読書日記 

 2002年2月

   今月は何冊読めるかな?さてさてふふ〜ん♪(BYの@ぽさん)
結果:ああ〜ッ5冊しかアップできまひぇんでちた・・



 「眠たい瞳のお嬢さん〜結婚物語上〜」 新井素子 角川文庫 
 ISBN 4-04-160002-2 定価340円

  これ実は再々々読くらい。っていうか高校の時に初読してから、ほんと何度も読んで
 ます。
 実家においてあったのがどこかの地層に埋もれてしまったので、古本屋で購入。
 これはねー、もう新井素子の真髄!というか。別にSFではないんですが。
 結婚を決意した2人がいかにしてゴールまでたどり着くか・・という話。あとがきで、
 著者は懸命に「これは実話じゃないのよ」といってますが、100%実話に思えてしまう
 あたり・・。
 主人公(女)が、相手方の両親に初めて挨拶に行くのに、緊張して眠れなくて、色んなこと
 を考えるんですが、結婚したらどんな間取りのお家でどんなお庭に・・って夢想がなんで
 最終的には市営プールの経営者の話になるの!とか、結婚式の日取りや会場の話
 をしててなんで12進法や虚数の概念の話になるの!とか・・
 (たしか後編で関東ローム層がきっかけで破談になりそうにもなってたぞ・・
 想像つきます?そんな経過って・・)。
 本当にこのお話はいかにも新井さんって感じなんですよね〜。私はこの人の本殆ど
 読んでまして。それはもう小学生の頃から。大好きなんです。

  この本読んでると、好きな人とこういう風に一つの作業するとか、一緒に暮らすっていう
 —結婚ていう作業が—本当に楽しく思えます。天邪鬼の私にも。
 すっごくね、いい本なんです。
 だから私はマリッジブルーに陥る友人がいたら真っ先にこれを薦めてあげたいな・と。
 あ、「結婚」ていう主題抜きにしてもじゅ〜ぶん!おもしろいです。

 なんかべた褒めになっちゃってるなぁ・・でも仕方ない。だっていつ読んでもほくほく
 してきちゃう本なんだもん。要するに問答無用で好きなのさっ!お薦め〜!です。

 追記:「新婚物語」も出てます。トータルで6冊なんですね、このシリーズ。
 新婚・・のほうも変わらず面白いです!ただ、このシリーズ今は絶版扱いになってる
 のかな・・?ブック@フには絶対ありそうですが。

 2002.02.08



 「メッセージボード」 藤原智美 読売新聞社 ISBN 4-643-97111-8 本体価格 1300円

 
 13の作品による短編集。別にホラーと銘打ってるわけでもなさそうだが怖い。
 後でじんわり来る怖さかな・・。こういうなんとなく不思議な話って、書き方によっては
 全く心に引っかからなくて、あっという間に忘れてしまうものだがこれは違うようだ。
 文章ごとに蘇ってきてゾクリとさせる。できれば持ちたくない引出しを作られた・
 みたいな・・。ザワザワする感じ。印象的。こうなると他の作品を読みたくなるんだな・・。
  個人的には「メールボックス」「血液検査」「50センチの永遠」が好み。
 特に「50センチ・・」は怖かったぞぉ・・。ぞくぞく。そして「血液検査」のおかげでいまだに
 私の脳裏には赤いハイ ヒールの残像があるのでした。

 追記:この著者、てっきり女性だと思ってたんですが、男性だったんですね。びっくり。
 ちなみにこの本は装丁もいいです。
  
 2002.02.10




 「雪の断章」 佐々木丸美 講談社文庫 ISBN 4-06-183136-4 定価480円

  こういう作品を読んだあとは、言葉がない。
 作品世界と雪の情景がそのまま焼きつく。
 感受性の刃がきりきりと尖っていて痛いほど。
 この作家の著作が現在すべて絶版であることが非常に辛い。
 本当に惜しいことだと思う。私は年上の女性(その方にとってはリアルタイムの作家
 だった)に薦められて本書を読むきっかけをたまたま得ることができたが、何かの切欠
 がないともう殆ど断筆つしている作家の本など誰も読まない。
 それが惜しくてどうしようもない。
 こんな物語が忘れ去られていくことが、埋もれていってしまうことが悲しい。 
   
 読み終わった今でさえ本の中の彼等が、自分の中に居座って離れない。 
 自分も雪の只中にまだ、居る気がする。
 
 裏切りがあるから信じ、崩れるから積むのでしょう。溶けるから降るように。
 
 217p

 
 2002.02.12



 「マッチ一本の話」 鈴木翁二 北冬書房 ISBN 4-89289-106-1 本体価格1429円

  少年王者館の舞台の原作本。
 昔見に行った公演だったので、図書館でこれを見かけたとき
 ふと借りてみたのだが・・

 ・・すばらしいぃ(滂沱)
 表題作は著者の代表作といわれるだけあって勿論いい。
 ていうかもう・・脱帽っす。
 (これを舞台化した天野天街はやっぱりスゴイ)
 しかし個人的な一押しは「思い出物語」。
 こんな話を・・知らずにすごすところでした。うっかりと。
 もうね・・とにかく読んでくださいとしか言いようがないです。
 何なんだ・・こんなに私の心の琴線をはじきやがって!ちきしょうめ・・ううぅ・・
 憎い奴、(いや憎い方)鈴木翁二様・・

 (ちなみにこの作家、知る人ぞ知るというカンジで・・
 ネットで検索したら「孤高の詩人漫画家」って言われてました。
 たとえると、水木しげるとかつげ義春っぽい絵で宮沢賢治って
 かんじでしょうか。)
 にしても今気付いたんですが、今月の読書日記って絶版本ばっかりです。
 あららら・・。

 ふるえるこころはなんでしょう
 ああ、にんげんの、ふるえるこころはなんでありましょうか
 
 52p


 2002.02.22



 「罪・万華鏡」 佐々木丸美 講談社 ISBN 4-06-200847-5 本体価格890円

 著者の作品は、1984年から新刊が出ていないので、この作品が単行本として
 (今のところ)最後から2番目の作品になるようです。なぜ前回の「雪の断章」から
 いっきに最後から2番目に飛んだかというと、シリーズものの2作目が図書館で借り
 られてたからです・・・ですのでノンシリーズなら読める・と思って。
 これは精神科医・吹原医師と主人公のところに訪れた、3人の加害者のカルテの
 ような形で綴られる連作集。

 さて読了して。ふむむむ・・・やっぱりこの人独特のお話だなあ。
 あとすごく気になったのが文体。なんというか・・底にあるものは「雪の断章」
 と同じなのですが、かなり変わった文体になってたような気が。体言止め多いな・・
 どのあたりからこの文体に変わったのだろう。ものすごく独特な印象を受けた。

 しかし、著者は・・この感受性を持ちつづけてたら書き続けるのは辛かったのでは。
 その感性が諸刃の剣になってるような。なぜならこの主題、読み手によってはやはり
 多少の戸惑いが残るだろうから。主旨は分かってはいるが・・う〜ん・・。
 (特に最初の章、以下ネタバレ→反転)少なくとも私は、
 最初の事件、あれで無罪になるのがかなり納得いかないぞ。それは幾らなんでも・・
 と思う。しかしこれで「無罪」と書ききれるところに、なんともいえず・・
 著者の感受性を感じる。やはり心からその状況に分がある・と思ってなかったら
 この結末の出し方は出来ないだろう。あーうまくいえないけど・・ 

 法律では裁ききれない「悪意」を描いている点、それをこのような切り口で扱っている
 のが著者らしいと思うが、何故か、「大満足」とはいかないのだなあ。
 教訓色が濃いと思わせるような書きかたしてる気がするし。
 いや、作品としてはやはり好きの部類には入るのだが。所々やはり心に引っかかる
 印象的な文章がいくつも出てくる。
 んん、やっぱりこの作家のカラーは他に比べて突出してる。なんとも言いがたい感じ。

 ああ、何故かうまく言い表せません。うむむ・・・
 ちょっと期間をおいて、この文を読み返すと「ピントずれたこといってるなあ」
 と自分で思うのではないでしょうか。ってあかんがな。
 とにかく、独特な趣の作品でした。最近こういう作品にはお目にかかったことが
 なかった。(勿論扱ってる主題が似通ってるものは山ほどあるが)
 書き手によって物語とはこうも変容するものなのだな。むむ。

 心が満ちているときは言葉が要らない。心のどこかが欠けると言葉で埋める。
 恋の途上にある女心の断面。
 
 135p


 2002.02.26


    


INDEX

NEXT

HOME