読書日記 2002年3月 今月は最初からいきなりへヴィです。ご容赦。さてここから何冊読めるかな? ↓ ・・結果UPできたのは8冊か。しかもジャンルバラバラだなあいつもながら。 |
「殺人者はそこにいる〜逃げ切れない狂気、非情の13事件〜」 新潮45編集部編 ISBN 4-10-123913-4 本体価格476円 「新潮45」誌上で掲載されていたノンフィクション集。 私は怖い話は平気で、むしろ好んでよく読む方なのだが、この手のノンフィクション は、どんなサイコミステリーやホラーよりも怖い。やっぱり事実は重い・・・。 どの章も比較的淡々と事件を描写しているので余計怖さが。 ここでは解説の岩井志麻子氏と同じく、各章の感想(?)など。 ■西宮「森安九段」刺殺事件 今から9年前の事件。当時は相当大きく取り上げられていたのでは。 著名な棋士の殺人事件は、その息子(当時中一)が最重要参考人だったらしい。 その捜査過程で少年法による規制があった為、未解決扱いになった。 少年は、事件が発覚したあと母親を刺して逃走しているが、わずか12〜13歳で 親に傷を負わせる心境って・・。事件当時の感情や記憶は今も当然消えることなく 残っているだろう。それを思うと・・頭の中が真っ暗になる。 そんな罪って重過ぎて、持ちつづけることが、耐えることが到底不可能な気がする。 ■井の頭公園バラバラ殺人事件 手足と胸部は27の塊に分けられて、ゴミ箱に捨てられていた。 すべての部分は血を一滴残らず抜かれ、20cmのサイズに切り揃えられ、 太さも均一にされていた。 そのサイズはゴミ箱の蓋のサイズちょうどだったという。 その事実を読むと「作業」という言葉が浮かんでくる。 怨恨といった感情の結果ではなく。 この事件はいまだに全く解決の糸口が見つからないそうだ。 何も分からないことが、周囲の残された人たちの時間を止めてしまっている。 「とにかく真実、本当のことが知りたい」という遺族の言葉・・辛い。 ■京都「主婦首なし」殺人事件 ・・ここまで物証があっても釈放されるものなのか。 元容疑者は現在夫婦円満に暮らしているらしいが、真犯人だとしたら、 他人の首を切ったことのある人間は普通に暮らしていけるものなのかな。 ■柴又「上智大生」殺人放火事件 全く恨みを買う覚えのなさそうな女の子が殺され、犯人はわからない。 分からないのは、何故犯罪に「時効」があるのかということ。 ある一定の時間がたてばなかったことになるのは何故だ。 21歳なんて、死んでいい年じゃない。 (上記4事件はすべて未解決事件) ■熊本「お礼参り」連続殺人事件 こういった実録もので一番読んでて憤りを感じるのは、やはり「逆恨み」による殺人 だろう。この章で紹介されている事件は、3件ともすべて無期懲役犯が仮出獄中に 犯した事件だ。 まとめると、無期懲役という刑は、終身刑という概念とイコールではない。 懲役10年を経過し、かつ行政官庁の処分によって認可が下りた場合、仮出獄が 許可される。(実は無期刑は有期刑と同じく矯正を目的としている向きがある) 申請の棄却率はなんと2%。殆どの無期懲役囚が簡単に仮出獄を果たし、 その期間の再犯率は50%を超える。 章中で例に挙げられているケースでは、無期囚が2度の仮出獄中に報復殺人を 犯している。無期囚は簡単に出て来る事ができるのだ! 「終身刑導入は、人間性の破壊につながるため、慎重に検討する必要がある」とは 司法側のコメントだが、実は私はこの手の考え方にはさっぱり賛同できない。 無期になるほどの罪を犯した人間の矯正に力を注いでどうするって言うんだろう? 殺された人は、もうそこで永遠に時間がとまってしまっているのに、殺した人間に そこから先の時間を有効に、人間らしく過ごす可能性を与えるのか? (この点については、少年法にも同じことが言えると思うのだが。) 日本の法律はおかしい点が多すぎると、常々思っているが、こういうものを読むとまた その考えを新たにしてしまう。それって全然「無期」じゃないだろう。 にしてもこの章は、心底恐ろしかった。 最もゾッとしたのは・・「手紙」のくだりだろうか。読んでもらえると分かると思うが。 しかし私は根っから「ハムラビ法典」の人間みたいだ。 ■名古屋「臨月妊婦」殺人事件 あまりにも有名な未解決事件。凄惨な事件なので概略は省く。(詳しくはこちら参照) この事件で赤ん坊は生き残った。そのことだけが救いだと思う。 赤ちゃんの深層意識に現場の情景が焼きついていないことを祈る。 現在、ハワイで暮らすこの子は母親がいない理由を全く知らないそうだ。 ■埼玉「富士銀行行員」顧客殺人事件 こんな人間が罪もない老夫婦を残忍に殺害することができる・・ことが恐ろしい。 でも誰でもその可能性は持っているんだろう。殺人を犯す可能性は万人に等しく あると思っている。 ■札幌「両親」強盗殺人事件 実の親を彼氏とともに滅多刺しにした挙句、車に積んで焼き払い、金を盗んで逃走 って・・どんな人間だったら可能なんだ?完璧に理解の範疇を超えている。 わからない。わからない。 ■葛飾「社長一家」無理心中事件 この章、タイトルは「『自殺実況テープ』の出してはいけない中身」というもの。 そう、この章は録音時間40分にわたる自殺の実況中継テープを起こした中身を 交えて構成されている。ぶっ続けで読んでいると・・本当にテープを実際に 聞いているような気がしてくる。ふと、昔TVで放映されていた・・あれは・・ そうだ、不倫相手の自宅に乗り込んで、自分でガソリンかぶって焼身自殺した女の 声が入ったテープ(「あついーっ」という声が延々と)を聞いたときと同じ恐怖だ。 無理心中なんて最低だ。殺された母娘はさぞかし無念だっただろう。 生きていれば、なんとかやり直しが効くのに。 しかし、このテープに入っていたという「ゴーッ」という轟音は・・ 一体なんだったんだろう。 ■つくば「エリート医師」母子殺人事件 まだ記憶に新しいこの事件、渦中の犯人がこんな男だったとは。 女癖悪すぎるぞ。そんなディテールまで知らなかったので吃驚した。 しかしなにが怖いって・・最後のとこで記されているある事実が・・ 殺人現場になった家には、同僚の独身男性3人が共同で住んでいる、とのこと。 なにがあったかはそりゃ知ってるだろう・・普通住むか? ■札幌「社長令息」誘拐殺人事件 これこそ記憶に新しい事件。現在(平成14年3月)から約一年前に無罪判決が 下されたこの事件は、その判決理由が訳のわからないものだったという印象が あった。 なんと「殺意を立証できないから」という理由。なんだそれは? 被害者を死に至らしめた経過は殆ど認められているのに、時効の問題が絡んできた ためこんな結果になったらしい。(詳しくはこちら) なんというか・・・納得できない事件という印象ばかりが強く。 ■世田谷「青学大生」殺人事件 こんなアホなカップルがターゲットにした人間の、たまたま隣に住んでいたというだけで 殺された被害者は死んでも死にきれなかっただろう。 もうなんともいえない・・。 ■広島「タクシー運転手」連続四人殺人事件 「自分の人生は本当はこんなはずじゃなかった・・」と思いつづけ生活することは、 本来自分が理想とする姿に近づけたかもしれない可能性を遠ざけ続ける。 その輪にはまると一生ぐるぐる回ったまま、元のところには戻れなくなる。 人を殺す、殺される事象というのは本当に簡単に、日常の中に存在し得るものだ。 2002.03.02 「栞と紙魚子の生首事件」 諸星大二郎 朝日ソノラマ ISBN 4-257-90280-9 本体価格757円 栞と紙魚子(しみこ!)の女子高生コンビが、胃の頭町にて遭遇する怪異な 事件の数々・・といって間違いではないのだが、恐ろしげな表紙に反して、 なんともいえないユーモラスな作品。 実はこの本が私のファースト大二郎(笑)。何しろ巨匠なので、お名前だけは 存じ上げていたものの、読む機会は全くなく・・んで、何でこの本を手にとったか というと、タイトルが・・・だって紙魚子だよ!?「しみこ」って・・・なんすかそりゃ! という動機。 それでこの本を買ってしまう私もどうかと思うが、なぜか「この賭けには必ず勝つ」 (BYサーシャ)という根拠のない自信が。で結果・・勝ったさ! もう表題作からしてどこからつっこんでいいやら・・ 捨ててある生首拾うなよ!そして水槽で飼うなよ!挙句の果てには名前まで つけたな? そして川に逃がしてあげるんだよ。 「流れ去る前にこちらを振り向いて、別れを告げたような気がしました」 だって。 もうなんて言っていいかな、この2人のやり取りがおかしくって! ほんとに、この妙味は出そうったって容易に出せるもんじゃあ・・さすが巨匠・ 諸星先生だす。わては参りました。脱帽。爆笑。 気になるのは近所のホラー作家段先生の一家。クトルーちゃんって・・クトゥルーか・・ お母さん外人って言ってるけど、ほんとに「外の人」なんだなそれは・・ この一家すげえ面白いんですけど。どうやらレギュラーになるらしいのでうれしひ。 いやあ、世の中にはまだまだ私の知らない面白い本がたくさんあるんですね・・ 2002.03.10 「骨と沈黙」 レジナルド・ヒル 早川書房 ISBN4-15-1701510-6 本体718円 なるほど英国の作家!だなあ・・というのが最初の印象。まず気に入ったのが 著者のユーモアセンスでしょう。もう英国ミステリとは切っても切り離せないのが ユーモアというものですが、作中では「ニヤリ」とほくそえむ・・程度のものではなく 思わず「ぶはっ」と吹き出してしまうような表現の数々が。そして表現の妙とあいまって 作品を引き立てるのはやはりキャラクターの魅力。 粗野極まりなくかつパワフルなおでぶ警視ダルジール(笑)と、 ハンサムで良識派の部下パスコー主任警部、心で嵐のつっこみウィールド部長刑事 との三者三様の様子が。からみが。おもしろくてねえ・・。キャラがほんと生きてると思う のです。 で、物語の主筋ですが・・重層的な構造をもっています。メインプロットは警視自身が 現場を目撃した殺人事件の捜査、同時に警視の元に届けられる自殺予告とも 言うべき謎の女性からの手紙。それに平行して町の有志が集まり聖史劇を演じる エピソードが進行。これらが最後にはすべて集約され、謎が明かされます。 各章冒頭に配されたウルフの引用と、聖史劇の引用が全体的に見ると大きな意味を もっていて、読後改めて振り返るとその配置にまた唸らされます。 (以下、大丈夫かな・・?と思いつつネタバレ注意) この作品では、ダルジールを劇中の神に配置した事にかなり大きな意味を もたせています。この事件は、重層的構造をもっているわけですが、全編を通して 貫かれ、提示されているのは一人の絶望した女性—黒婦人—の神に対する嘆き なのだと思うのですが(そうして、主筋のプロットはむしろその隠された主題の枝葉 なのでしょう。)、これは・・かなり解釈が深くなると思います。 キリスト教に帰依してる方はもっと深読みできるのでは。 著者はかなりの部分の解釈を、読み手に委ねています。ある意味命題ですね。 この作品で深いなぁ、と思ったのは、神になぞらえられたダルジールが、まったく (色んな意味で)黒婦人を救えなかったこと。かつ注意も払わなかったことでしょうか。 色々と・・深い作品です。単にミステリーとしての楽しみだけでなく。 しかし、実は納得できない部分もあります。 (ネタバレなので以下反転。) まず、なんといっても最初殺害されてた女性のすり替えでしょうか。 これは・・かなりの無理があります。いくらなんでも最初の検死で、身体的特徴で ばれるでしょう。リアリティに欠けます。はっきりと。ここが非常に読んでて引っかかり ました。そしてこれは納得いかないというのか・・アイリーンの死に至る程の絶望が・・ どの箇所で読み取れるのかな?と。これはもっと私が読み込まないといけないのか。 それともこれは、あの各章の手紙の引用からずべてを読み取らないといけないのかな? にしても、私は黒夫人はてっきりホーンカースル夫人やと思ってましたよ。ハズレた・・ ああでもこれやっぱシリーズ追って読むべきやったかな。 だって前作もアイリーンでてるやんか・・ まあ、そんな部分を含めても、非常におもしろい作品でした。欠点に目をつぶらせて かつグイグイと読ませ、なんともいえない余韻を残します。そして文章の魅力! 品がよく、部分部分で軽くはずしても、きっちり重厚にまとめあげる手腕とでもいうの でしょうか。脱帽です。表層的でなく、キャラがはっきりと生きているのがね・・ 読み応えがあって。 なんか嬉しくなるんです。この著者の感性が。 これは再読して楽しむ作品でもあると思います。 おそらく一読ごとに自分に引っかかる部分が変わってくるような性質の作品でしょう。 ときには案外つまらない、と思うかも。 でもまた再読したときには違った意味をもって迫ってくるような。 是非ご一読を。 ・・・ぼくらは単にボタンのついた布切れで軽く覆われているにすぎず、こういう舗道の 下には、貝殻と、骨と沈黙が横たわっているのだ ヴァージニア・ウルフ「波」 2002.03.15 「日本のみなさんさようなら」 リリー・フランキー 文春文庫PLUS ISBN 4-16-766036-9 本体価格733円 洋画のみ、または洋画メインでちょっとだけ邦画って映画評の本は 結構あるけど、これは鉄板で邦画メイン。やるやんか。 イラストレーター&コメンテーターのリリー・フランキー著です。 この人のイラストはねえ・・いい。私は大好きなのですわ。 (参考こちら→http://www.lilyfranky.com/ こんなかんじの絵です。 それにしてもいつまで工事中なんだ!)なんとレビューが173点。 普通にレンタルできるもの、出来ないもの、古いもの、新しいものとりまぜて。 着眼点が面白い。鋭い。この本の一番の魅力・貢献が何かっていうと、ほんとに のってる映画が見たくなるってことだ。だって映画評って、評者の自己満足で 終わってる場合が多いんだもの。実は書評よりも。 (淀川長治さんは違うっていうか別格だったけど。あの人の映画評は凄い) でもこの本は違うぜ。と思うぜ。 なによりもねえ、イラストの力が大きいぞ。 「田園に死す」「女」「氾濫」とか絶妙でごわす。 追記:こんなサイトありました。リンクフリーだそうですので・・ http://home.catv.ne.jp/nn/kotatu/index.htm 「日のあたらない邦画劇場」 おもしろい! 2002.03.18 「神の子どもたちはみな踊る」村上春樹 新潮文庫 ISBN 4-20-100150-2 本体価格438円 文庫落ちのため再読。「タイランド」「蜂蜜パイ」もいいが なんといっても「かえるくん、東京を救う」。名作。すごく。 2002.03.21 「オートバイ少女」 鈴木翁二 筑摩書房 ISBN 4-480-88801-2 本体価格1700円 ソンナモノガアルトシテ コノ本ヲ ヤサグレノタマシイヘ ・・この言葉から始まる鈴木翁二の主に70年代の作品集。表題作は映画化された。 映画化・・・これを。すんげえ。でも「オートバイ少女」・・いいです。 なるほど映画化してみたいわなあ。バイクで海沿いを少女が走る、 ただそれだけの16Pの作品なんですがね・・・。 「酔いの客人の夜の唄」が絶品だ。こうなると本当に70年代の鈴木翁二は絶好調 だったんだな。この言葉のセンス!ああもうなんて言ったらいいんだよ。 言葉がねーよ・・・。 (でも最後の作品は訳分からんぞ・・・) リアルでないかも知れん だがこの想念は美しいだろう? 一つの方向性を持つだろう? 46P 2002.03.25 「春の月」(ちくま日本文学全集より) 梅崎春生 筑摩書房 ISBN 4-480-10244-2 本体価格971円 またまた一人復古主義でございます。しかし、ちくま日本文学全集は いいねえ。文庫サイズやし。全50巻・・1冊1000円ポッキリか。いいね。 それはおいといて梅崎春生でございます。この作家、最近でた北村薫編 「謎のギャラリー」というアンソロジーにて知ったのですが (そのとき読んだのは「愛の部屋」にて、「猫の話」。しかしこの人が 編者になると凄いアンソロジーになるな。もう意地になって人の知らん作品を・・笑) その短編が凄くよかったので。 で、この短編なんですが、ああなぜ昔の作家の文章ってこんな美文なのかな。 うっとり。独特のユーモアもある素敵なお話でした。うっとり。 私、春に出る月って好きです。月なんていつでてもいっしよじゃねえか、と思わせつつ 実は季節ごとに違うんだぜ、なんか。 2002.03.27 「プライベート・ジムナスティックス」2 藤たまき 新書館 ISBN 4-403-66056-8 本体価格552円 ええっと、いつかの読書日記で「私小説」をご紹介したこの作家、タイトル買いで 出会えたことがラッキーでした。いやあ、その後古本屋で結構見かけたので 殆ど購入しちゃいましてね。(このへん職業柄叱咤されそうな・・汗) んで分かったんですけど、あれですな、この方は主に同性愛的なものを主題に 書かれる方なんですな。 このへんに関してちょっと感想というか自説を。 (ちょっと不愉快な内容かもしれません。嫌な予感がする方は飛ばしてください) ↓ 最近異様に同性愛もの流行ってますよね。本屋でよく見かけます。 私はこの傾向にちょっと頷けないというか・・ 何かを書こうと思うときに、それを仕事にしていこうと思うときに生半可な覚悟では 選べない主題だと思うのです。もろ同性愛を扱うということは。 ましてやそれのみでの活動・・なぜそのジャンルなのか? 多分このジャンルで活動している作家さんの殆どが、ご自身は異性愛の性質を 持ってるだろうと思うし。 そしたらなぜそれを安易に選ぶのか?ということを考えるとなかなか 納得できないんですよね。その傾向は。それは商業ベースでということですが。 (いわゆる「ボーイズラブ」ってやつですね。このネーミングも・・う〜ん。) パロディみたいのでそういうのをやるってことと、自分のオリジナルでそういうことを 取り上げるってのは全然意味あいが違うと思うんですよ。 いや、昔から少女漫画の系譜では、同性愛のニュアンスを含む名作は多かったし、 私もそういうので好きな作品って多かったです。萩尾望都、吉田秋生とか・・ でも最近のは・・・。ペラペラとめくってみると全然関係ないとこで出てくる 性的な描写が多い。で、思ったわけです。これは女性向のエロ本の役目を果たしてる んだろうな、と。プラスハーレクイン要素も満たすと。 なるほど、それだと売れる理由がわかるような気が・・ でも、間違ってたかもしれない、とこの作家の諸作品を読んで思ったんです。 そりゃ中にはそういう作品も多々あるでしょうが、どんなジャンルの中にも 当然ながらやっぱりいいものはあるんですよね。「これが書きたい」って言うのが ばしばし伝わる作品が。そんなことは当然のはずなのに、 ちょっと偏見の目で見てました。 以前、読まずに批判するのはいかんな、と思って図書館で借りたある作品があまりにも ひどかったので(もう中身なんか全然ねぇーってかんじの本でした)、それ以来色眼鏡で 見ちゃってました。反省。いやあ、天邪鬼なもので、売れるもの・人気のあるものは 必ず疑いの眼から入る悪癖を持っているのです・・。 しかし恐ろしいほどの玉石混合なジャンルであることには間違いないと思うので、 やっぱり今後この人の作品に限ると思うんですが、読むのって。 (でもこれってなんか「お前何様じゃ!」ってかんじですよね。 そりゃ誰にとっても、それぞれにこのジャンルの中で特別な作家っていうのが いるんだろうし。何選別しとんねん、という・・。でもやっぱ進んでこのジャンル 開拓する気にはなれねーぞ・・ そう、「藤たまき」の作品だから。読むんですよね。私にとってはそういうことです) んで、前置きが長くなりましたがこの作品。 ここで書かれている事って、男女間とか男男間(・・)とか関係なく、「ああそうだなあ」 って言う・・あとがきでもご自身書かれてますが青春群像だなあ、という。 ま・眩しいぜ・・! 絵も最初はかなり独特な感じを受けたんですが、もう最近ははっきりといえるね。 好きだと・・。なんか画面がきらきらしてるよ〜うふふふ。ほんと独特な絵だ。 で、やっぱり言葉選びのセンスね。モノローグとか、惚れるわ。 詩的・文学的というか。 今回ぐっときたのは、セラが甘夏(これで「かんな」って読むのよ〜かわいい!)に 言った台詞。 「————従いたい・・ お前に・・跪きたい・・」 だとさ!おいおい跪くんだってよ!かーこんなん言われたいっ! (あれ?なんか間違ってる私・・ ?) まあでも、「そいつらに教えて欲しいよ この恋の 加速エンジンの弱め方を」 ・・なーんて台詞。この人の作品じゃなきゃあ、ほげーだねっ。 なんちうクサイ台詞じゃ! 朝の通勤電車んなかで読む北方謙三よりクサイぞ(なんか比較変ですか・・)。 こいつめ。 ちなみにこの作品フィギュアスケートを扱ってて、それも私的にツボ。 タイトルセンスもいいんですよね。1巻の「夜の翼」とか、2巻の 「第3世界のコンポジション」とか。 まあ、先の展開割と暗くなるかもしれませんが楽しみだじょ。 皆さん、偏見を捨ててこの作家にトライしてみてください。(お前がゆーな!) すげえ感性だから。 2002.03.31 |