「ぼくの白いカイト」


   
渚 水帆作 
ぼくは誕生日に白いカイトをもらった。

ぼくはうれしくて最初は小さく小さくあげ(揚げ)ていたんだ。

でも もっと高く飛ばせるかな と思って。

だんだん徐々に高く高くあげていったんだ。

上空高く風はひとすじも吹かなかった。

カイトはまっすぐと上がっていた。


ぼくは風の強い日もカイトをあげたかったから(さ)。

ある風の強い日 ぼくはカイトを上げた(んだ)。

するとカイトは急に糸が切れて月の裏側へと飛んでいってしまったんだ。

ぼくは泣いたんだ。

もうぼくのタコは帰ってはこないんだと思って。

ところが───

ある日タコは突然戻ってきたんだ!!

上空からゆっくりと威厳さえもって。

ゆっくりと ゆっくりと───

だけど近づいてみてぼくはびっくりしたんだ。

ぼくのまっ白だったカイトはすすよごれてところどころ破けていた。

ぼくはひっしで涙をこらえた。

「もう前みたいには高くは飛べないんだ…」

カイトは低くつぶやいた。

「いいよ、カイト。君はこれからぼくの頭のすぐ上の高さを飛んでくれたらいいんだから」

白いカイトとぼくはそれからずっと一緒の高さでそれはそれは幸せでした。  (ずっと歩いていきましたとさ)




                            終り







渚 水帆作




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