星粒’S ROOM



静かな痙攣

 投稿日: 5月27日(日)09時35分24秒
雨の朝は

気管支の奥で平滑筋が痙攣している。
<人はいとも容易く
  死んでしまうのかもしれないと
  じぶんの胸痛に思うものだ>

コップ一杯の水に
なにか静かな重みを感じる。
飲み干す事によって
じぶんの心に
気付薬を投下する。
<白い朝は
  割れた錠剤の粉のように
  脆いと思うから
  じぶんに暗示をかける。
  水の
  味気無いカルキ臭さ>

呼吸のし方で
苦しみの度合いも減らすことはできた。
雨の朝

花瓶には造花を飾る。

きつい花の匂いに



だるい午後

投稿日: 5月 9日(水)22時48分20秒
誰かが公園のベンチを立つと
つられて立ちあがる日常。
それが当たり前のまま
それが当たり前でなくなってゆくとコワイ。
ココロはいつも病におかされたように
其処にある そのままの
ゆっくりと流れる時間をだきしめることが不可能だったから
だるいのだと
ただ ひとりで 
午後に甘えて しがみつくように

そのときわたしは
豊かに零れ落ちる小さく薄緑の夏を
大地のつめたさから拾ってやりたいと
ゆうきもちが沸きあがる。

すべてがだるく思われてくる。

風に 自らの意志とは裏腹な方角に
しろいからだを
踊らされた花や
自然のなりゆきで
働かなければならないアリ。


ゼラチン

投稿日: 3月19日(月)22時38分49秒

ゼラチンのような心
うやむやにできないいろいろなころ
揺れて ぷるぷると
不安定 
なときは 丘のうえから
ゆうぐれの海を見下ろした
其処も
ゼラチンのように揺れている。
すこし
時間をかければ
うすむらさきのワインゼリーの波間
になるの
を知っている
だから
こころがゼラチンになったときは
焦らないで
まず
靴を脱いで そっと
しのびあしで
からだをほぐす体操をして
其れから
海のゼラチン
ながめにゆく
べらんだへ

うなじに吹く
柔らかい



遠景

投稿日: 3月 6日(火)15時00分08秒

川の流れは、
ワルツを踊っているようにゆったりとうねる。
黒く、羽ばたく
無数の鳥 初めてお出ましのあれらは
残雪の
かわらに じっと身を寄せ合うように見えた。
光りが 午後には
まろやかな口当たりの
お酒の色に変わり
良く眼を凝らせば
鳥は
雪の溶けた黒土だった。
其れが わたしの目には
鳥の光りに
見えたのだ。

太い橋のたもとで
わたしは
川になる。
すると
鳥のような黒土が
こおばしい薫りを
川風に乗せてきた。

鞄につけた鈴がちりんちりん
鳴っているのか
こどもたちが駆け出している


既婚

投稿日: 2月13日(火)21時44分53秒

指輪に枷をかけられたように想う日々は
砂の僻地に埋れて
もうアリバイも無く、
遠のいた微熱の幸福は、
噛み砕いた、錠剤の味気無さ
のように
しろくひからびてわたしの
こころの底でじわじわと
腐乱してゆく


逆上がり

投稿日: 2月 7日(水)00時40分48秒

ぎゃくむきのわたし
のお下げ髪。
繋がって売っている綺麗な飴玉のネックレス
に似ていた。
校舎が
空の海のなかに淡く溶けていて
わたしそろそろ
お腹の皮が捩れてしまう。
人間の皮でもかぶっているのかしらというくらい
からだをよじって よじって
体育のテストまでにまにあうように


泣き所

投稿日: 1月20日(土)16時02分17秒

まったく君は素直なのだと
詩論をぶつけ合った男に言われ
囲炉裏のある飲み屋で
泣いた冬

まっすぐな心があれば
怖いものなど知らずにいた。

ちくりと胸を刺す
馴染みの友人の
言葉ほどいたかった
冬。


中国のカノジョ 

投稿日:12月11日(月)23時20分44秒

カノジョはわたしに日本語を使えと言う
でもカノジョの会話は中国語だ。
カノジョはきゃんばすのベンチで
おせんべいをかじる
かりんとうは
なんとか と言う中国の揚げ菓子と似ている。
お尻に草がぴゅんぴゅんさわる
きゃんばすのべんちで
かりんとうをかりかりと齧った

それからカノジョは
わたしに絵のモデルになるかと聞いた

ヌードのモデルだと言うから
だめだめとジェスチャー

カノジョは意味不明の首をかしげる
ポーズ

だからわたしはもういちど
中国語でおことわり

ナニジンだかわからない
かりんとうをつまむ
わたしたちを
普通の学生がふりかえらないようでいて
しっかりとふりかえって見ている


キャロットスープを煮ている週末 

投稿日:11月19日(日)19時24分29秒

枯野の細くやさしいシルエットの木に
燈のようにかすかに揺れるのは、まだ落ちぬ小さな葉。

子ども達がガチョウの羽のコートを着て
冷えた空間で縄跳びをしている。
もうじき白く降る雪のはなびらの中で
白うさぎのように跳ねまわるのだろう そんな季節に
わたしは首の根元までそっくりセーターの温もりにしまい込み
スローテンポで
キャロットスープを煮ている。

誰もたずねてはこない週末は、
街路にも車の警笛は聞こえず、
キャロットスープを口を窄めて舌先であじわい
肩を竦めてちいさなやけどを負った

其れと言うのもはと時計が
決まった時刻を告げたならあなたに
電話をかけるから

キャロットスープの甘い匂いが
さびしい冬の部屋にすこしずつただよう頃

日はすこしずつさしこんで
窓枠がはちみつのようにとろける


 すれちがい
 

投稿日:10月31日(火)15時10分01秒

すれ違い
は振向いた瞬間に気づいた時
ひとは 改札の国へぱくんと飲み込まれて
足踏みしながら行進して行った

すれ違い
はとろうとして切れた受話器の冷たさ
使われておりません
の無機質
かけても
かけられても
すれ違いは
起きて

なにをかんがえているのかおしえて
ときいたとき
なにをかんがえているのかおしえない
といわれて

爪を噛む