亜愛一郎の逃亡


「赤島砂上」
 赤島という無人島にて、裸体主義者倶楽部の集いが開かれていた。人々が裸での生活をのんびりと満喫するなか、モーターボートに乗った乱入者が人質をとるという事件が起きる。亜愛一郎の活躍によって、ことなきを得たものの、亜の口から思いもかけぬ真相が語られる。

「球形の楽園」
 多くの土地を所有する富豪は人嫌い、乗りもの嫌いのため、外へ出ず、屋敷に閉じこもっていた。さらに彼は自分の身を守るためにシェルターを作ると言いだし、その建設を急がせた。彼の要請により作られたシェルターは卵型で出入口は一つ。鍵は中からのみかけられるというもの。その閉ざされたシェルターのなかで富豪は他殺体で発見された。いったい誰が、どのようにして? 亜の推理が冴えわたる。

「歯痛の思い出」
 刑事の井伊は、歯痛に耐えられなくなり、歯医者へと向かう。そこで大病院を紹介され、後日行くこととなった。大病院で受付をすると亜愛一郎という男と一緒になる。待合室で待ち、次の待合室で待たされ、レントゲンで待たされ、治療室で待たされ、支払いで待たされた後、亜が一言。「刑事さん、今の男を捕まえなくていいのですか」。亜の思惑とはいったい!?

「双頭の蛸」
“週間人間”の記者・亀沢は、湖で双頭の蛸を見たという少年からの手紙をたよりに釧路へと飛んだ。当たり前のようにガセネタと分かり切っていても、亀沢はかわまずにダイバーを用意し、湖の調査を始める。すると、ダイバーの一人が湖上のボートの上で拳銃により射殺された。湖のほとりで見つかった銃に付いていた指紋により亜と一緒にいた学者が逮捕される。亜は推理により、トリックを暴き、学者の無実を証明する。

「飯鉢山山腹」
 亜は中学校教師の田岡に誘われ、コノドントの化石を見に行く。車のすれ違うことのできない旧道の中腹で観察をした後、場所を移動しようとすると、彼らは崖崩れが起きているのを発見する。観察中、“ニウ島屋”と書かれた車と、田岡の学校の校長が通ったことにより、それらの後に崖崩れは起きたと考えられた。しかし、亜は皆にとんでもないことを言い出すのであった。

「赤の賛歌」
 評論家・阿佐冷子は不満を抱いていた。画家・鏑鬼正一郎の作品が昔に比べ、強烈さが薄れてきているからだ。冷子は鏑鬼がかつて過ごした家を訪ねていくと、生物学を研究する朝日とカメラマンの亜に遭遇する。かつて鏑鬼が住んでいた家で一夜を明かした後、亜は思いついたあることを口にする。

「火事酒場」
 身長が低くて消防士になれなかった火事好きの亭主。火事好きが高じて、火事現場へと顔を出すのが趣味の夫を心配する嫁。そんな二人が本当に火事現場に遭遇し、第一発見者となったのだが、その後、警察から放火を疑われることとなる。偶然現場に居合わせた亜が警察にとある仮説を話しだす。

「亜愛一郎の逃亡」
 大雪の中、なんとか旅館にたどり着いた亜と東野。二人はミミズの観察に来たという。そんな彼らを追って来る者がいるという。それは三角形の顔をした洋装の老婦人。追ってから逃れるためか、亜と東野は人魂となって忽然と姿を消す。彼らはいったいどこへ? そして老婦人の正体とは!?




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