総 評
今年の国内ミステリであるが、あまりこれといった作品がなかったような。「このミス」等のランキングでも、“これ”といった作品がなく、それぞればらけていたように思える。また、各種ランキング内には、わたしが読んでイマイチだと思った作品も掲載されており、全体的に不況であったなと感じられた。
私自身のランキングでも、1位とした作品は、とりあえず暫定で1位にしておいて、それを超える作品が出たら、どんどんと順位を下げていこうと思ってた。ただ、結局それを超えるほどのインパクトのある作品がなくて、そのまま1位をキープしたままというもの。
なんだかんだいって、ここ数年国内ミステリは不況の状態が続いており、たまに良い作品が出てきてくれればと、待ち望むのが普通という状態。意外と、新人の作品がポツポツと出ているのだが、今年は特にこれといったものがなかった気がする。
比較的新しい作家で、がんばっているのは、早坂吝氏、井上真偽氏、青山有吾氏、深木章子氏、小島正樹氏あたり。中堅では、三津田氏、深水氏。今年はベテラン作家の活躍はあまり目立たなかったように思える。一応、島田市や竹本氏が新刊を出してはいるのだが。こうしてみると、近年がんばっていた中堅作家の活動に陰りが見えているような。まぁ、このへんは当たり年とかもあるので、来年こそはと待ち望みたいところ。
あと、ノベルスの出版が近年減っているように思えるのだが、そうしたなかで講談社ノベルスがそこそこの水準の本を出してくれていたなと。それに対し、カッパノベルスは、新刊自体がでない月も結構あったりして寂しいところ。なんとなく、今は流行がライトノベル系に偏りつつあるような感じがするので、新本格系のような作品を書くのは流行っていないということなのだろうか。
そうしたなか海外ミステリは盛況だったように思える。古典ミステリ、近代ミステリ、それぞれに良い作品がそろっていた。そうしたなか、特に今年の目玉となったのは「熊と踊れ」。この作品はランキングが出る前に評判を聞いて購入していたので、どうにか年内に読むことができた。
「熊と踊れ」のような例外的な作品もあったが、今年の作品の傾向を見るとシリーズ作品とか、流行作家の作品に良いものが集まったように思える。
古典ミステリであれば、ヘレン・マクロイ、レオ・ブルースといったおなじみの面々に、久々な気がするパーシヴァル・ワイルドやエリザベス・フェラーズなどの作品が注目を集めた。
近代ミステリであれば、ディーヴァー、ウィンズロウ、キング、コナリー、ルメートル、ルヘインらがいつものように高い水準の作品を書き上げていたように思える。
ただ、そういった近年よく活躍している作家の作品ばかりが目立ってしまって、「熊と踊れ」以外に新たな作家の注目作品というのがなかった気がする。「拾った女」という作品も比較的取り上げられていたようだが、チャールズ・ウィルフォードという作家は日本でも数冊訳されていて、元々有名であったよう。
とはいえ、近年いろいろな国のミステリ作品をそれぞれの出版社が出版していて、業界としては盛況のようにも感じてしまう。そのなかから、どのくらい良い作品が出てくるかとか、そろそろ飽きられてくるのではないか(北欧ミステリとか)という懸念はありつつも、数打てば当たるという考えもあるので、今後も良作がでてきそうな期待は持てている。
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