気だるげにしている悠人の身体を濡れタオルで拭き、優作は悠人を抱えてソファーに座らせた。
 互いの汗や精液でベタベタになっているシーツの上で愛の余韻を味わうのは、さすがの優作もできなかった。
 シーツと濡れタオルを丸めて床に放り投げた後、かったるそうにソファーにもたれかかっている悠人の隣に座り込んだ。
「大丈夫か?」
「うん……」
 そう言いつつも、悠人は隣に座る優作の肩に身体を預ける。
 心地よい疲労感と優作の匂いに、悠人は包まれるような安心感を覚えた。
 もう二度と、この腕の中から離れることはないんだ。
 そう思うと、悠人は優作の逞しい腕に頬ずりをせずにはいられない。
 甘えるように頬ずりをしてくる悠人に、優作は愛しさを込めて悠人の肩を抱き締める。
 時計を見ると、九時を回っていた。
 相変わらず外からは、どぎついほどのネオンの明かりが注いでくる。
 優作は煙草を手に取り、口にくわえると呟くように言った。
「九時過ぎたな」
「もうそんな時間?」
 いつの間にかそんなに時間が経っていることに、悠人は驚いて顔を上げる。
「どうする? トワイライト行くか?」
 優作の問いに、悠人はしばし考えて首を横に振った。
「ううん。せっかくだけど、今日はずっと優作とこうしていたい……」
 そう言うと、悠人は優作の胸に顔を埋め、力を込めて抱き締めた。
 積極的な悠人のアプローチに、優作は目を白黒させたが、すぐに目を細めて笑うと、悠人の頭を抱き締めた。
「そうか……」
「優作……」
「ん?」
「オレのこと、愛してる?」
「ああ。もちろん愛してるさ」
「これからも、ずっと?」
「ああ。ずっと、だ」
 二人は互いに見つめ合うと、笑顔を浮かべて深い深いキスをした。

 週末の中華街の喧噪は、夜遅くまで続いている。
 まるで、二人の未来を祝福する、爆竹の音のように。


<<終劇>>      



探偵物語

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