも藤木さんですよ。いかにも私が好きそうな登場人物・・・ お・追っかけてもいいかねおじさんが・・おじさんそういう人好きなんだ。 さて、このシリーズ今後まったりと、電車でニヒルな私が10巻まで読む 予定でございます。 何でも、容赦なく登場人物がばたばたと死んでくとか。ええーあの人やあの人は? ちうことでさくっと4巻へ。続きますぜアニキ・・・ 「よせよ。そうなると、大抵死ぬぜ」 291P 2002.04.02 「金髪の草原」 大島弓子 朝日ソノラマ ISBN 4-257-90420-8 本体価格848円 マ 私は特に大島さんの著作を収集しているわけではないし、 代表作(「綿の国星」など)もまだ未読だ。 けど、色んな短編集をふと買ってみたり、図書館で借りてみたりして読んで、 いつも「大島弓子ってすごいなあ」と思ってしまう。特に設定が派手なお話作り をしているわけではないのに、一つ一つのお話を、驚くほど記憶してたりするんだ。 我ながら不思議なくらいです。 この短編集に収録されているお話はどれも好きです。 特にお気に入りなのは表題作と「水枕羽枕」「ダリアの帯」。読書日記なのに あらすじを紹介しないとはこれいかに。いいんだ、彼女の作品は あらすじ羅列したってあんまり意味なし。ただ読んで下さいとしか言えない。 大島さんのお話って、ほんわりしているように見せて、その実かなり こわい人間を描いてるというか、人の悪意の書き方なんかすごいな。 でもってこの感性・・・!心象部分とか・・こういうことを言うのは僭越なんだが、 彼女の作品は、この人にしか描けない、ってのが確たるものとしてあるというのが すごいなあと思う。(いやこれがなかなかないことだと思うのですよ。 この人の代わりはいない!ってのが)そんなことはもう周知って感じですが。 いや、ほんと私は24年組時代の作家さんが好きなようだ・・ ああ、いずれ我が家の本棚に大島棚が出来そうな予感がひしひしと・・ 24年組棚がまた増えていく・・・。 2002.04.10 「読んだはしからすぐ腐る!」 松尾 スズキ/ 河井 克夫 実業之日本社 ISBN4-408-61211-1 本体価格1,300円 松尾ズスキと漫画家・河井克夫の共著。私は河井氏の作品は未読だが、 そこかしこにツボな表現があるので、今度読んでみようと思っている。 (しかしタモリ倶楽部に出てるあたり・・) さて、松尾スズキは今どのくらいの知名度なのだろう。 私が知り始めた頃からしたら、全然ビッグになったなぁ。「えんぶ」 (「演劇ぶっく」のこと)とかではもうメジャーだったけど、アレは一般的な媒体とは 言いがたいし・・。もういいともにも出たし、奥菜恵主演で舞台とかしたものなぁ。 弟子のクドカンなんてめちゃくちゃ出世してるし。 (「GO」とか「木更津キャッツアイ」とかの脚本はかれだったよな) 松尾氏は非常にメジャーには出しにくいテーマを扱っている「大人計画」という劇団の 主催者・演出家(兼役者)であるわけですが、大人計画の芝居は面白いです。 (下品でグロですが)役者としての松尾氏も、個人的には非常に好きです。 なんていうのかな・・大袈裟でなく、「静かな狂気」というんでしょうか、そういうのが 漂ってました。この人はちょっと方向違ったら、本当に狂っちゃうんじゃないかなって。 そう思わせるようなね。 で、お芝居だけでなく注目なのが松尾氏の笑いのセンス・言語感覚でして。 本書(ちなみに内容は周辺雑記)でも十分そのセンスは発揮されているわけですが、 私が松尾氏のエッセンス凝縮の1冊としてオススメしたいのは 「星の遠さ 寿命の長さ〜大人計画全仕事〜」・太田出版 です。 大人計画の近年までの主要舞台レビューとかも必見ですが、なにより彼の年譜みたいな・・ 彼の歴史がね、面白い。「うわぁ〜」ってかんじで。鶴見済との対談もあって、濃すぎです。 帯の「生まれ変わりませんように」って言う言葉がね・・彼らしい。 私の友人にも「生まれ変わったら虫になりたい」って言ってる子いますが。 ちなみに本書の中で、彼がトップランナーに出たときのことが詳細に書かれてまして、 それも面白かったです。彼がどれだけ益子直美が好きなのかがよく分かって・・ね。 いやほんと、彼の表現ってすごいですよ。 どんな感覚してるの?ってかんじで。 それにしてもこの人、自分でも言ってるけど、舞台やってなかったらえらいことになってた やろうな・・ この人の文章がツボだって言う人とは、かなりお友達になりたい感じです私。いらんてか。 2002.04.15 「瀕死のエッセイスト」 しりあがり寿 ソフトマジック ISBN4-921181-44-6 マ 本体価格1600円 あぁ。深い。深すぎる・・・・。死について。 思えば「流星課長」もこの人から生まれたんだった。 ああ・・深いよ。「ごめんね」「死体漫才」のあたりが書けるのってすごいなあ。圧巻。 「母と海に」とか・・・・あー。これ読んでみてくれないかなあ。誰か。 2002.04.17 「ガラスの仮面の告白」 姫野 カオルコ 角川文庫 ISBN 4-04-183501-1 本体価格379円 私はこの人の作品を高校1年くらいのときに初めて読んだ。「変奏曲」という作品だったが。 なんだかその当時すごく気に入ってた覚えがある。 明確には記されないが故のエロチシズムによって。 が、それ以降他の作品を読んでいなかったのは、タイトルのせいだろうか。 「ブスのくせに」「みんな、どうして結婚してゆくのだろう」 なんてタイトルでは食指が動かぬというものだ。美容院の女性誌の感性だ、そのタイトルは。 そして久々に手にとった著者の本。 今作は古本屋にて100円でたまたま購入した。薄かったからちょうどいいと思って。 ペラペラとめくると字もそんなに詰まっていない。 普段、ぎっちり詰まったタイプの本を読んでいると、たまに息抜きで軽いエッセイなどを 読みたくなるので(ふと思い出したが、昔の花井愛子氏の本は すごかったなぁ・・)ますますちょうどいいと思った。はい。ご購入。 ・・なーんて軽い気持ちで読んだ割には、実は面白かった。なんつーか、思わぬ拾い物を した気分だ。軽く書いてはいるが、これ思いっきりご自分のこと、なのですね。 自分のことだけ(!)かいて、これだけ面白く書けるってのは、冷静な目を持ってないと 出来ないことだ。そういう人の書く文章は面白い。自己陶酔だけでないという。 「ラグリマ」の章なんて唸ってしまったわ。 彼女は作中で、「屈折」の精神構造を探ることがSMだと思っている、と書いているが、 (団鬼六賞をとってデビューしていたとは知らなかったぞ・・)なるほど。 サドマゾのテーマは奥深い。これは一回彼女の初期のSM小説を読むべきか。 調べたら出てきました、「令嬢嬲り」。読んでみようかな・・ ところでこの作品、タイトルからして想像つきますが、章立てもいろんな名作少女漫画 の書名をつけてます。全部分からなかったのが悔しい。「チチチとまた呼ぶ呪いの顔」 が古賀新一なんて・・わかるかぁっ!初出昭和42年・・そらわからんわ・・ で、内容にそったタイトルをつけてるらしいので、ちょっとそういう目線で 再読しようと思ってます。 はい。 いやしかし、姫野カオルコさんは面白いかも。改めて。 2002.04.23 「耳のこり」 ナンシー関 朝日新聞社出版局 ISBN4-02-257741-X 本体価格1000円 この人の文章は、「君にそこまで言われる筋合いはないだろう」と思わせられることも しばしばだし、たまにそれは筆が滑りすぎ、というか調子にのっとるか?と思われる表現も (何本かの連載で、重複する表現を見たりする。ニュアンスで、ということだが。) 気になることはある。 ・・・が、それをも補って余りあるほど、この人の分析力は、凄い。 とにかく驚嘆に値する明晰さだ。なんとなくかんじる違和感、というものをこうまで文章に 表すことができるとは、尋常ならざる観察眼だ。その能力を「TV」というフィールドに ほぼ限定しているのがこれまたすごい。普通は文芸時評で使おうというスケベ心がでても いいはずだが。いや、ほんと好きなんですね、TV。こう言いきって間違いないと思うんだが。 また観察眼の対象が時事的なもの、流動的なものであるのがなんか、深読みさせるなあ。 また文章も異様に面白い。笑いの感覚が研ぎ澄まされとるぜ、この人は。 (※ちなみに彼女は、マスコミ批評家?とでも位置付けたらいいのだろうか・・ 消しゴム版画家でもありますが。またこれがいいんだ。私は好き。) しかし本当に鋭い。この賢さはただ事ではないぞ・・・といっつも感服しきりなのですが、 それにしても、「このネタは絶対彼女が飛びつくであろう」 と個人的に思っていたネタが、余すことなく取り上げられているのが嬉しかった。 もう絶対に書くだろう!とおもっていた、稲垣吾郎の復帰ネタ。 あれは、あんなにあからさまでいいの?と思うほど、いろんなことを力技でねじ伏せた 復帰劇だった、と思われるのですが、どうでしょうか。あればっかりは、SMAPファンも おかしいと違和感を感じたと思っているのだがな・・・ 特に、木村拓哉のコメント。自分達のVTRをみて、 「ていうか、SMAPのファンになったね、改めて」といっていたことに関して 私は強烈な違和感を感じた。 (断っておくが、ここでSMAPを批判しようという意図は 全くない。ていうか私はむしろ彼らは好きなほうだ。) ただ、彼女もまたこの発言に関して違和感を覚えていたことに、ほっとしたのだ。 この本では特に、各章に「うんうん」と激しく頷くものがあったが、 特記すべきは松岡修造に関する文章だ。もはや、「松岡修造論」といってもいいだろう。 もう、彼に関して私が定義していた「笑い」に関するすべてを伝えきってくれた。 そうなんだよ、修造のあり方とは、こうなんだよ。 ああもうそれだけで、この本の感想をしめることができるよ・・ってそれもどうか。 2002.04.24 「モルディブ青い楽園」 三好 和義 小学館 ISBN4-09-394122-X 本体価格2200円 もう表題そのまんま、モルディブの写真集です。 だから今回書評というより、単に宣伝のようなものです。是非見てみてください〜 なぜかというと・・・この写真集の中の海が物凄く綺麗!なので。 いや、私はこの手の南の島の写真集というのが好きで、けっこうな数をみてるんですが、 中でもダントツに美しいかも。コンセプトで優れている写真集は他にもたくさんあるのですが、 この本では純粋に海が美しく、シンプルで、うっとりしちゃいます。 ていうか、通常の35倍(当社比)くらいモルディブに行きたくなる欲求がわいてきます。 もうたまらん。 あまりの透明度に、水面に浮かぶ小船の影がくっきりと水底に映ってるのがわかるの。 ひぇー・・そんな海に行きたいよう・・ 2002.04.25 「スカート」 榎本ナリコ 小学館 ISBN4-09-184814-1 本体価格876円 榎本ナリコという人は、「センチメントの季節」でもいわゆる一般的な男と女を 書いていなかったように思う。センチのシリーズでも、性的な描写は相当多いんだけど、 私の目には殆どがそういう意味合いでは全くいやらしく映らなかった。 だから余計気になった。これが男の目にはどう映っているのかが。 ぶっちゃけた話、これで興奮するかどうかってことなんだけど。 この人の作品の中での女の描き方ってのは、作中でその子が誰と何回寝ても 「女の子」という印象が拭えないままだ。(この場合の女の子の定義っていうのは、 なかなか難しいんだけど・・)どこか痛々しい。 セックスしても、「女」になれない女の子。そういうことを描いてくれるのって・・ ちょっと「おっ」、と思った。 すごくジェンダー的なものにこだわる人だなあと思った。社会が与えた 性的役割について、みたいな。私はこの人の作品をはじめてみたのが、 学生のとき男の子から回してもらって読んでたスピリッツでだったので、 余計「おぉー、こういう書きかたしてる人を青年誌に載せるかぁ」と、 ちと驚いたのを覚えている。 んで、今回の「スカート」。2人の男の子と1人の女の子の3角関係なんだけど、 一人の子はゲイで、女の子は自分が女であることをすんなり認められず、ゲイの子が好き、 で、残ったもう一人の男の子はノーマルに女の子のことが好きで、 ゲイの子に好かれてると。うぉー複雑・・。 で、やっぱりこの作品でも、与えられた性別に素直に属すことが出来ない女の子を 描いている。また、男の子も。 そのなかでただ一人、自分の性別を疑うことのない男の子は、やっぱりゲイの子の 気持ちにはこたえられず、女の子を普通に女として愛すことしか出来ない。 でも、それぞれの思いを抱える2人の心に敏感になることはできる。 「人に欲望を向けることがどんなことか 俺も ———— 知らなかった」 そんなことについて、普通に男と女やってたら、きっと考えもしないよ。 ただ心と心をくっつけるだけのキス、なんて。 ああ、ちょっと参ったって感じ。ラストも。 なんか、かなりいい作品でした。で、いっぱいいっぱい考えちゃったので、 感想がまとまらないんです。だからこんなぐるぐるしてるんです。うーん。 (しかしぐるぐるしてるのをUPしていいんだろうか・・あんま作品紹介になってないし・・) まあでも、綺麗にまとまらなくていいや。当分ぐるぐるしてようと思います。むむ。 多分みんな あまりに素直に 男や女なんだろう。 190P 2002.04.30 |