第二話 日付変更線を超えて
2001年8月8日 AA158便 機内 PM9:00(日本時間)
機内はなんとも落ち着かない雰囲気である。
結局2時間近く遅れて出発。
最初の目的地ダラスとの時差は、9時間
日本時間に9時間足して、24時間ひっくり返す。
日本時間の午後9時は、ダラスでは、同じ日の朝6時となる。
一日得した気分になるわけだ。
しかし、10時間強のフライトは、さすがにこたえる。
フライトアテンダントが、ひっきりなしにやってくる。
そのたびに、飲み物の注文をするのはとてもめんどくさい。
しかし向こうは業務を忠実にこなすことしか頭にない。
ダラスまでにオレンジジュースを何杯飲んだことか、、、
映画も見飽きた。
本はスーツケースに入れてしまって、
ガイドブックくらいしか手元にない。
隣の男は相変わらず、
あきもせずに、イヤホンで爆音を鳴らしている。
少しだけ紹介しておこう。
この男、ひとことでいうと、無礼な奴である。
ひとりっこで、ちやほやされた結果、
当然のように、ゴーイングマイウェイな人間に育った。
一応ドラムがそこそこ叩けて、同じバンドでやっている。
折にふれて、彼のことはまた紹介したいと思う。
機内の明かりも消えた。
フライトアテンダントも、こなくなり、
周りが静かになった。
日付変更線を越えるあたりで、
機体がいやにゆれだした。
横に、ゆさゆさときたと思ったら、ガっーーーっと急降下
結構あせった。
まあ、何千メートルも上空だから、
500Mおちたところで、なんともないといえばそうだが、
浪花節などをうなりたくなる気分。
10回ほど生死の淵をさまよって、ようやく落ち着いた。
夜が明けても、また同じ日というのは
ちょっと頭が混乱する。
ダラスフォートワース空港が近づいてくる。
眼下は一面の農場。
ダイナミックな渓谷も見える。
何もかもが荒削りな国だ。
どうやらアメリカまでは無事にたどり着けたらしい。
少し旅の実感がわいてきた。