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「国境」  黒川博行 講談社 ISBN 4-06-210415-6 本体価格1900円

 同作家の「疫病神」の続編。ミステリチャンネル年間ベスト(2001)の
1位にもなったようです。
 いやー、まさか続編を出してくださるとは。嬉しすぎる。私が前作を読んだの
はそう昔ではないんですが、本書が続編だとは最近まで気づいてなかった
ので嬉しさも倍増ってもんです。
 今回は、金を持って高飛びした詐欺師を追って、建設コンサルタントの
主人公二宮と、ヤクザの桑原—おなじみ「疫病神コンビ」—が北朝鮮へ。
作者が2回の北朝鮮潜入取材を敢行したという(どうやったんだ・・)今作は
かなり気合が入ってます。
なるほど詳しく、北朝鮮の現事情と、在日の人たちの現状もこれを見ると
分かりやすいです。非常に失礼かつ僭越ですが「勉強してるなぁ〜」と。
私が卒論でこの辺関連をやってたので、いまでもこの手の題材を扱った本
があるとつい目を通してしまうのですが、そういう観点からも面白かったです。
勿論それだけではなくて、話自体も相当面白いんですが、注目すべきはこの
オッサン2人の掛け合い漫才・・(夫婦漫才?)でしょう!超〜爆笑!
ちゅうかもうこってこての大阪弁しゃべります。ですので苦手な人はあかんかも・・。
 ていうか二宮さん、桑原さんにあんだけ助けておいてもらいながら感謝の
念がうっす〜い!あの「喧嘩の国の王子様」(by悠紀命名。)があんなにまめに
君のことを気にかけてるというのに!それなのに君は終盤で(以下ネタバレの
恐れ有りなので略。)・・・!!ふう。まあ、なれ合わないとこがこのコンビの
いいとこだね。
まあ、ラストもよくって大満足です。それにこの作品、なんか最近の情報によ
ると直木賞(・・だったと思うんだが)の候補になってたとか?ていうか最近結果
出てたよねえ。じゃあだめだったんか・・。悲しい。
 まあ、私があらゆる文学賞の中でもっとも信用していない直木賞を逃した
とこでこの作品の面白さには何ら変わりはないさ。超プッシュなんで
そこんとこ4649。あわせて前作もどうぞ〜。

帯より抜粋:
「国境てなもんは、地形や民族で決まるもんやない。
その時々の喧嘩の強さで、右にも左にもずれるんや。」

2002.01.02



「深淵」 福永武彦 (ちくま日本文学全集より)筑摩書房 ISBN 4-480-10216-7 本体価格971円

 一対の男女の、それぞれの独白によって語られるお話。
両者共にそれぞれの魂に囚われている。だから、女が魂を捨てようと
したときに訪れる結末はああいうカタチにしかなり得なかった。

 これはすごく好みですね。
じつはこれは直感で選んで読み始めました。本当に我ながらハズレないなあ。
未読の作家だったのですが。この全集、短編集みたいになってるんですが、
タイトルが好みだったので。「遠方のパトス」とか。他まだ未読なので
楽しみです。いやあ、「深淵」があまりに好みだったので、先走って書いちゃった
んです。

わたしは聖の聖なるものです。もっと高く。もっと高く。
・・・・わたしはそして眠り、目覚めて、わたしの前に深淵を見ました。
268P

2002.01.12



「遠方のパトス」 福永武彦 (ちくま日本文学全集より) 筑摩書房 ISBN 4-480-10216-7 本体価格971円


 読了後、お話そのものに特別な感慨はない。が、なんか頭ン中いっぱいって感じ。(どっちだ) やっぱり文体好みだなぁ。

しかしもし知らない間に人に愛され、そのことに責任があるというのは何という
怖いことだろう。
182P


2002.01.18



「私小説」 藤たまき 新書館 ISBN 4-403-61502-3 本体価格505円

前記の福永武彦もそうなんですが、私はよく自分のカンによる未読の作家の
「タイトル買い」っていうのをします。なんか博打みたいなかんじでなかなか
楽しいんですが。で、今回のこれもタイトルで。しかも古本屋で。
なんかいかにもな「文学」臭を感じたので。絵が・・変わった感じの絵なんですが、
(髪の毛硬そう・・)1Pめくったら冒頭から

「そもそも僕にはその概念がなかった」

という台詞。この辺でちょっと、いやかなりピン!ときましたので購入。
そして私のタイトル買いは本当にハズレをひかないなあ、と我ながら驚き。
ちょっとこれは・・・きましたね。名作、といっても過言でない。
何でこの作家を今まで知らなかったんだろう!
文学的・詩的な話に言葉選び。はっきり言って感動してしまいました。

繊細かつ、誠実に綴られる物語。
同時に人が文章を書くって、モノを書くってどういう心持の作業なのかって
ことにも心うたれてしまった。
「恋ひせよとてもうまれざりけり」か。
なんか・・どうしようこれ、って思うくらい好きになってしまった。
このお話が。

雪がふって積もった時の情景って、ほんとに世の中に音がない状態って
このことかと思うような静けさなんです。子供のころよく夜に外見て
思ってました。そんな感じだったんです、これ読んでる間は。
だからこれは冬に読んでいただきたいと思うお話でした。なぜか。

——そうしてその後もずっと
   数え切れないほど
   たくさんの正反対のことを
   思っている僕は
   このままでは果物を
   砕くような感触で
   心がバラバラに 
   なるかもしれません
15P


2002.01.23
   
・・あれっ!?今月3冊しか読んでないのか?いやそんなバカな・・でも忙しかったから案外そうかも。反省。


 読書日記 

2002年1月

年もあけまして・・改めてさくさくっと読んでいきます。