<内容>
俺はただ、オーストラリアを旅したかっただけなんだ。アメリカでの二流新聞社の仕事にも嫌気がさしていたし。そこへ現われたのがあの娘だ。無防備な彼女と旅をしたら、誰だったちょっかいを出したくなるさ。でも引き際を誤った。まさかそれがあんな悪夢を呼ぶなんて!
<感想>
内容よりもブッ飛んだのはレジに持っていったときに本書の値段を聞いたとき。\1,200。文庫ですぜ! しかも300ページの!! そんなに翻訳権が高かったのか、何だったのか知らないが・・・・・・よくわからん。
本書の内容は、いわゆる閉鎖した人知れぬ村に無理やり村民として向かい入れられるというパターン。そしてそこからの脱出劇。あまりにもハリウッド的な協力者の存在には少々うんざりするが、ラストはそれなりに決まっている。普通の一般市民が巻き込まれるという恐怖感は実にリアルに描かれていると思う。ある種の冒険小説でもあり、ある種のモダンホラーでもある。
<内容>
ウォール街の大手法律事務所。30万ドルを超える年収。妻と二人の息子。ヤッピー弁護士のベンは、それでも満たされぬ思いを抱いていた。そして妻の不貞に気づき、激情に駆られて凶行に及んだ後で、ベンはそれまでの自分をも葬ることを決意した・・・・・・
<内容>
ネッド・アレンにとって、栄光は目前だった。メイン州を出てほぼ10年、マンハッタンはいよいよ彼に微笑みかけようとしていた。だが、破滅は前触れもなく襲ってきた・・・・・・失業。残された負債。不審を募らせる妻。それでも、辛酸をなめ尽くした彼にも蜘蛛の糸は下りてきた。ビッグ・ビジネスのチャンス。ところが・・・・・・
<感想>
失業してお金に困っているとはいえ、不要な浪費を続ける主人公には共感できなかった。邦題は「仕事くれ。」であるが、実際には仕事がないわけではなく、彼を満足させるような高給な仕事がないというのでは題名とはそぐわないように思える。
途中で、なんとか仕事らしいものにありつけ、これから少しずつ上向きかけて行くかと思えるところから、内容がサスペンスフルになってくる。ただ、突然思い出したようにサスペンスとなるよりは、このまま一人の男の再生の物語として続けていったほうが面白かったのではないかと思う(ハリウッドでは使ってもらえないだろうけど)。妙な経験をつむよりも、地道に仕事を勧めて、過去の人たちを見返してやるという内容のほうがいいと思ったし、そういう内容を題名から読み取って、期待していたのだがちょっと的を外してしまった。
ただ、だからといって話しの内容が面白くないわけではなく、後半のネッドが陰謀にはめられながらもそれから脱しようとするところはなかなか読み応えがあった。
<内容>
コピーライターのケイトは、母の葬儀で謎の老婦人を見かける。老婦人は埋葬の行われる墓地にも現われ、母の隣に眠る父の墓前にたたずんでいた。さらにはケイトの幼少期からの写真を収めたアルバムを送ってくる。憤激のあまり対面したケイトに、サラと名乗る彼女は長大な原稿を渡した。そこには、赤狩り旋風吹き荒れる終戦直後の米国を舞台にした、壮絶な悲恋の追想が綴られていた。
<感想>
恋愛小説というよりは大河ドラマといったほうがいいような内容である。ここで語られるのは一人の女性の人生の遍歴。その人生とは波乱万丈までとはいかなくも、あまりも現実的であり、かつ厳しくも残酷に時が流れて行く。その人生は決して理不尽であるとか、いわれの無い不幸が襲い掛かってくるというものではない。あくまでも自らが選択し、その結果自らが茨の道を歩いていったというように感じられる。決してその生き方に共感を抱くようなものではないにしても、ただただ紡がれつつある人生に圧倒されるのみである。この物語は、あくまでも個人の遍歴を描いたものなので壮大なというと表現が異なる捕らえ方かもしれないが、それでもあえてこれは“壮大な物語”であるといいたい。
また、この話しでは物語の見せ方が非常にうまいと思う。最初と最後だけにケイトという女性が登場してきて、ほとんどはサラ・スミスの人生にページ数が割かれている。しかしながら、全編通してこれはサラ・スミスだけの物語ではなく、その時代に生きていた他の人たちの物語にもなっている。最後にケイトが主人公となって語られる部分では、サラ・スミスの長い物語を経てケイト自身がこれから歩むべき道を選んで行くことと成る。サラの物語があるからこそ、とるべき道。そこに至る充実感によりこの物語はさらに引き立てられるものとなっている。
普段、私が読むミステリとはまた違った味わいの小説。こういうものもたまにはいいのかもしれない。
<内容>
脚本家を目指すデヴィッドは本屋のアルバイトをし、妻の仕事に助けられながら、自分が書いた台本をテレビ局へと送り続ける毎日が続いていた。そしてある日、彼が書いた“売り込み”という台本がテレビ局の目に止まり、またたくまに成功者へとのしあがる事に! さらに仕事が順調に進む中、今まで自分を支えてくれた妻と離婚し、恋に落ちた女性と付き合いつつも、忙しい仕事にくれる日々を送っていた。そんな中、彼に大富豪からの映画脚本の依頼が舞い込んでくるのだが・・・・・・
<感想>
作風としては「ビッグ・ピクチャー」というよりも「仕事くれ。」の2番煎じであったように思える。急展開型の小説になっているのかと思って読んでみたのだが、意外に平坦な物語であった。
当然のことながら訳が新しいので、とても読みやすいのだが、正直言って物語の内容は退屈であった。前半は延々、成功譚が語られ、後半に入って今度は転落への道をたどることになるのだが全体的に冗長であったと思う。
「仕事くれ。」を読んだときにも思ったのだが、主人公の生き方にはどうしても賛同できないし、失敗したとしても事項自得というようにしか感じられない面も多々ある。この辺は、アメリカにて業界で生きる人との考え方の差異なのかもしれないが、日本国内にて賛同されるようなストーリーではないと思われる。
また、本書の内容であるが、陰謀劇などもはらんでいてそれなりのサスペンスといってよいものになっているとは思うのだが、いかんせん話が長くてスピーディーさに欠けているところが残念であるといえよう。なんとなくもうこの人は「ビッグ・ピクチャー」を超えるような作品は書くことができないのではないかなと感じさせる内容であった。それであるならば、「幸福と報復」の路線で行くほうが良い結果が出るのではと思われるのだが。